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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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41話 裸の王様

 今度は帝国側、皇帝エリシアが映っている魔法具を見たよ。


「エリシア。検問所にいた軍は、現在どこにいる?」


 リアムは帝国がランバートへ向けているだろう兵のことは匂わせず、すでに通り抜けた南の将軍がいた検問所の兵の動向を聞いてみたんだ。


 エリシアは、作戦に支障がないことを瞬時に判断して答えたよ。


「リアム…マニュス様のいらっしゃる屋敷に向かわせております。数分で屋敷を囲むでしょう。突入させてもよろしいでしょうか?」


「リアムでもマニュスでも好きなように呼べ。

 突入はしばし待ってくれないか?ランバート王に立場を理解させねばならん。

 もしランバートが抵抗したなら、今度は将軍を盾にしよう。首輪をつけようかな」


 リアムは首輪とリモコンを見せて、ニヤニヤ笑ったよ。


 将軍の方が先に、自分の身が置かれている状況を理解したみたいだよ。


「っは、そ、れは…!へ、陛下!お助けを!」


「うろたえるな。そこの傭兵の味方は少ない。帝国兵が来る前に動ける兵でなんとかせよ!」


 外で警備している兵士は待機を命じられているから、屋敷の中のことはまだ気づいていなかったよ。


「兵士が入った瞬間に将軍を盾にするが?こうやって」


 リアムはわざとらしく杖を掲げると、将軍を囲っていた兵士が将軍に銃口を向けたよ。将軍は怒ったように叫んだんだ。


「貴様ら!ただでは済まないぞ!」


 兵士たちは身体を動かされたせいか、将軍にどやされたせいか、身を縮めて顔が真っ青になっていたよ。


「そう、怒るな。私の魔法から逃れられぬ兵士を集めたお前の力量のせいだ。不甲斐ないのは己だと自覚せよ。

 敵国の帝国製の魔法具を使って、帝国を攻めるとは。技術がないのなら、もう少し兵の自力を鍛えよ。

 とはいいつつ、お前たちにも独自の技術はあるようだが、これは不愉快だ」


 杖の魔力変換を使って、首輪を燃やしたよ。もはやランバートはリアムを拘束して、手綱を握ることは困難になったんだ。


「ランバート王よ。ガルシア制圧だが、目論見は消えそうだぞ?というよりは国家存亡の危機だぞ?

 私の現世はランバート国民だ。地図上から国名がなくなるのは、残念に思うから残してやろう」


「マニュス様が王になられるのですか?あ、申し訳ございません。黙れと仰ったのに」


 エリシアはリアムと話したくてうずうずしていたから、つい口を出してしまったよ。


「そこまで強いておらん。意見があるなら聞こう。

 そうだな、私が王になるかは…。ここは、はっきりしておこう。現世のリアムの感情では王にはならず、田舎のどこかでのんびりと過ごしたいと思っている。ただ、その生活を壊そうとする者がいるのなら排除する。逆に言えば、デスペハード帝国にもランバート王国にも口も手も出さん」


 エリシアはデスペハードの皇帝か、神ポジションに、リアムがついてほしいから説得したかったよ。でも今は言うべきときではないと思ったから、黙っていたんだ。


 エリシアが、急にすっと視線を画面から外へ向けたよ。帝国側で動きがあったみたい。


 リアムは何かなと聞かずに、ランバート王に言ったよ。


「さて。これからどうするつもりかな?私に首輪をつけたことを伏して許しを請うならば、お前の命はとらん」


「誰が謝るか!お前こそ、立場をわきまえろ。傭兵は傭兵らしく、朕の言うことを聞いていればいいのだ」


 ランバート側の宰相は、王様の物分りの悪さに焦っていたよ。


「陛下、どうかご理解ください。この方は我らの祖先の転生者なのです。陛下は統一王マニュス陛下とお話されているのです。邪険にしてはなりません」


「お前も何を言っている!転生などない!将軍、早う起きて戦うのだ!兵もサボるな!」


 将軍はブルブル震えていたよ。身分に幅を利かせて得た将軍職らしいから、果たしてまともに戦えるのかな?


 兵士も動きたくても動けないんだ。


 リアムが王様につける薬はないなと、ため息をついていると、エリシアが口を開いたよ。


「発言してもよろしいでしょうか?」


「何だ?」


「我が軍が半日ほどでランバートに入る予定です。マニュス様は(スル)将軍と共にシエロにお越しください。リューリッシュ城を落とします」


 だって、というようにリアムはランバート王を見たよ。


「軍?そんなのハッタリだろう」


 ランバート王は自分の城が攻撃を受けて、死ぬことを露にも思っていないみたい。


 宰相が頑張って王様を説得している声とは別に、小さく物音がたくさんしていたんだ。王様や宰相以外に誰かいるみたい。

 

 すると宰相の横に誰かが来たよ。


「我々は帝国へ侵攻をやめるよう陛下に進言したのです!」


 命乞いみたいなことを話し始めたから、ランバート王は怒って下がらせたよ。


「王よ、お前に皆がついてきたわけではないようだが?」


「そのようなことはない!朕の命令は絶対だ!」


「それが私やエリシアに通用するとも?なんとも浅はかな。お前が私の子孫と名乗るのも不愉快極まりない。

 なあ、ランバートの宰相よ。もう王のわがままに付き合うのは疲れただろう?

 そこにいるだろう、側近や兵にも聞こう。そこの王と国。どちらか片方を亡ぼす。その権限をお前たちにやろう。そうだな。この部屋にいる兵士や民にも与える。私は自由と平等を愛しているからな。

 王を選んだなら、お前たちもその家族友人も皆殺しにする。国を選んだなら王のみ死ぬ。さてどちらを選ぶかな?」


 再びしんと静まり返ったよ。ガルシアの屋敷にいる兵士たちは、リアムが本気になれば国を亡ぼせると思ったんだ。


「エリシア。私の言うことに従ってくれるか?」


「もちろんでございます。ランバート王国を亡ぼせとご命令ならば全軍を差し向けて、国民残らず殺します」


 エリシアはリアム、いやマニュスの意図を完全に把握はしていないけれど、ランバート王を王座から引きずり下ろしたい思いではいたよ。


 この王がいるから、他国の民とはいえ、苦しむ人がいる。そういう人たちを助けたいから、エリシアは戦争したんだ。


 マニュスはゆっくりと子どもに言い聞かすように、ランバート王に話したよ。


「王よ、私はね。いつぞやの生のときに、難破した船の船長は乗組員全員が避難するまで逃げないと聞いたことがある。その話を聞いて、私は国主もそうあるべきと考えたんだ。国を、民を守り、生活を維持するのが国主の役目だ。それらを置き去りにして、真っ先に逃げるのは責任を果たしていると言えるのか?

 もちろん、国主も含め全員生き残る術があるのなら、その方法を取るべきだ。

 しかしながら、お前は国も民も何とも思っていない。お前がしたように、私はお前に理不尽を要求しよう。

 さあ、ランバート国民よ。国か、王の命か。どちらをとる?」


「ごちゃごちゃ何を申しておる。朕は法であり秩序であり、国家である!朕を取るのは当然だろう!」


 つける薬はないとエリシアも思ったのか、ため息をついているよ。


 リアムは王様の発言にあえてコメントせず、眼下にいるランバート兵に聞いたんだ。


「王はああ言った。領主も騎士も傭兵もそして一般人も。王の命を守ると決めたなら、この場でお前たちの命を消そう。

 私が歴代転生した者の中に、ルドという男がいる。レナータでは暴君と呼ばれているようだが、ルドが考案した処刑方法をしようかな」


 わざと悪役っぽく言ってみたよ。兵士たちも、暴君ルドの考案した処刑は首ちょんぱだって知っているみたい。


 動揺が見えたけれど、味方のはずのバヤールが嘘だろうという顔をしていたから脅かしすぎたかなって、内心反省したよ。


 気を取り直して…。


「もう一度言う。私はお前たちにも選ぶ権利を与える。よくよく己の信念や思いに問いかけよ。己の命を捧げてまで守るべきなのは、あの王かと。

 お前たちの立場は弱い。ここで動けば後々処分を受けたり、殺されるかもしれん。権利を破棄しても構わんが、破棄した票は多く選ばれた方に上乗せしよう。ランバート王を選んだ者は、王側の魔法具の近くに。国を選んだ者は、私の方へ来なさい。棄権者はその場に留まること」


 リアムは魔法を解いて、動けるようにしたよ。誰も動かない中、ランバート王だけが、何故誰も動かんと喚いていたよ。


 全員棄権したら、この問いは無効になる。


 リアムはあえてそれを言わずに、ランバート国民に選ばせようとしたんだ。


 回復したジョゼフィーヌは状況に混乱したけれど、ガレオに説明を受けてから、真っ先にリアムの方へ向かったんだ。


 このまま誰も王の方へ行かなかったら、ランバート王は殺される。


 王様もまずいというのはわかっていたみたい。


「女!朕が王だぞ!」


「だったら何よ。私の母親は病気だった。お金がないからって治療も受けられない、なのに税は取られる。私たち平民は、あんたがぬくぬくデブデブ生活させるためにいるんじゃないわよ!

 なのにあんたの命を助けて、みんな死ねですって?なんで私たちを助けない人を助けなきゃいけないのよ!」


「わからんのか。朕は国家なのだ。朕がいなければ国は亡ぶのだ」


 国民の素直な声は王様の耳に入らないみたい。ジョゼフィーヌの怒りは収まらないよ。


「あんた一人だけ生き残って、それが国って言えるの?馬鹿にするんじゃないわよ」


 ジョゼフィーヌと王様の声で、兵士たちにあった忠誠心を削っていったよ。


「誰かそいつを殺せ。将軍!」


 将軍も動けたけれど、自分の命か王様の命か一応悩んでいるみたい。


 その中で動いたのは、ガレオなどの傭兵だったよ。


「俺たちはランバート国民だが、傭兵なんでね。嫌から国を出ればいい」


「デブ王より、リアムちゃんのためなら死ねるの。あたしは」


 一人はかなり自分の趣味みたいだけど。


 騎士や兵士の中から、一人リアムの方へ歩き出した人がいたよ。


 ジョゼフィーヌを守るように立ったんだ。それに王様は怒ったよ。


「カジミール!朕を裏切るつもりか!」


「私は国家や国民を守るためにあります。それに、このようなか弱い女性を殺すのは騎士道に反します」


 カジミールの反旗にヒューゴが動いたよ。続くようにシランス領騎士団がジョゼフィーヌの周りを囲ったんだ。


「申し訳ございません、陛下。私は家族や国を守ってくださると信じて陛下をお守りしておりました。でも陛下はそうなさってはくださらないと仰りました。では我々は何のために戦うのでしょう、命をかけるのでしょう」


 カジミールは覚悟を決めたのか、毅然と立っていたよ。


 ワナワナと王様は震えて、将軍に怒ったよ。


「将軍!どうにかせよ」


「へ、陛下。わ、私は…」


「将軍。王を取れば、貴殿もそこに転がる軍曹のようになるぞ?」


 リアムは指でさして、優しく教えてあげたよ。


 将軍は王様から目をそらして、フラフラとリアムの方へ歩き出したんだ。


「貴様!!」


 いとこの離反に二の次が出ないみたい。


 ランバートの宰相が口を開いたよ。


「マニュス陛下。我らの偉大な祖よ。

 王か国かどちらか亡ぼすというのは、まことでしょうか」


「そうだ。お前たちの、私の、国民としての選択である。その機会を与えたまで」


 リアムが他国の侵略を受けてではなく、ランバート国民が立たなければ意味がないと言ったことを実行したんだ。


 いかに血が流れずに国を変えるか。


 宰相も決断したのか、王様に頭を下げたよ。


「陛下。どうか国を救う英雄(・・)になってくださいませ」


 宰相は優しいね。王様に犠牲になれと言わずに、国を救う救世主として死んでくださいと言ったんだ。国王として臣下たちに裏切られた不名誉な退位ではなく、国を守った英雄という名誉ある退き方をお願いしたんだ。


「お前まで!」


「マニュス様。陛下の命までは取らないでいただきたく」


「宰相。お前も民である。ランバートの民が決めることだ。任せる」


「ありがとうございます。陛下。しばしお部屋にいてくださいませ」


 ふざけるなと怒る王様を、リアムは冷え冷えとした目で見ていたよ。


「何を喚いている?お前が先程、デスペハード帝国皇帝エリシアに対して死ねと要求しただろう?それがお前になっただけだ」


「…陛下。ご理解ください」


 宰相が言うと兵士が王様を囲んだよ。


「何を!朕は国家そのものだぞ!間違っていないのだ。そうやって教…」


 ランバート国王ピエールは、兵士に連れられて部屋から引きずり出されたんだ。


「あの者は権威を当然のように持っていると教えられてきたようだ。それはただ周りが従い、纏わせたものであり、力を維持するには相応の努力が必要だ。それを怠ったのだ。

 エリシア。帝国も他人事ではない」


「肝に銘じました」


 帝国の勢力も、自在に魔法を操るコアも、リアム自身が凄いのではなく、子孫たちの努力によって生み出されたものだと言い聞かせたんだ。


「エクトルと子孫たちに感謝せねば」


「エクトル殿下もさぞかしお喜びになったでしょう。我々もお役に立てたようで嬉しゅうございます」


 エリシアは誇らしげにしていたよ。


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