表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
126/278

31話 愛している

 リアムが去った後、マリアスはクレマンの部屋にリアムの着ていたスーツを隠すと、お仕事に戻ったよ。


 仕事をしながら戦争になったら、家族や従業員をどう避難させようとか考えていたんだ。


 受付からマリアスと同じコアなしの銃を作ることが趣味の取引先が来たというから、リアムに銃を待たせてあげればよかったと少し後悔したよ。


 取引先さんは三十代くらいの若い男を連れていたんだ。


「新人でね。取引の様子を見学させたいのだが」


「構いませんよ。趣味の話はあとにしましょうか」


「残念ながら、今日はあまり話せなさそうなんですよ」


「この後予定があるんですか?

 ではさっそく。この前の取引の結果ですが、まだ各支店で売り上げの集計が出ていなくて、買い取り数を増やすのは…」


 取引先さんはチラチラと新人さんを気にしていたんだ。マリアスはまさかリアムの追手かと思って緊張したよ。


「別件ですかね?」


 それとなくマリアスは、取引先さんと新人さんを交互に見てから聞いてみたよ。


 新人さんはポケットから写真を出したんだ。


 いつ写真を撮ったのかわからないけれど、見たことのあるお店や街の雰囲気だったからリューリッシュだろうね。先ほどまで会っていた少年の姿が写っていたんだ。


「この人をご存じですか?」


 知らないと言おうとしたけれど、下手に嘘はつかない方がいいと思ったんだ。


 新人さんは観察するようにマリアスを見ていたからね。


「ああ。リアム君だね。彼がどうしたんだね?」


「この人を探しています」


「探している?あなたは彼とどういう関係なのかね?」


「親戚です。家を出ていったきり帰って来ないので、心配して色々な方に聞いているのです」


 リアムから親戚は冷たくて好きではないと聞いていたから、親戚というのは嘘なのかもしれない。


 ランバートの追手なら、取引先さんに話を通してカレ商会に入るという、こんな回りくどいことをするだろうか。兵士がズカズカ会社に乗り込んで来そうだったからね。


 新人さんの外見は帝国系の顔立ちをしていたよ。もしかしたら帝国の人かもしれない。


「リアム君から聞いた話では、養父母に預けられて、それ以外の親戚はいないはずだけれど?」


 アルク家の人かもしれないけれど、先ほどのリアムの感じでは会っていなさそうだったんだ。


 新人さんは警戒して話さないマリアスに苛立つ気配はなく、むしろ感心していたよ。


「遠い親戚なんですよ。もしここに来たら連絡してください」


 連絡先を書いた紙を渡そうとしたとき、廊下が騒がしくなったよ。


 マリアスが想像したとおり、ズカズカとランバート兵がやってきたんだ。


「リアム・アルクはいないか?」


 部屋を入って第一声がそれだったから、マリアスは怒ったよ。


「何だね!今商談中なんだ」


「すぐに終わる。リアム・アルクを知っているか?」


「リアムという名の知り合いはたくさんいるが、リアム・アルク(・・・)は知らない」


 マリアスと出会ったころはアルクという姓を知らなかったから、契約書にはリアムしか書いていなかったんだ。


「嘘をつくな。クレマン・カレが魔物に襲われたとき、救出に向かった兵士がデジャルダンでリアムと会ったと聞いている」


「ああ。そのリアム君ね。彼は両親が幼くして亡くなって、出自もろくに知らないと言っていた。姓を聞いてもわからないと言っていたんだ。

 彼は帝国との戦争でシランスにいるはずだが?」


「リューリッシュに戻ってきたが、いなくなった。ここには来ていないのか?」


「来ていないが?」


 マリアスは平然を装っていたよ。


 兵士の一人が何か機械のようなものを持っていたんだ。


「反応が消えました。遠ざかったようです」


「逃がしたか」


「反応?何がだね?」


 マリアスが覗き込もうとしたら、兵士が隠したよ。


 マリアスは機械好きな友人から、似たようなものを見せてもらったことがあったんだ。友人は首輪をつけた飼い猫が、どこにいるかわかって楽しいんだと言っていたんだ



 マリアスは察したよ。


―――リアム君の首輪に発信機が取り付けられているんだ!


 キミたちの世界のような高性能のGPSはなかったんだ。数百メートルから一キロメートル程度離れたら、反応が消えてしまうという感じだったみたいだよ。


 マリアスはリアムが遠くに逃げられるように、時間稼ぎしようとあれこれ考えたよ。


「リアム君が何をしたんだね?」


「規律違反をしたから追っている」


「規律違反?彼はそんな子ではないが…。随分田舎から出てきたみたいだから、規律を知らなかったんだろう。何の罪に問われているんだい?」


「お前には関係ない。ここに来なかったんだな?」


「ああ。リアム君には我が社の支店の住所を書いた紙を渡していたが、ビルなんてないところで育ったと聞いた。ここに来たくとも道に迷ったのだろう。

 ほら似たようなビルがたくさんあるからね。私が外に出ていれば気づいたかもしれないが、部屋にいて」


「奴の立ち寄りそうな場所は?」


 さっさと切り上げたそうな兵士は早口で言ったよ。


「うーん。私と彼が話したのは数時間だ。故郷についても聞いたが、教えられないと言われてしまってね。そこまで深い関係ではないのだよ」


「わからないならいい。思い出したら連絡してくれ」


 立ち去ろうとする兵士たちをマリアスは内心焦りながら、あっと声をあげたよ。


「デジャルダン支店に行ったのかもしれない。私と彼が会ったところだし、支店の場所も知っている。

 逃走したのだろう?お金がないなら、お金を持っている知り合いに頼るだろうし」


「支店の番地は?」


「ああ、番地は…。名刺の裏に書いてあるから」


 リアムが本当にデジャルダン支店に寄らないことを祈りながら、マリアスは名刺を兵士に渡したよ。


「協力感謝する」


「彼は悪い子じゃない。何かの間違いだろう?」


 兵士たちはマリアスの言葉に答えず、去っていったよ。


 取引先さんに、マリアスは困ったように笑ったよ。


「リアム君は変なことに巻き込まれたようだ」


「本当にリアムさ…はデジャルダンに行ったと?」


 新人さんの目が獲物を狙う猛獣のようだったから、恐かったよ。


「ちょっと待って」


 マリアスはそっとドアを開けて、兵士が立ち聞きしていないか確認したんだ。


 廊下には離れたフロアから社員が出入りする姿しかなかったよ。


 鍵を閉めてから、マリアスは改めて自称リアムの親戚さんを見たんだ。


「本当のことを教えてもらわないとこちらも話せない。リアム君の不利になることはしたくないしね」


遠い(・・)親戚なのは本当のことです。ここには来ていないのですね?」


「遠いか。コートドールのアルク領主の関係者かい?」


 自称親戚さんは眉をピクリと動かしたよ。


「そことも私は遠い遠い親戚にあたりますが、付き合いはないですね。ランバートの王家とも遠い遠い親戚ですが、繋がりはありません。むしろお断りなくらいでして。

 デジャルダンの支店に私も行ってみます」


 自称親戚さんはマリアスの匂わせに応じて、さらに匂わせてくれたよ。


 自称親戚さんが去ろうとしたから、マリアスはこの男の正体を見極めたいと思ったんだ。


 取引先さんは帝国製の魔法具を売る会社だったんだ。帝国の関係者ということは間違いなさそう。


「あなたは光の王の子孫ですかね?」


 自称親戚さんは、はっとなってマリアスに詰めよったよ。


「あなたと会ったのはご記憶を取り戻される前のはず。今日あの方と会ったのですね?今どこにいるのです?」


「質問に答えてほしいのだが。リアム君を追いかけているのが、すべて味方とは限らない。

 私は怒っているのだよ。善良な国民にあのようなものをつけるなんて。あなたはそちら側なのかね?」


「違う。私はあの方…光の王を守る一族の者です。囚われた王を外に出せたのはいいものの、人手が足りず護衛をつけられなかったのです。落ち合う場所には向かわれていなかったようなので、探しているわけです」


「帝国の人か。どうしてリアム君がここに来ると思ったのです?」


「調査員からあなたと王の関係を聞いたので、もしかしたらここに来ているのではと」


 取引先さんはあまり詳しいことは聞いていなかったみたいで、初めて聞いたみたいな顔をしていたよ。帝国と取引しているだけで、巻き込まれてしまったみたい。


「行き先はわからない。あれを外せそうな人を紹介してほしいと言われたが、機械好きの友人しか思いつかなかった。爆薬のようなものが埋め込まれているものを外せる人はいないだろうし」


「他にはありませんか?」


 自称リアムの親戚さんは少しでもいいから教えてほしいと言うんだ。


 ある女性の顔が浮かんだけれど、彼女を巻き込んでしまうのではないかとマリアスは言わなかったんだ。


「彼の言葉からして、リューリッシュに来たばかりで知り合いもいないだろう。デジャルダンは行かないと思う。私に会いに来たようだからね。

 一度待ち合わせという場所に行ったらどうです?」


「そうしてみます。あなたのような方がリアム様の味方にいて安心しました」


「あなたの名前は?リアム君が戻ってきたら伝えておこう」


「それは助かります。私はウーノと申します。私を怪しむなら帝国の皇帝直属護衛庁に問い合わせてください。あとリアム様が見つかりましたら、そこに連絡いただければと」


 取引先さんにも協力してくれたことを感謝してから、ウーノはカレ商会を後にしたんだ。





 リアムはカレ商会から出ると、兵士の姿を見つけたから足早に離れたよ。


 ウーノが指定した待ち合わせの場所は、武器屋街にあったんだ。


 ただそのあたりは武器を買おうとする兵士も多いから、気が進まなかったんだ。


 ウーノは帝国の手の者がいるから、待ち合わせの場所にしたんだけどね。


 武器屋街に向かう途中でジョゼフィーヌの家も近いなと考えが浮かぶと、自然と足が向いたんだ。


 ジョゼフィーヌのお母さんのことも心配だったよ。


 リアムは玄関からではなく、アパートの裏側に回ったよ。


 アパートの裏は庭になっていて、二階に住むおばあさんが植えただろうハーブがたくさんあったんだ。


 ハーブを踏まないように、ジョゼフィーヌの部屋に近づいたよ。


 カーテンが閉まっていたけれど、少しだけ窓が開いていたんだ。覗き込むとジョゼフィーヌがキッチンに立っている姿が見えたよ。


 トントンと窓を叩いたんだ。


 リアムは物陰に隠れるとジョゼフィーヌが窓を開けたよ。


「あれ?」


 フーが来てくれたのかなって期待したけれど姿がなくて、ちょっとガッカリしたみたい。


「ジョゼフィーヌ」


 リアムの声にジョゼフィーヌはキョロキョロしたよ。好きすぎて幻聴まで聞こえてしまったのかと恥ずかしくなっていたところに、本物のリアムがこそこそ手を振っていたんだ。


「え?リアム?髪の毛どうしたの?」


「しっ。ちょっとヘマして兵士に追われてるんだ。すぐに行かなきゃいけなくて、もうリューリッシュに来れないかもしれないから。

 また会おうって約束したからさ。ちゃんとお別れしとこうと思って。お母さんは元気?」


「追われてる?お別れってなに?こっちにきて。上がって」


 ごく普通の日常に生きるジョゼフィーヌの方へ行けないんだと、リアムはつらくなったよ。


 ジョゼフィーヌと離れたくない。だけどここにいたら、彼女の平穏な生活を壊してしまう。


 理性は逢わない方がいいとわかっていても、心はとても逢いたかったから。


 来てはいけなかったんだと、今痛烈に理解したんだ。


「ごめん。ジョゼフィーヌの迷惑になるから。お母さんにも心配させたくないし」


「お母さんは亡くなったわ。リアム。逢いたかったわ。そばに来て。近くで話したい」


「…そう。つらいかったね。やっぱり迷惑かかるから。元気でね」


「迷惑ってなに?ちゃんと説明してよ」


 リアムは今すぐここから去るんだと自分の中の誰かの声に従って、ジョゼフィーヌに背を向けたよ。


「愛しているわ、リアム。だから一緒にいて。どこにも行かないで!」



 愛している。


 

 赤の他人の己の存在肯定。


 ずっとずっと誰かに言ってほしかった言葉。


 お前は必要なんだ、大切なんだ。


 ここにいていいんだよ。


 そうリアムは幼少から自分はいらない子、人にとって迷惑な子どもだと思っていたんだ。


 やっと言ってもらえた言葉と恋に揺らぐ。


 そして、いつ死ぬかもしれない身。


「一晩くらい、いい思いをしてもいいだろう?明日にはその首が締まって、二度と彼女に会うこともできないかもしれないしさ」


 アニバルの声だろうか。


「彼女を愛しているなら、すぐにここを去るんだ!」


 ルドの声だろうか。


 リアムはジョゼフィーヌに近づいて頬に触れようとしたよ。ジョゼフィーヌは、その手を引き寄せて自分の頬に置いたんだ。


 再びルドのような声がした気がしたけれど、無意識にジョゼフィーヌを抱きしめていたんだ。


「こんな俺でいいの?人を殺したよ?」


「あなたは傭兵だから、人を殺すのが仕事なの。仕方ないことよ。

 でも心から人を殺すのを望んでいるわけではないわ。リアムは優しい人。傭兵にならないでここにいて」


 ジョゼフィーヌは何も疑いもせずに、リアムの胸の中で安心したように目を閉じたよ。


「ねえ、ジョゼフィーヌ。もう一度、俺のことをどう思っているか言ってくれる?」


「愛しているわ。リアムは私のこと、どう思っているの?」


 リアムはジョゼフィーヌの頬を両手でくるんでキスをしたよ。


「俺も愛しているよ。ジョゼフィーヌ。ずっと逢いたかった」


 頭の中に鳴り響いていた警告を無視して、リアムは部屋の中へ入ってしまったんだ。


 再び警告音が頭の中で鳴ったときは、日が傾いていたよ。


 ベッドに横たわっている薄着のジョゼフィーヌに上掛けをかけてあげて、起こさないように離れたよ。


 ぞんざいに投げ飛ばしたウィッグは、ベッドから一番離れたドアの方にあって、拾い上げて鏡の前に立ったよ。


 (むさぼ)るように愛を求めて、何も言わずに去る。


 幾度も転生した人生で、一番最悪な男だなと苦笑しながら、着替えたよ。


 嫌われた方がいいのかもしれない。


 その方が最悪の事態になったとき、諦めがつく。


 そう考えながらも胸がとても苦しかったんだ。


「…やっぱり勝手だな」


 帽子を被ろうとしたとき、ぎゅっと後ろから抱きしめられたんだ。


「…どこにいくの?」


「ごめん。早くいかなきゃ」


「私も行くわ。連れて行って」


 腰に回されたジョゼフィーヌの腕を解こうとしたけれど、もっと腕の力が強くなったよ。


「俺の首に気づいただろう?これは偉い奴が駒として俺が使えると思って、逃げないようにつけたんだ。いつ首が絞まって殺させるかわからない。ジョゼフィーヌをきっと守れない」


「これ外せないの?」


 ジョゼフィーヌが首輪に触れようとする手を、リアムがそっと手を握って下に向けたよ。


「無理に外すと爆発するらしい。俺はもう行かなきゃ。生きて戻れたら必ず逢いに行くから」


「爆発?こんなもの誰があなたにつけたの?」


 ジョゼフィーヌの声が怒っているよ。


 リアムは自分のために怒ってくれるのが嬉しくて、赤くなっている頬にキスをしたよ。


「詳しいことは言えない。ジョゼフィーヌを巻き込みたくないんだ」


「手駒?あなたがランバートの英雄の子どもだから?」


「それもあるけど。理由を笑わないで聞いてくれる?」


 怒っている顔から真剣な顔になって、コロコロ変わるなとリアムは思ったよ。


「俺、帝国の始祖の生まれ変わりなんだ」


 彼女が真剣な顔からきょとんとした顔になったから、面白いなって失礼なことをリアムは考えていたよ。次はどんな表情をしてくれるのかなって、期待もあってね。


「本当なの?」


「うん。記憶があるからね。本当だという証拠はジョゼフィーヌに見せられない。君はあの時代を共に生きた人の転生者ではないだろう?

 帝国には証拠を示すことができて、皇帝は信じた。それを利用して、ランバートは俺を飼おうとしている。

 昔話や詳しいことを語るには時間がない。本当に危ないんだ」


「…わかったわ。五分だけ待って。支度してくる」


 恋人を見送るのに綺麗な格好をしたいのかなと、リアムは素直に待つことにしたよ。


 その間、家の窓という窓から外を見て兵士がいないか確認したんだ。


 アパートの表に人影が見えて、リアムは裏から逃げようと考えたよ。


「お待たせ」


 ジョゼフィーヌの手には大きめの鞄があり、ズボン姿だったよ。


「私も行くからね」


「あのね、旅行じゃないんだ」


「わかった。荷物は置いていくわ」


 荷物を床に置いて、財布とか貴重品を服のポケットに入れ始めたよ。


「そういう意味じゃない」


「リアムが走って逃げても、頑張って追いかけるから」


 彼女の覚悟にリアムは折れたよ。


「わかった。一緒に行こう。アパートの前に待ち伏せされているかもしれない。悪いけどジョゼフィーヌ、見てきてくれる?その間に俺は裏から出る。

 大通りで待ち合わせしよう」


「いいわよ。逃げないでね?」


 彼女が意外と勘が鋭くて苦笑したよ。逃げる気満々だったからね。


「逃げないよ。誓おう」


 と言って額にキスをすると、ジョゼフィーヌは満足そうに笑ったよ。


 ジョゼフィーヌが外に出ると、リアムは裏庭から隠れながら外に出たよ。


 人の姿がなくて、安心しながら中心地へ向かおうと角を曲がるとたくさんの兵士がいたんだ。


 兵士と眼があって驚いた顔をしてしまったけれど、何があったんだろうという顔を一生懸命したよ。


 通行人のふりをして、踵を返したら兵士が叫んだよ。


「反応が出た。こいつだ!」


 反応ってなんだろうと思ったけれど、兵士が走ってくるからリアムも走ったよ。


「なんだよ、お前ら!」


「リアム・アルク!逃げても無駄だぞ!」


 アパートの方へ走ると前からも兵士が現れて、その腕にはジョゼフィーヌがいたんだ。


「!」


「止まれ。この女を傷つけたくないだろう?」


 銃をジョゼフィーヌの頬に押し付けたんだ。


 やることが国と国民を守る兵士というより、悪党だよね。


 リアムには大人しく兵士に取り囲まれたよ。


 襟を掴まれて強引に下げられたよ。


「首輪をしているな。女とイチャイチャか?随分のんきだね、神帝陛下?」


「逃げるのに疲れて、知り合いの彼女のところに世話になっただけだ。そんな関係ではない。彼女は事情は何も知らないんだ」


「連れていくかどうかは上が決める」


 別の兵士が通信していたんだ。


 悪党風の兵士は上司さんの指示を聞いて、周りの兵士に命令したよ。


「女を連れていく」


「彼女は関係ないって言ってるだろ…」


 兵士がポケットから取り出したものをモノを見て、リアムは身体を強張らせたよ。


「黙ってついてこい」


「彼女は…」


 首がギュッと絞まるから、首輪の魔力は切れていなかったみたい。


「うそ、リアム!

 やめてよ。なんでこんなことできるの?おかしいんじゃないの?」


 ジョゼフィーヌは身体をよじって逃げようとするけれど、捕まれた腕はびくとも動かないんだ。


 兵士たちに引きずられるように、リアムとジョゼフィーヌは連れていかれたよ。


 すると空から石やら食器やらが降ってきて、兵士たちに中ったんだ。


「ジョゼフィーヌを放しなさいよ!」


 アパートの二階に住むおばあさんが一生懸命、色々投げているんだ。大体は庭に落ちていたけどね。


 気づいた住民たちも投げ始めたんだ。


「ジョゼフィーヌになにしてんだよ!」


「あんたたち出ていきなさいよ!」


 兵士たちは逃げるように車へ走っていたけれど、悪党風の兵士は銃を向けて発砲したんだ。


 アパートの住民たちは、部屋に入って逃げたよ。


「口だけの連中だ」


 鼻で嗤いながら何度か発砲していたんだよ。


『ユビキタス…』


 リアムは首に回復魔法をかけてから、呪文を唱えたよ。


 兵士の銃がカスカスと発砲出来なくなったよ。壊れたかと訝しげにしているから、帝国製のコア内蔵タイプらしいね。


 リアムは悪党風の兵士を睨んだよ。


「…兵士は民を守るためにいるんだろう?何、銃口を向けてるんだ。ランバートにはお前みたいな奴しかいないのか!」


「貴様!」


 首を絞められて、こんな国を守る意味あるかなとリアムは思ってしまったよ。


「軍曹。一般人が見ています」


 アパートの住民だけではなく、周辺の住民も騒ぎを聞いて野次馬が集まってきたんだ。


 軍が少年を痛めつけているのを見せるのはいかがなものかなって、兵士たちは思ったみたい。


「行くぞ」


 リアムとジョゼフィーヌは乱暴にトラックに押し込まれたよ。


 監視のために兵士たちも乗り込んで、出発したんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ