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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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27話 暴走

 リアムは目の前の大きな魔鳥に目を丸くしていたよ。


「フー、なのか?にしては大きいけど」


「ごはん、たくさんたべたの!ぱぱ、ちいさくなった?」


「お前が大きくなったんだよ。何でここにいるんだ?早くおじちゃんのところに戻れ!お前のいるところじゃないんだ!」


「えー。ぱぱが、なわばりあらそいしてるってきいたよ?だから、ふぅきたの。たくさん、さがしたんだよ」


 褒めて褒めてと顔をリアムにすり寄せてきたんだ。


 将軍たちはフーの姿が恐ろしかったのか、ゆっくりと後ろに下がっていたよ。


 リアムはフーに触れようとしたら、手に血がついていたことに気づいたよ。


「ぱぱ、おけがしたの?」


「大丈夫。かすり傷だけだ」


「ち…。ぱぱにおけがさせたの、だぁれ?」


 フーが将軍たちの方へ顔を上げたよ。


 将軍はゴクンと息を飲んだんだ。


「…傭兵。その鳥は火の鳥(オワゾ・デ・フウ)か?」


 傭兵ってリアムのことらしいよ。


 リアムが答える前にフーが空に嘴を向けて、ギーギー鳴いたんだ。


 フーのこんな鳴き方を聞いたことがないし、とても大きな声だったからリアムはとっさに耳を塞いだよ。


 鳴き終わると将軍に狙いを定めるように身を低くしたよ。


「おまえ、ぱぱのてき。ふぅのてき」


「フー、だめだ!人を殺しちゃ!」


 リアムの制止むなしく、フーは将軍を踏みつけたんだ。将軍はぐへっとカエルが潰れたような音を出していたよ。


 カッと嘴を開けると、大砲へ炎を吐いたんだ。


 周りにいた人たちは慌てて逃げたけれど、何人か巻き添えになって、髪や服に火が点いてしまったよ。


 リアムは水魔法で火を消しながら、フーに必死に呼び掛けたんだ。


「フー。敵じゃない!俺の友だちもいるんだ。やめてくれ!」


 いくつかあった大砲や車がドロドロに()けていたよ。フーが全力で戦ったのを見たことがなかったから、あまりの破壊力にリアムは背筋が凍る思いがしたよ。


「今度会ったフーはフーではないかもしれない。野生に戻るということは、他の火の鳥(オワゾ・デ・フウ)と変わらないということだ。お前を襲うかもしれない」


 エドおじさんが言っていたことが本当になってしまった。


 このままでは、フーがみんなを殺してしまう。


 止めなくては!


 リアムは痛む背中を無視して、走ってフーの前に立ったよ。


「駄目って言ってるだろう!言うこと聞かない奴は焼き鳥にするぞ!」


 フーはカパッと開いた口から熱風が起きて、火が放たれたんだ。


 リアムの渾身の防御魔法は壊れ避けたけれど、左半分が中ってしまったんだ。


「フー…」


 人と交わらぬ魔鳥を育てたせいか。


 現世はきょうだいのように育った火の鳥に焼き殺される。


 これも神罰なのかなとルド思考になりながら倒れたよ。


 霞む視界でフーが固まっていたのが、妙に人間臭くて面白いと思ってしまったよ。


「ぱぱ!」


「…フー逃げろ。いい子だから」


 撫でてあげようとしたけれど、手が全然持ち上がらなかったよ。


「ぱぱ。ごめんなさい。ごめんなさい。ままんみたいにならないで」


「お前、親のことを覚えてるのか?

 フー。おじちゃんのところに行って。帰れなくてごめんって言って」


 近づく人の気配にフーはグーと威圧するように鳴いて、頭を低くしたよ。


「あなた、フーちゃんと言うの?あたしはリアムちゃんのお友だちなの。リアムちゃんを治せる人がいるから、そこをどいてくれる?」


 アルマンは恐怖を押し殺して、早くリアムを治療しなきゃって思っていたよ。


 フーは逆立った羽がすーと戻って、アルマンをしきりに嗅いだよ。


「ぱぱのまほうのにおいする」


「そう、パパに治してもらったの。今度はあたしが治すから、いいかしら?」


 アルマンの言葉を信用したのか、リアムを守るように立っていたフーは退いたよ。


 カリナは杖を使って治癒魔法をかけたんだ。


「ぱぱ、げんきになる?」


「大丈夫よ。あなたはリアムちゃんに育てられたの?」


「うん。ままんがいなくなっちゃって、ふぅをそだててくれたの。

 ふぅ。わるいこだから、やきとりにされちゃうよ」


 飾り羽がくたくたっとなって、フーがしょんぼりしていたのがおかしくて、アルマンはふふと笑ったよ。


「リアムちゃんは優しいから、そんなことしないわよ」


 ヒューゴがゆっくり近づいてきて、フーが顔を向けると緊張したように立ち止まったよ。


「おじちゃん。ままんのにおいする。ぱぱとなかよし」


「ママンの臭い?」


「干し肉のことじゃないかしら。よくわからないけれど、フーちゃんはお母さんがどこかに行ってしまったから、リアムちゃんが育てたらしいですよ」


 ヒューゴはほうと感嘆してから、見上げたよ。


火の鳥(オワゾ・デ・フウ)は人語を話すのか」


「おわぞでふうって、なぁに?ひとが、ふぅのことをそうよぶの。ふぅのおなまえはふぅだよ」


「フーというんだね。火の鳥(オワゾ・デ・フウ)とは君の種族のことを言うんだ」


 フーは頭を傾げていたよ。


「ふぅはぱぱとおなじ、にんげんだよ?」


「え?」


 リアムがううと声を上げたから、フーたちはリアムを見たよ。


 カリナが緊張した様子で、ウーノに話しているよ。


「バヤール。皇子様は何て言ってるんだ?」


 ガレオはランバート兵が近づかないように、警戒しながら聞いたよ。


「治癒魔法が追いつかないらしい。身体の再生と血液の再生が両方同時にできないんだって。誰か出来る人が必要らしいけど」


 治療用の魔法具がある大きな病院なら助かるかもしれないけど、ここでは厳しいんだって。


「おねえちゃんのまほう、ふぅがすればいいの?」


 どうやら男装しているカリナを女の人だとフーは見抜いたみたい。


『この魔鳥が、今行っている治癒魔法が使えるみたいです』


 ジョゼフがカリナを手伝う素振りをしながら、小声で言ったよ。


『出来るのか?血液の再生だぞ?』


 高度な魔法な上、莫大な魔力を使うらしいよ。


 一か八か、フーにも手伝ってもらったよ。


 フーはんーと唸りながら、魔法を展開したんだ。


 みるみるうちにリアムの傷が塞がっていて、顔色が戻ってきたんだ。


『な…』


 カリナは目を疑ったよ。超高速再生は魔法具を使っても、できなかったんだ。


火の鳥(パハロ・デ・フェゴ)は治癒魔法も使えるのか!』


 リアムはざわつく人々の声に目を開けたよ。


「俺は、助かったのか?」


『始祖!よかった』


「ぱぱ!」


 リアムの顔を覗き込もうとする人々を押しのけて、フーが顔をすり寄せてきたよ。


 リアムは頬を緩めて、フーを撫でたんだ。


「落ち着いたようだな、フー」


「ぱぱ。どっかいかないで。ふぅといっしょにいるの」


「まったく巣立ちはいつなんだよ」


 リアムはゆっくりと身体を起こすと、ヒューゴや副団長、少し離れてカジミールがいたよ。


 アルマンがしゃがんで、傷がないか顔やら確かめていたよ。


「リアムちゃん。どこか痛いところない?フーちゃんが治したのよ」


「まったくない。魔力も回復したようだ。フーは魔鳥だから魔法は使えるけれど、治癒魔法が使えるなんて知らなかった。

 ありがとう、フー」


「ふぅ、やきとりにされない?」


「ははは。しないよ。みんなにごめんなさいをしたらね」


「…ごめんなさい」


 リアムが元気になってピンと伸びた飾り羽は、くたっとなってしまったよ。


 それを見て、アルマンがおかしそうに笑っていたんだ。


「本当に人みたいね。フーちゃんは自分のことを人だと思っているみたいよ」


「は?フーは鳥だよな?」


 リアムを嬉そうに嘴で優しくツンツンしていたフーは、違うと言うよ。


「ふぅは、ぱぱのこどもなの。だからにんげんだよ?」


「いや、俺の子どもじゃないし、お前は人間じゃない」


 フーはピシッと固まってしまったよ。


「あれ?どうした?」


「ふぅは、ぱぱのこどもじゃないの?」


 心なしか声を震わせていたよ。リアムはこんなことも出来るようになったのかと、感心していたよ。


「当たり前だろう?お前と会ったのは、お前が生まれた後なんだし。そもそもお前は空を飛べて、俺は飛べないじゃないか。

 飛べるのは鳥で、飛べない二足歩行をしている俺らが人間。お前と俺は違う生き物なんだ。なんで今さら驚いてるんだ?」


「だって、ぱぱっておやのことをいうっておじちゃんいってた。だからふぅのぱぱは、ぱぱだよ?」


「育てたから親といえば親だ。でも本当の親じゃないし、お前の父親は知らない」


 フーはうなだれてしまっていて、リアムはなんでショックを受けてるんだろうと思ったよ。


 そもそもフーが自分のことを人間だと思っていたのが、驚きだよ。


「ふぅは、ぱぱのこじゃない…」


「リアムちゃん、もう少し言葉を選んであげて。育ててあげたならパパでいいでしょう?」


 アルマンに言われて配慮がなかったと反省したよ。


 バヤールがリアムを少々侮蔑したような目で見ていたよ。


「認知してやれよ、認知」


「認知って何をだよ」


「まさか認知を知らないのか?」


「知ってるけどさ。男が自分の子どもだって認めることだろう?種族違うんだから子どもできるわけないだろうが」


『始祖は魔鳥の子どももいるのですね!さすが神です』


 フーとリアムの関係を聞いたカリナが、ファンタジーな妄想して感動していたよ。


『いや、違う。親鳥が死んだから育てただけだ。俺の実子ではない』


『違うのですか?』


『違うに決まってるだろうが!逆に種族が違うのに、どうやって子ども作るのか教えてほしいくらいだ』


「そうやって逃げるなよ。モテ男。自分のやったことを認めろ」


 バヤールが個人的な妬み全開で責めてきたよ。


「違うから!

 フーはでかいし、飛べて、お前以外のここにいるやつは飛べないんだ。違いとかわかってるのか?」


「ここにいるひとたちは、はねをうしなったひとたち。とべなくなったの」


「いきなりポエムチックになった!そして、自分がこの中でイレギュラーって気づけ!焼き鳥の意味わかってなかったのかよ」


「やきとりはひあぶりのけい、でしょう?ちゅうせいまでは、ひであぶって、ひとをころしたって、おじちゃんいってた」


「合ってるが、合ってない…。妙に勘違いインテリジェンス」


 ランバート側が少しざわついたよ。


 フーに踏み潰された将軍さんが起き上がったんだ。


 魔法の使い手が治療していたみたい。


「なんで治したのよ」


 アルマンが悪態をついたけれど、何事もないように将軍は立ったんだ。


 フーは踏み潰して悪いことをしたと思ったのか、リアムの後ろに頭を隠そうとしているけれど、身体が大きいから全然隠れていないよ。


火の鳥(オワゾ・デ・フウ)を飼っているとは驚いた。

 今まで悪く言ってすまなかった。傭兵ではなく我が軍に入らないかね?陛下も火の鳥(オワゾ・デ・フウ)をご所望されるだろう」


 敗戦して国が滅ぶかもしれないのに、勧誘って悠長なことをいうね。


「こいつ頭やられたか?フーがキレれば城なんて一瞬で破壊されるのによ」


 ヒューゴにこそこそ言ったよ。苦笑しかしていない様子に、リューリッシュのお偉いさんの能天気さにいつも手を焼いていることをリアムは察したよ。


「苦労人だな。あんたが王様になれば、ランバートもまともになるんじゃないか?」


「おや、神帝陛下が嬉しいことをおっしゃってくれる。私はどちらかというと裏方が好きでね。領主なんてやらされているが、本当は外交官のようなことをしたいんだよ」


 将軍が咳払いをしたよ。無視されてややご立腹みたい。


 リアムは嫌そうに返事をしたよ。


「俺は兵士になるつもりもないし、フーは飼っていない。家族を渡すつもりはない。

 王様に会う気はないけど?」


「お前が謁見するのは、決定事項だ」


「…帝国に謝れよ?和睦と見せかけて攻撃したんだから」


「我々は帝国を攻撃したわけではない。お前を攻撃したんだ」


 悪いことをしたのに偉そうだね。リアムは怒りを通り越して呆れてしまったよ。


「帝国を攻撃したわけではないと?それ、通用すると思ってるの?」


 ランバートの釈明?を聞いたカリナは激怒したよ。


『始祖を攻撃したことは我が国を攻撃したと同じ意味である!』


 大規模魔法の気配にリアムは慌てたよ。


『カルロス!落ち着け!ランバートの民を傷つけるな!この男が勝手に言っているだけかも。主張もコロコロ変わってるし、王様にも確かめないと』


 カリナは気が収まらないながらも、始祖が言うならばと魔法を引っ込めたよ。


 渋々だけれど、王様に会いにリューリッシュに行くことになったんだ。カリナたちは止めたけれど、王様の本心を確認したいからね。


 カリナは帝国に戻るから、杖をくれたんだ。


『これで御身を守れるとよいのですが』


『ありがとう。これがあれば心強い』


 回復したヴァリエンテ王が使者になると言い出したけれど、人質にされたら困る。ということで、リアムの護衛したいと言って聞かないウーノがついてくることになったんだ。


『言葉話せるの?』


「四地域の大体は。ただギムペルの訛りと独特の話し方は難しくて習得していませんが」


「なんだ、アナベルの言葉を話せるの。ギムペルね…」


 高い山脈があったせいで、ギムペルの大半は他の地域とは全く違う文化らしいよ。中央(ケントルム)系の言葉が残っているとも言われているんだ。


 帝国のような先進国が入っていって、ハイドランジア最後のフロンティア的な場所になっているらしいよ。


 列車で移動するけれど、フーは列車に乗れないから飛んでもらうことにしたよ。


「というか、リューリッシュとかに現れた火の鳥(オワゾ・デ・フウ)って、フーのこと?」


「ん?ぱぱをさがしに、ひとがたくさんいるところに、いっちゃった」


 別の火の鳥に会ってみたかったから、リアムはちょっとがっかりだったみたい。


 リューリッシュにつくとリアムは軍服を渡されて着替えろと言われたけれど、拒否したよ。


「俺、正規兵じゃないし」


「なら、ましな服に着替えろ」


 将軍さんは終始上から目線で、ウーノは時折殺していいですかというおうかがいの視線を寄越すんだ。


 いやいやよくないからと目で会話していると、小部屋に案内されてそこで着替えろというよ。


 ウーノが手伝うとか言うけれど、戦闘着を着るだけだから断ったんだ。


 脱いだ服を見ると、血がついて所々破れていたよ。


「派手にやられたな」


「ご無事で何よりです。何度も申し上げておりますが、傭兵を辞めて我が国にお越しください」


「傭兵は辞めるけど、帝国には行かない。会いたい人がいるしね。その人と話して決める」


「エドガール・ロシュですか?」


 リアムは汚れた服を袋にしまう手を止めたよ。


「そこまで割れてるの?」


「そこまでですが。彼も呼びましょう」


「おじちゃんは帝国に多分行かないし、圧力かけるのも許さないからね」


「承知しました。汚れた服を預かりましょう」


「?捨ててもらうつもりだけど」


「教会や信者がほしがるかもしれませんので、それは嫌でしょう?責任を持って焼却します」


「こんなん欲しがる奴いんの?」


「神がお召しになったものですから、欲しがる者もおりましょう」


 リアムは気持ち悪いと引いていたよ。


「変な時代になったもんだ」


「そうでしょうか?千年前から神帝陛下のご遺体に触れようとしたり、盗もうとする輩が後をたちませんから」


「遺体?」


 千年経っているから、もう白骨化かミイラになっているだろうと思ってたけれど、違うらしいよ。


水晶(クリスタル)の棺にお入れしており、亡くなった当初のお姿のままです」


「マジか…。水晶(クリスタル)の話は迷信かと思ってたんだけど。ほら、墓にいれたら掘り起こさない限り見ないだろう?

 前世の遺体が残ってるって不思議な感じだな。デブデブヨボヨボだったと思うから、あんまり見ないでほしかったんだけど」


「いいえ。凛々しいお姿のままですよ」


 何を言っても褒めそうだし、ウーノを信じて服を破棄してもらうようにしたよ。


 着替え終わって荷物をかたつけながら、聞いたよ。


「この千年間で、俺の前世の知り合いで転生した奴いるか?」


「何名かおります。選定侯のヘラルド様とカルロス様がそれぞれ混迷の時代に転生されました。皇帝として即位され、我が国を建て直しされました」


「ヘラルドとカルロスが?

 混迷の時代。千年以上あればそういうときもあるだろう。帝国が維持されてきたのは、血の外交だけではないということか」


 建国した当初やアニバルを知る人が転生し、当時のことを語られる。

 

 長い時代、記録といえば書き残すか、口伝だけだから多くのことが失われるけれど、記憶を持った当事者たちが転生したなら、忘れ去られた過去の出来事が再び後世に伝えられる。


 帝国では転生者は尊敬されて大切にされるわけだから、転生者の意向が大きく反映される。


 デスペハード帝国が二千年続いた理由の一つみたいだね。


「そうです。始祖や神帝陛下と繋がりがあった転生者を我々は、伝道者と呼ぶこともあります」


「伝道者ね。なるほど。

 それでエクトルとフィデルは転生していないのか?」


「選定侯エクトル様は亡くなってから、転生したという記録はありません。フィデル様の前世の話は聞かれましたか?」


「フィデルの前世?あいつも転生者だったのか?」


「神帝陛下が亡くなったのをご覧になって思い出されたそうです。フィデル様の前世はジュスト様です」


 リアムはジュストとフィデルの顔を思い浮かべて、性格が違いすぎて思わず笑ってしまったよ。


「ジュストとフィデルは性格が真逆なのにな。エクトルがどちらかというとジュストっぽかったというか。

 フィデルはジュストなんじゃないかって少し思っていたよ。そっかそっか。ジュストとエトーレは、来世で本当のきょうだいになったわけだ」


 リアムがニコニコしていると、なぜかウーノは驚いていたよ。


「なんか変だった?」


「ジュスト様をお許しになっているのですか?」


 どうやらジュストはこの時代も裏切り者扱いみたい。


「許すもなにも、彼は一度も俺を裏切ったことはなかった。アニバルのときに言っておいたけど、訂正されてないみたいだな」


「申し訳ございません。ご本人が始祖に謝罪をしたいと言い残しておりまして。

 次の転生の時は、皇子の身分を捨てて始祖を探しに出たと」


「次の転生?それはいつの話?」


「約百年前です。比較的若いときに記憶を取り戻されて、法に従い皇帝になるはずでしたが、辞退されたと」


 裏切り者のレッテルを貼られて本人も悔いているなら、喜んで皇帝になろうなんて思わないだろうね。


「俺を探しに…。百年前か。現世では会えないだろうな。

 アニバルのときにちゃんと伝言を残しておけばよかった」


「今からでも遅くありません。手記も残されておりますので、是非帝国にいらしてください」


「そのうちね。今はランバート王に会わないと」


 気の進まない足取りで部屋を出たよ。

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