42話 自分の気持ち
退場を迫られたランバート王は、自室に押し込められてしまったよ。
騒ぎを聞いた王妃様は、王様の元へ駆けつけたんだ。
「何が起きたのですか?陛下を宰相たちが退位させたと」
「あのリアムという傭兵が朕の祖先であるマニュス王を語り、帝国に取り入ったのだ。宰相や兵士に向かって朕か国かどちらか選べと言い、選ばれなかった方を亡ぼすと!」
「それで陛下が…?」
「朕か国か選ぶとは意味がわからん。朕が死んだら国も亡ぶであろう?宰相も、シランスも、将軍までも国を選んで朕を部屋に閉じ込めたのだ」
王様は徐々に冷静を取り戻したんだ。
「それで…陛下はお部屋に閉じ込められてしまったと?」
「そうだ。意味がわからんのだ。朕がいなかったら、ランバートではないではないか」
「わかりました。宰相に確認してまいります」
王妃様は宰相のところに向かわず、王様のお母さん、王太后様に会いに行ったんだ。王太后様は渋面を浮かべていたから、事態を知っていたみたい。
「あなたも聞きましたの?」
「はい。今、陛下に確認致しました。リアムという傭兵が帝国に取り入ったと」
王太后様は少し考えてから、立ち上がったよ。
「宰相に会いに行きます」
王妃様も続いたよ。すると王子様が噂を聞きつけたのか、やって来たよ。
「母上!陛下が帝国に退位させられたと聞きました。応じた宰相たちを投獄しましょう!」
王子はやや興奮した様子だったから、王妃様は落ち着くように言ったよ。
「投獄はお待ちなさい。今から宰相に聞きに行きます。あなたはお部屋にいなさい」
「しかし…」
「いいですこと。あなたは王子なのだから、何事も動揺してはなりません。ここにいて報告を待てばよいのです」
「わかりました」
十九歳の王子様はお父さん似のわがままだったけれど、お母さんの言うことは聞いていたみたい。
王太后様と王妃様は、いつもより少し早い速度で歩いて宰相のところに行ったよ。
兵士たちに部屋に入るなと言われたけれど、権力をチラつかせて中に入ったんだ。
一方、リアムは王様を退場させた後、宰相と交渉に入っていたよ。
王様を退位の方に票を入れた人たちを罰しないようにって、リアムは念を押していたんだ。
偉い人たちが下の人たちのせいにして、責任逃れをするかもしれないからね。
宰相が承諾して話がまとまると、皇帝エリシアは帝国にリアムが来るように頼んできたよ。
「悪いが、先約があるんだ。俺に協力してくれたし、信用している。
宰相も首輪を外す努力をしてくれたし、エリシアは宰相が王座が空位のランバートを支えることを認めてやってくれ」
「承知しました」
帝国としては、神様に首輪をつけたランバートの偉い人たちを許せないから全員処刑したかったよ。
リアムが認めてやれ、つまり後ろ盾になれと言うから、エリシアは宰相を殺せなくなったんだ。
宰相はそのことをとても理解していて、リアムにお礼を言っていたよ。
「将軍はいかが致しますか?喜んで、リアム様を酷い目にあわせておりましたが」
エリシアは宰相が駄目なら、将軍を処罰したいと思ったよ。
将軍は床に座ったまま、ぶるりと震えたよ。王様は殺されなかったけれど、自分はわからないからね。
「わ、私は陛下の望まれるようにして…」
言い訳を始める将軍に、リアムはため息をついたよ。
「俺は王ではないから勝手に処罰はできないしな。十分怖がらせたし、俺にまた危害を加えなければ何もしない」
将軍はそんなことはもうしないと、壊れたようにウンウン頷いていたよ。
「リアム様が処罰されぬのなら、我々も何も致しませんわ」
エリシアはとても残念そうだったよ。
将軍は助かったとばかりに立ち上がろうとしたとき、王妃様たちが入ってきたんだ。
ランバート側の映像にみんなの視線が集中していると、何故か将軍が倒れたよ。
「だ、誰か、助けてくれ」
お腹から血を流したんだ。リアムはエリシアを見たけれたど、私は何も指示していないと首を振っていたんだ。
「何が起こって…」
宰相が言いかけたとき、将軍に向かってランバートの若い兵士が発砲したんだ。
将軍は文句も言えず、怒ることもできずに、動かなくなったよ。
「…俺はお前を動かしていないぞ?」
リアムは人を魔法で動かせるからね。疑いをかけられる前に言ったんだ。
将軍に発砲した兵士は二人だったみたいで、その場で取り押さえられて別の兵士が二人に銃を向けたよ。
王家に近い人を殺したからね。その場で射殺らしいよ。
「待て。理由を聞かずして殺すな」
リアムが言うと宰相も兵士たちを止めたよ。
本来なら宰相の前に座らせるけれど、リアムの前に座らせたよ。
兵士たちは黙ったままだったから、リアムから聞いてあげたんだ。
「どうして殺した?このままだと暗殺の首謀者として殺されて、家族にも迷惑かかるぞ?」
家族と言われて動揺したのか、一人がポツポツと話し出したよ。
「俺らは平民出身で…。それで…」
「なるほど。あいつの存在自体癪だし、俺もおもちゃにされたからな。殺したいほど腹立ったからわかる。で、何された?どうして今殺した?」
「将軍に復讐するなら、今しかないと思って。俺は一緒に兵士になった親友を将軍の気分で殺されました。他にも怪我をしたり、心を病んで退役したり、自殺した人も。
また許されるのかって。王族だからって許されて、のうのうと生きているのが許せなかった」
二人は泣き出して、他の兵士たちは下を向いていたよ。心当たりはあるみたい。
「将軍は身から出たサビだな。宰相、そう思わないか?詳しく聞いてほしいが、ご婦人方がいる前で将軍の行った蛮行をさらすわけにはいかないだろう?」
「ご配慮痛みいります」
「将軍の行った罪と、そこの二人の罪をよくよく確認することだ。ただ俺はランバートの王でも宰相でもない。ただここで多くの証人がいることを忘れてはいけない。
エリシア、そう思うだろう?」
「ええ。私はリアム様に対する、ランバートの将軍の仕打ちを見ておりました。慣れている様子からして、日常的に部下を痛めつけていたのでしょう。
マニュス様は、ランバートにこの件を預けてよろしいので?理不尽はお嫌いでしょう?」
「兵士を助けると思ったか?助けてやりたいが、残念ながら、私の持っていた権力も土地も財も三千年前に失ったし、現世は貧乏平民だ。ここに座っているのは、お前たち帝国がいるからにすぎない」
リアムが助ける気がないのなら、エリシアは無理に言わなかったよ。
だけどリアムは泣いている兵士に、こう言ったんだ。
「どんなに酷い人でも人を殺したら罪だ。俺もそこに転がっている一人を確実に殺した。
罪を理解して生きるというなら、一緒に来い。金がないから雇えないけどね」
将軍を殺した兵士二人は不安そうだったよ。彼らの命運を決めるのは宰相たち、ランバートの偉い人だからね。
リアムは途中参加の女の人たちを見たよ。
宰相が王太后様と王妃様を紹介したよ。エリシアは知っているみたい。
王太后様は微笑みを浮かべていたけれど、リアムを値踏みするような眼だったよ。
王太后様が本当に思っているかわからないけれどリアム、いやマニュスを褒める言葉をたくさん並べてきたから、マニュスは嫌気がさしていたよ。
「それで用はなんだ?私はこんな吹きさらしの寒いところに、いつまでもいたくはないのだが?」
「申し訳ございません。あの統一王マニュス陛下が転生されていると聞き、お会いしたかったので」
王城に行ったとき、王太后様はいたよ。知っていてそこで会わなかったわけだから、リアムは胡散臭く思ったよ。
「今更なんだ?ランバートの城を訪れたときには会いに来なかったし、首輪をつけられたことを知っていただろう?」
「転生されたとは存じておりましたが、お会いしようにも陛下に止められまして。
やっとお会いできましたわ」
彼女が会いたかった理由は絶対的な財力と兵力を持つ帝国を動かせるだろう者が、どういう人間か知りたかったからだよ。
「会えて満足か?そろそろ魔法具を切る」
「ランバートにはお戻りに?」
王太后様の発言に、エリシアは帝国に戻られるのですと言いそうになっていたよ。
「リューリッシュには行かない。平民として自由に生きるつもりだ」
マニュスが言うと、王太后が発言する前に宰相がすかさず言ったよ。
「是非お越しください。我らの祖先の転生者を平民にはできません」
「なら貴族のような生活と権利を平民が持てるように努力しろ。
ああ、忘れているようだが、もう一度言う。お前たちランバート王族を私の子孫だと認めていない。可愛い子らはデスペハードにいる。話は以上だ」
「お待ちください!」
宰相が叫んだけれど、リアムがランバート側の通信魔法具をユビキタスを通して切ってしまったよ。
「あ、勝手に切ってしまったが、話したかったか?」
エリシアやヒューゴに聞いたよ。
「私は構いません。ランバートに行かれるのですか?王家が何をするか不安です」
エリシアはリアムが暗殺されることを恐れていたよ。
リアムはヒューゴをチラリと見てから言ったよ。
「さっき少し話したが、先約があるんだ。俺が行って邪魔なら別のところを探すけど」
「そんなことはありませんよ。是非我が領へ来てください」
ヒューゴは嬉しそうに微笑んでいたから、シランスに行っても大丈夫そう。
「はいはーい、あたしも!」
アルマンがリアムについていくとアピールしてきたよ。
「アル姐さんとも約束したしな。一緒に行こう」
アルマンはやったと喜んでいたよ。リアムは階段を降りてから、エリシアが映っている魔法具を消そうとしたよ。
「お待ちください。そちらに向かいます」
「瓦礫だらけの場所に皇帝が行くのはまずいだろう」
「マニュス様であり、始祖である方がそのような場所におられるのなら、皇帝だからという理由にはなりません」
主張を曲げなさそうだから、リアムは会うことにしたよ。
「どのくらいかかる?」
「二時間ほどいただければ」
ヒューゴは撤収に時間がかかる考えていたから、待てると思ったよ。拠点となりそうなところを兵士たちに下見させに行っていて、戻ってきてないんだ。
一度魔法具を切ると、ヒューゴはリアムと話したいと言ってきたけれど、リアムは先にお話したい人がいたんだ。
「ジョゼフィーヌ。少しいいかな?」
リアムが呼びかけると、ジョゼフィーヌは少し足を庇うように歩いてきたよ。
「まだ治ってないみたいだね」
「ちょっと痛いけど、大丈夫」
「ちゃんと治すから待って」
リアムは杖を軽く持ち上げて、魔法をジョゼフィーヌにかけたよ。
ジョゼフィーヌが、威圧的な態度や人を自由に動かせるリアムを怖いと思わなかったか不安だったよ。
じっとリアムを見つめているだけで、彼女の考えがわからなかったんだ。
治った足を動かしてジョゼフィーヌは顔を上げるやいなや、リアムに飛びついたよ。
「よかった。リアムが生きてて。どうなるかと思った!」
彼女の言葉とぬくもりにリアムの不安は吹き飛んだよ。ギュッと抱きしめたんだ。
「うん。なんとかなった。俺は転生者で前世のことで色々あるから、また危ないことに巻き込んでしまうかもしれない。ジョゼフィーヌはリューリッシュに帰って」
「私はもうリューリッシュに思い残すことはないわ。あなたについていくつもりよ」
ジョゼフィーヌは覚悟を周りの人に十分見せてきたからね。ガレオが渋るリアムに言ったよ。
「ジョゼフィーヌなら危険があっても乗り切れるだろうよ。なんせ、兵士の股間を蹴る女だぜ」
「股間を蹴る?見たかったな」
リアムはその時、意識が朦朧としていたからね。ジョゼフィーヌは顔を真っ赤にして、忘れてと叫んでいたよ。
ジョゼフィーヌには悪いけれど、彼女の反応に傭兵たちは笑って緊張が解けたんだ。
「リアム。ここでは冷えるから部屋に入ろう。今後について確認したいことがあるからね」
ヒューゴの言うとおり、ここには天井がなくて吹きさらしだからね。
お昼ごはんを食べたルシオの執務室っぽいところに行ったよ。
ヒューゴはカジミールに兵士の指揮を任せて、部屋にジョゼフィーヌも招き入れたよ。
アルマンもリアムについていくというから、同席したよ。ガレオもヒューゴがリアムに何を持ちかけるか気になったから、話だけ聞くことにしたんだ。
全員座るとヒューゴは切り出したよ。
「リアムが統一王マニュス様の転生者だということは、宰相や多くのランバートの貴族は理解したと思う。しかし、王家にとっては邪魔だと思う人間もいるだろう。何も後ろ盾のないままリューリッシュにいるのは危険だと考えられる。可能であれば私の屋敷にいてほしいが、君はどうしたいかだね」
アルマンだったら喜んでヒューゴの提案を飲むけれど、リアムはエドおじさんと暮らしたいし、フーもいるからね。
二人に聞かないといけないし、リアム自身が何をしたいか考えないといけないよ。
「俺がどうしたいか…」
マニュス思考から急にリアム思考に切り替わって、頭の中が真っ白になったんだ。
「リアムちゃん?」
迷子のような顔をしていたから、アルマンは驚いたよ。
「戦争は終わったんだよね…?俺、どうしたいかわからないよ。過去の自分だったらどうするのか思いつくけど、俺がわかんない」
傭兵になって名を上げたいという目標は早々に消えてしまったんだ。
はっきりあった目の前の道が、無くなってしまったような気分になっていたよ。
アルマンはリアムの肩を優しくなでながら、励ますように言ったよ。
「一人前になったって、エドさんに見せたいんだったわよね?エドさんもきっと認めてくれるわ」
「それは俺じゃない!前世がやったことだ。俺がやったわけじゃない」
同じことじゃないのとガレオもアルマンも思ったけれど、リアムは頭を抱えてしまったよ。
「色んな考えが浮かぶけど、これは俺じゃないから、どうしたらいいのかグチャグチャになる」
転生者という人が周りにいなかったし、信じてこなかったジョゼフィーヌはリアムをどう励ましていいのか分からなかったよ。
ヒューゴはこの状態で皇帝に会わすのはまずいと考えていたけれど、これはリアムがどうにかしなきゃいけない問題だよ。
周りは手助けできるのは限られている。だから、ヒューゴはリアムの気持ちを聞いてあげて、整理させようとしたよ。
「リアム。君は混乱してるんだね?」
頭を抱えたまま、うんとうなずいたよ。ヒューゴは続けたんだ。
「一度に考えなくていい。ゆっくり自分を見つめ直せばいいんだ」
「そんな時間ないでしょう?皇帝が来てしまう」
リアムも案外時間がないことに気づいていたよ。
「君はこの戦いで消耗しすぎだ。首を絞められて、何度も回復魔法をかけられた。普通なら急激な身体のダメージと回復を繰り返すのは、疲労がたまるものだ。休んでいると説明すれば皇帝も納得してくれるよ。
まずは君の気持ちを知ろう」
リアムはヒューゴが自分に寄り添ってくれるから、とても助かったよ。
深みにはまったように動かなくなったリアムに、今度はアルマンがリューリッシュに来た目的から話させたよ。
リアムのことを話すうちに、徐々に前世たちの思考が薄れていったよ。
「俺はリアム。リアム・アルク」
言い聞かせるように言ってから、迷子のような表情は消えたよ。
その顔を見てヒューゴたち大人は、安心したんだ。
「これからのことを話しても大丈夫かな?」
「大丈夫です」
「君がリアムとして生きることを決めたとしても、周りがそういう目で見ないだろう。すでに一国の王を退位に追い込むという力を、要人たちに見せた訳だ。
君に取り入る者、邪魔に思う者。多くの人の思惑に巻き込まれるだろう。私は助けてあげたいが、できないことも多い。それでも私のところに来るかい?」
「それは…」
リアムの言葉が途中で切れたよ。ヒューゴは待ってあげたんだ。
リアムは自分の思考の中に入っていたことに気づいたよ。
「ごめんなさい。色々な考えが浮かんで…」
「そうなんだね。リアムはエドガール殿と暮らしたいんだったね?彼に会うのは、ほとぼり冷めたほうがいいと思うんだ」
「俺もそう思います。ヒューゴさんのところにいて、様子見てからにしたいです」
「わかった。そうしよう。これから皇帝と会うけれど、リアムの言葉で話せるかな?」
リアムは不安そうにしていたよ。マニュスやアニバルの思考で話してしまいそうだからね。せっかく自分を取り戻しつつあるのに、逆戻りしそうなんだ。
「また飲まれるかもしれない」
「正直に皇帝に話してみればいい。あちらの方が転生者に理解がある。皇帝は心のある人だ。君が前世の記憶で苦しんでいると知れば、無理に帝国に連れていこうとはしないだろう」
皇帝が到着したという連絡が入ったよ。
ヒューゴが再度どうすると聞いてくれたけれど、リアムは会うことにしたんだ。
別の施設に移動しようとしたけれど、すでにガルシア領主の屋敷に来ているというよ。
たくさん人が来ているみたいで、謁見の間で会うことにしたんだ。
リアムの方が先に謁見の間についたよ。
少し待っていると皇帝エリシアを先頭に、エリシアの旦那さんやカリナなど皇帝一家、ガルシア領主など要人たちが整列したよ。中にはヴァリエンテ王の姿もあったんだ。
回復したガルシア領主の三男イサークも並んでいたよ。
帝国の要人たちが一斉にリアムの前で膝をついたんだ。
その光景にヒューゴは手が震えたというよ。
リアムは子どもの頃、誰からも必要とされずに蔑まれて生きてきた。だから、自分はとても偉い人の子どもで、ここではない違う世界に誰かが迎えに来てくれるんじゃないかと考えたことがあった。
現実に迎えは来たけれど、その先の未来はリアムが望んでいた世界ではない。
アニバルのように神として、王宮で暮らすのは嫌だったんだ。
リアムは膝をついて頭を垂れる帝国の人々を見渡して、小さく呼吸してから言ったよ。
「顔をあげてください。俺は神様になりたくて、偉ぶりたくてここにいるんじゃないんです。
戦いは終わりました。俺はリアム・アルクに戻ります」
エリシアは顔をあげたけれど、少し戸惑っている様子だよ。アナベルの言葉がわからない人は、リアムが何と言っているか、周囲の人に聞いていたよ。
「傭兵に戻られるということですか?」
二時間ほど前に会話した人とは全く別人に見えたから、エリシアは慎重に聞いたよ。
「傭兵にはならないです。一般人として生きると決めました。前世たちの気持ちは、あなたたちが俺の前世たちを思ってくれたことをとても嬉しく思います。前世の俺はあなたたちを大切に思っている。
俺はこの時代で自由という言葉を知った。自由に生きたい。あなたたちも自由に生きてほしい。
帝国は千年前よも繁栄している。冬に殺されない。だから、俺にすがるほどあなたたちは苦しいわけではないでしょう?」
「それは…我々と共にいてくださらないと?」
「前世から転生するまで、あなたたちは俺の前世を思っていた。俺の前世たちも、現世の俺もあなたたちのことを思っている。どこにいようが絆は変わらないでしょう?」
リアムが言った瞬間、曇り空から薄日が差したよ。本当に偶然だったけれど、エリシアたちは神の言葉として感じたんだ。
「そうですね。あなたはどこにいても我々のそばにいてくださる」
「ユビキタス…。俺もいつも幾万幾億のデスペハードの民の思いを感じている」
持っていた杖を撫でてから微笑みを浮かべたよ。エリシアも微笑んだんだ。
「我々も感じております。ランバートにいらしても。たまには我が国に来てくださいね」
「うん。いつかは」
それからリアムは、代わる代わる帝国の要人たちの自己紹介を受けたよ。
たくさんいすぎて全員覚えられなかったけれど、ヴァリエンテ王がここに来ていたのに驚いていたよ。
『怪我は大丈夫?』
『もう治りました。我らの神がご無事で何よりです。それでこれをお渡しそびれてしまい』
またもやアタッシュケースを持った男の人が前に出てきたよ。戦争のゴタゴタでどうなったか、気にはなっていたけれどね。
『あの…俺は傭兵辞めるけど』
『どこで暮らすか存じませんが、恋人と暮らすには何かと入用でしょう?』
ヴァリエンテ王はウィンクしたよ。直接リアムは恋人がいるとは言っていなかったけれど、ヴァリエンテ王はどこからか聞いたみたい。
もらっていいのかと困っていると、ヴァリエンテ王はヒューゴをリアムの後見人と見て、預けてしまったんだ。
ヒューゴは渋るリアムに言ったよ。
「もらっておけばいいじゃないか」
「そうだけど…。今の貨幣価値はわかんないけど相当な額だと思います」
「ん?贈り物ではないのかい」
ヒューゴは、まさか現金が入っているとは思わなかったみたい。
受け取ってしまったからには、もらうことにしたよ。
リアムはカリナと話したときに、杖を奪われてしまったことを謝ったよ。
『予想はしておりましたので、気になさらないでください。しかし、初めて手にする魔法具を使いこなすとはさすが始祖です』
初めてと言われて、手に持っていた杖をガルシア領主に返そうとしたら、あげると言われたよ。
『リアム様のお助けになれたようで嬉しい限りです。その杖もなかなか使いこなせず、宝物庫に眠ったままでしたので使っていただければ』
戦争くらいしか杖の使いどころないからね。
杖ももらっておくことにしたよ。リアムも日常生活で使うシーンはなさそうだけど。
リアムがガルシアを去る姿を帝国の人々は、ずっと見送っていたよ。
そういえばジョゼフだけれど、エリシアがリアムと会う前に戻ってきていたよ。
帝国側と接触はできたけれど、全部終わっていて、帝国の仲間とやり取りした意味がなくなってしまったんだ。
「ジョゼフ、やつれたね…。なんかごめん」
げっそりしていたジョゼフを見てリアムは謝ったよ。
「こっちこそ、ごめんな。手伝えなくて」
「それもごめんね…」
「俺のことはいいよ。それより、リアムの首輪が外れてよかった。シランス領主のところに行くんだろう?」
「そのつもりジョゼフはどうするの?帝国に残らないの?」
ランバートへ車は出発してしまったからね。
「任務も終わったし、元々の仕事を辞めようと思っていたから、ちょうどよかったんだ。特殊な仕事してたし、友だちも作れなかったから、別れを言う人間もいないし。
色々これから考えるよ。リアムはまだ決まってないんだろう?」
「うん。自分の気持ちを整理してからにしようと思って」
そういうことで、ジョゼフもシランス領に行くことになったよ。
リアムはヒューゴのお屋敷で居候生活が始まったんだ。
次回の投稿は登場人物が増えてきたので、一度人物紹介入れます。
その次の投稿はシランス領編となります。お楽しみに!




