26話 ゲレルの民
皇帝エリシアとヒューゴとは顔見知りのようで、お互いにこやかにお久しぶりと現代エルスター語で挨拶をしていたよ。
エリシアが武力ではなく、ランバートへ内政干渉をすると言ってきたんだ。
『格差は広がり、一日の食事がパン一つのところもあると聞きましたの。それでは始祖のお望みの世界はまだ遠い。私たちに預けてはくれませんか?』
ヒューゴがリアムをチラリと見たけれど、わざとらしく現代語はわかりませんという顔をしていたよ。
ヒューゴの粘り強い交渉で、内政干渉は退け、帝国から少しの賠償金をもらうことになったよ。
「あのおばちゃん、若作りしてるが何歳なんだ?」
通信が切れると、リアムが戦争と関係ないことをヒューゴに聞いたよ。
「おばちゃんとは…。皇帝のことかな?」
「あの場に皇帝以外、女いなくない?」
カルロスは女の子と判明したけれど、おそらくこの場で知っているのはリアムだけだと思われるから黙っていたよ。
「五十近いはずかと。女性に対して、あまりそういうことを言うのはよくないと思うよ?」
「はいはい。で、俺はリューリッシュに向かえばいいのか?」
「出発は明日にしてほしい。ヴァリエンテ王があなたの復活を聞いて、こちらに向かっているそうだ」
「なんか言ってたな、そんなこと。明日に着くのか?早くない?」
「列車と車を使えば来られるだろう」
さすがに王様はバイクじゃないらしいよ。
「それで、今日はテントで寝る感じ?」
いつの間にかもう夕暮れだったよ。魔法も連発したし、休みたかったんだ。
「カルロスと同じテントでいいか?魔法具について…じゃなくて前世が死んだ後の千年間のお勉強しなきゃいけないし」
ニヤニヤしながら杖を撫でていたよ。
「近代化の父と言われ、魔法具の神と言われただけあるね」
「なんだ、それ?」
「神帝のことだよ」
リアムが思いっきり嫌な顔をしたから、ヒューゴは大笑いしたんだ。
こうやって生きて笑えることにリアムに感謝していたよ。ランバートが滅亡する前にシランスの領主のヒューゴの命はなかっただろうからね。
カルロスの引き渡しはヴァリエンテ王が来てからになって、両軍はその場でテントを張って夜を明かしたんだ。
カルロスとテントの中を二人きりになったときに、本当の名前を聞いたよ。
『生まれてすぐにカルロスとつけられたわけではないだろう?』
『はい。カリナと申します。陛下はわざわざ男にならなくてもいいと仰ったのですが、武器を持って戦うのは男の領分です。
男として扱ってもらった方が、兵士たちも私も気が楽でして』
『そういうことか。これからどうするんだ?カルロスとして生きるのか?』
『始祖が現れましたので、私はカリナに戻ります。男の振る舞いはあまり今はしたいと思わないというか…なんでもありません』
カリナはもじもじして、リアムを上目使いで見ていたよ。
なんとなく居心地悪くなったリアムは、女の人と二人で同じテントで寝るのは気が引けて、リアムはアルマンたちを探したよ。
彼らは同じテントにいたんだ。
「リアム、お疲れ!激動の一日だったな。まさか戦友の息子が神帝の転生者だし、あのデスペハード皇帝が頭下げるし。驚きすぎて麻痺しちまったぜ」
ガレオはいつも通りで、近くにいた老戦士は疲れた様子だったよ。
「治癒魔法をかけてくれてありがとう。情けないな。最後の最後で命乞いなんてよ」
「誰だって死ぬのは怖いさ。俺だって何度も転生したが、死にたくないっていつも思うぜ。
こうして生きているってことは、あんたはあそこで死ぬところじゃなかったってことさ」
リアムが言うと老戦士はそうだよなと、少しだけ元気になったみたい。
出発前にいた顔ぶれより欠けて、リアムは寂しかったよ。
「レオは治療中?」
「ああ。派手に斬られたようだ。もしかしたら片手を切断しなくてはならないかもしれない」
「そう…。デジレは…」
「遺体安置用のテントだ。回収してやれただけよかった。森の中に置き去りになった奴らは難しいだろう」
騎士団が遺体回収に行っているみたいだけれど、魔物が先に取っちゃってるかもしれないんだ。
ランバート兵もデスペハード兵も多くが死んだ。
「リアムちゃん?」
リアムは涙が溢れてきて、慌てて拭いたよ。
「まだリアムになっちゃいけないんだ。ここで止まると何も考えられなくなりそうで」
「泣いてあげなさいよ。デジレのためにね。王様だって誰かが亡くなれば泣くでしょう?」
アルマンに促されると泣いてしまったよ。
「何で戦争始まって思い出すんだよ。もっと早く思い出していれば、犠牲は少なかったのに。
デジレも俺が名乗り出なきゃ死ななかったかもしれなかった」
「過ぎてしまったものはどうにもならないわ。リアムちゃんのせいではないの。自分を責めないで」
リアムだって前世がとんでもない人たちだなんて、考えていなかったよ。
アニバルの思考で動いてしまったから、冷静になると怖くなってきたんだ。
「俺…神様とか王様とか無理だよ。一生皇帝とかシエロ教の人たちを相手にするの?
俺は傭兵やって、運が良かったら成功して、エドおじちゃんと落ち着いて暮らせるところを探しに行きたかっただけなのに。なんで、こうなっちゃったんだろう」
ガレオは励ますようにリアムの肩をさすりながら、聞いたよ。
「リアムが望んだわけじゃないのか?」
「色々な考えが浮かんで…。デスペハードは前世の子どもたちの国だし、ランバートは生まれ育った国だから、両国が戦争するのはとても嫌だったんだ。
戦争を終わらせる簡単な方法を選んだけど…。後の事とか考えられなかった。
俺の前世が王様?神だって?なんでたよ…。俺はおじちゃんと普通に暮らしたいのに」
このタイミングでリアムは逃げ腰になったんだ。このままではリアムにとってよくない。
アルマンはガシッとリアムの肩を掴んだよ。
「どうしてとか考えても仕方ないのよ。あなたの前世が帝国の始祖や神帝なんだから、それは変えられないの。
生まれ持った身体のように、魂もつきあっていくしかないの!決して逃げられないのよ。だから折り合いをつけなきゃ。
あなたは頑張って考えて動いて、戦争を止めたのよ。それはリアムちゃんの気持ちだったんでしょう?ちゃんと犠牲を減らしたの。あなたは立派よ。成し遂げられたの。もっと自分を褒めてあげて。
前世に引きずられたなら、リアムとしてどう生きるか考えなさい。それはあたしたちにはできない。あなたの人生なんだから!しっかりしなさい!」
アルマンの叱咤にリアムは眼を丸くしながら、暗くて重い気持ちが少しずつ軽くなったよ。
「ありがとう、アル姐さん」
「ふふ。お礼はあの、あつーいキスで」
「…あれ治癒魔法で、凄く疲れるから嫌なんだけど」
アルマンは頬を膨らませたから、ジョゼフは吹き出したよ。
「そういう意味じゃないぜ、リアム。ていうかあれもうやるなよ。
惚れ魔法なんだから」
「今はそんな名前ついてるの?」
「始祖が妻を落とした魔法」
「…そういうつもりまったくなかったんだけど。病気で弱っているキアーラが治って、勘違いしたというか」
「そういうことになってるけどね」
「そういうことなの!」
「…リアムちゃん。キアーラって誰?」
「前の前世の妻だから。前世の!」
ジェラシーに燃えるアルマンがジリジリ迫ってきて、ちょっと怖かったみたい。
当初の目的を慌てて言ったよ。
「そうだ、アル姐さん。俺のテントに来てほしいんだけど」
アルマンの眼が輝いて自分の頬に手を置いたよ。
「早く言ってよ、もう」
「ジョゼフも来てほしくて…」
何でジョゼフもよとアルマンがムッとしてから、笑顔になったよ。
「ふふふふふ。三人で一緒に寝ましょうね。あたし受けだから。ジョゼフちゃんはどっち派?」
「あんたは絶対攻めだろうが。
リアム、ここで寝るんじゃないのか?」
「カルロスもいるから、テント狭いかな?」
純モードのリアムに、アルマンは猥談をしようとしたことを少し反省したらしいよ。
リアムは二人を連れて、カリナのいるテントに入ったよ。
カリナはリアムがテントに入ると、パッと嬉しそうに笑顔になったんだ。
後ろの二人を見ると嫌そうにしていたよ。
アルマンはカルロスの女的な感じを嗅ぎ取ったみたい。
「リアムちゃん。ジョゼフちゃんはわかるけど、なんであたしを呼んだの?帝国の言葉わからないわよ」
「ジョゼフはカルロスの本名を知ってる?」
「ああ。俺は特殊な立場だからね。帝国の一般人は知らないと思う」
「何の話?」
リアムは入り口に目をやってから、ヒソヒソと小声でアルマンに教えたよ。
「広めないでほしいんだけど…。カルロスは女で本名カリナという。軍にいることで、男の方がやりやすかったから、男の格好や名前を名乗っていたらしい」
「やっぱりそうだったのね!リアムちゃんを見る眼が乙女だったのよ!」
ジョゼフィーヌに続いてライバル出現に、アルマンは気が気ではないみたい。
「いや、カリナは俺が始祖だから会えて嬉しいんだと思う」
カリナに睨まれているジョゼフは、違うぞリアムと思っていたよ。
「カリナ様…誰が聞いているかわからないから、皇子と言うぞ。俺を引き合わせてどうするつもりだ?」
帝国側のジョゼフは、カリナが密偵に伝言を頼もうとしているのかなと考えていたみたい。
「通訳できる奴がいた方がいいのかなって。バヤールだと声大きいし」
「あいつは隠し事できないから、無理だろう」
ジョゼフはカリナに帝国側の調査員と伝えて、どうしてここにいるか説明し、リアムに正体はバレていることも話したよ。
カリナは味方だと知って、安心したみたい。
『始祖と二人きりになれるように、はからいなさい』
ジョゼフはどうすると振り向くと、リアムの横にピッタリといるアルマンがジェスチャーでダメダメって言っていたよ。
「その女。リアムちゃんに何するかわからないわ!」
ジョゼフとカリナの会話を、リアムがアルマンもわかるように通訳していたよ。
「カリナというより俺の方じゃね?さすがにここで変な気は起こさねえよ…。二人きりだと帝国側で勝手に噂されるといけないからさ」
「だったらヒューゴ様に預ければいいじゃないの。正規兵の見張りもいるし、皇子待遇でいいベッドもあるわよって、ジョゼフちゃん言ってあげて」
「俺も皇子様のことを考えれば一般兵用のテントと寝袋じゃない方がいいけど、監視はキツくなるから俺も近寄れないぜ?」
「皇子のことはどうでもいいのよ。リアムちゃんが心配なの」
「…リアム。なんでアル姐を呼んだ?」
リアムはアルマンを信用しているし、他の男をつけるとカルロスが女だとバレたときによくないと思ったことを話したよ。
「男所帯っていうのはわかるが…。アル姐も男じゃん」
「心は女の人だし、他の男よりはいいかと」
ジョゼフは腑に落ちなそうだけど、始祖の言うことだしと納得していたよ。
「大丈夫。あたしは女の人より、男の人の方が興味あるから」
とジョゼフにウィンクして、引かれていたよ。
カリナにアルマンとジョゼフも一緒のテントになると説明したよ。
『身体は男で心は女。そういう病があるのは聞いたことがあります。治す方法は現在ありません。
身体の性に合わせる治療をしておりましたが、近年患者の苦痛を与えるとしてその方法はとられていません。身体の性別を変える魔法は見つかっていないと聞いています』
『病、なのか。昔からあったのだろうが、表面に出てこなかったんだろうな』
ハイドランジアでは、医療はもっぱら魔法で行われるよ。外科の技術はキミたちの世界よりもとても遅れていたから、ガンや内臓系の病はなかなか治らなかったというよ。
もちろん、壊死した手足を斬ったり、虫歯を抜いたりといった治療はされていたよ。身体を開いて悪いところを取って、縫合するという手段はあまり取られないと思ってね。
コアの発明によって、魔力がない人でも医者になって治癒魔法の使い手になれたよ。魔法は誰もが使えるようになったから、魔法での解決方法が主流になっていたんだ。
アルマンはガレオたちがいるテントから寝袋を持ってきて、堂々リアムとカリナの間に敷いたんだ。
カリナはムッとしていたけれど、アルマンは知らんぷりしていたよ。
「俺はこっちで寝るな」
女の争い?に、巻き込まれたくないのか、護衛のためかジョゼフはテントの出入口付近に敷いたよ。
「見張りいるかな?」
「俺するからいいぜ?」
「ジョゼフも寝ないと」
「眠かったら起こすよ」
と言いながら、ジョゼフはリアムを起こさず朝になったよ。
目が覚めると、アルマンがじっと見つめていたんだ。
「うおっ!」
「おはよう、リアムちゃん。おはようのチューは?」
「…朝から元気だね」
「リアムちゃんの寝顔を見られたからね!うなされていたけど、昨日の夢でも見ちゃった?」
戦争で多くの人が死んだからね。いくら前世の記憶があるといっても、十七歳の少年のトラウマになってもおかしくないけど、リアムは少し違ったよ。
「前世の記憶を思い出したから、死ぬところも思い出してさ。アニバルのときも結構キツくて、護衛に睡眠魔法を教えてもらったことがある」
「死ぬところ?」
「朝から話すことじゃない。腹減った。飯、飯!」
カリナはヒューゴたちランバートの貴族と一緒にご飯を食べたよ。リアムも誘われたけれど、堅苦しいところは苦手だから、断ったよ。
夜にはヴァリエンテ王は到着していたみたい。
ランバート軍とデスペハード軍は向かい合う形のまま、その真ん中でカリナの身の引き渡しがされることになったよ。
王はヴァリエンテの民族衣装を着ていたんだ。
ふっとリアムは過去に戻った気持ちになったよ。
『ゲレルの民か?』
二千年前のレナータ語で話したけれど、かろうじて通じたみたい。
『はい。あなたの民です』
リアムが怪訝そうにしたから、ヴァリエンテ王はエルスターの言葉で繰り返したよ。
現代レナータ語はルドの時代と違うみたい。多分、ヴァリエンテ訛りも入ったせいかもしれないけれど。
『これは我々からです』
二人の男が王様の横に来て、手には何やら金属の鞄のようなものを持っていたよ。
すっとリアムの前に出したんだ。
アタッシュケースパッカーン、札束ぎっしり。
『現世は傭兵だとうかがいました。あなたを雇わせてください。足りなければもっとご用意します』
リアムがデスペハードの札束に視線が釘付けになりながら、俺はランバート民だからとしどろもどろになっていたのをカリナの冷たい視線が突き刺さったよ。
それに気づいたかどうかはわからないけれど、ヴァリエンテ王はにこやかにしていたよ。
『神よ。お目覚めおめでとうございます』
『ああ。お前たちと再び会えて嬉しい』
和やかに話しているところに、ランバート側が魔法具の大砲を準備していることに気づいたんだ。
トンネル砲とは格段に威力は落ちるけれど、大砲はアニバルの時代より飛距離も増して戦争には欠かせない兵器だよ。
リアムはなんだろうと思っていると、ウーノたち護衛が動いたよ。
『始祖、カルロス様。お下がりください!』
リアムもまさかと思いながら、ユビキタスを発動し、大砲を停止させようとしたけれど、発射されてしまったんだ。急いで防御魔法を展開したよ。
防御魔法はあっけなく割れて、カリナの杖を使って防御魔法を放ったんだ。
ヴァリエンテ王やウーノたちがリアムを守ろうと前に立ったよ。
これでは全員を守れない!
『みんな逃げろ!』
威力が落ちながらも大砲は防御魔法を破って、リアムたちに襲いかかったよ。
ウーノがリアムに抱きつくように倒し、カリナたちも防御魔法を一斉にリアムを囲むように発動させたんだ。
眼を開けるとウーノがいて、彼は無事みたい。
『お怪我はありませんか?』
『お前は?』
『大丈夫です』
身を起こすと周りにいた人は、倒れて何人か負傷していたよ。
カリナは護衛に守られて無傷だったけれど、その護衛たちは服が破れて皮膚が爛れていたんだ。
ヴァリエンテ王も倒れていて、半身やけどを負っていたよ。
リアムは治癒魔法を周囲にかけながら、ヴァリエンテ王に駆け寄ったんだ。
『どうして、俺を守った?お前は王だ。守られる人間なんだぞ?』
『光の王よ、我らの神。ご無事でよかった。この老いぼれでも役に立てて光栄でございます。私の代わりにあなたの民に光を与えてください』
『勝手に死ぬな。治すから』
後ろから逃げろと叫び声がして、リアムは顔をあげたよ。
大砲がブルブルと震えて、また発射しそうなんだ。
すぐにユビキタスに魔法具の停止を指示すると、大砲は止まったよ。
治癒魔法を展開した杖をカリナに渡して、ランバート軍を睨みながら近づいたんだ。
遠くて声は聞こえなかったけれど、ヒューゴが国王軍の将軍さんに食って掛かっているみたい。
リアムは怒りに任せて叫んだんだ。
「何故!和睦の道をふいにした!」
「傭兵は黙っていろ!」
将軍さんは迷惑そうな顔をしていたよ。
「その傭兵が戦争を終わらそうとしてんだ。このまま戦ったら負けるぞ!」
「黙れ!我が国は国民一人になっても戦う!
そもそも転生なんぞ、ない!お前は父親を真似て英雄を気取りたいのか?」
リアムは怒りに震えたよ。転生を信じてもらえなかったのと、英雄気取りだと馬鹿にされたことにね。
将軍は侮蔑した様子でリアムに言ったよ。
「陛下からのお言葉だ。『停戦合意したが、終戦ではない。王は私だ。傭兵ではない!』だそうだ。お前は傭兵の領分を越えている。速やかに下がり、待機せよ」
将軍の態度に、普段穏やかなヒューゴが苛立ってきたよ。
「将軍。このままでは帝国との衝突が避けられません」
「シランス殿。あなたは領主です。帝国との交渉は陛下と宰相が行う。いいですね?」
「…わかりました。リアム。こちらに来なさい」
「将軍さんよ。カルロスに謝罪はないのか?ヴァリエンテ王も怪我をしている!」
将軍がさっと銃を出して発砲したんだ。
アルマンたちが買ってくれた魔法具が発動して、かろうじて防げたよ。
ユビキタスの効力の範囲内なのに止まらなかった。将軍の持つ銃はコアのない魔石タイプみたいだね。
将軍さんは勝ち誇ったように笑ったよ。
「お前の奇妙な魔法、魔石の魔法具は止められないようだな。
お前はランバート王家には邪魔な存在なんだ。このまま死ね」
連射されて、リアムは必死に防御魔法を展開したけれど、防ぎきれず何発か腕や足をかすったよ。
「邪魔ってなんだよ!」
「お前がアルク姓だから、陛下はお前が国を乗っ取るのではないかと心配されている。しかも帝国の始祖の転生者ときた。帝国は馬鹿馬鹿しい嘘を信じているようだし、お前を使って我が国を転覆させるかもしれない」
「俺は王も国にも興味ない!帝国とも手を組まないし、たまたま王家と同じ姓だろうが」
「たまたま?お前はシャルルが何処の出か知らんのか?」
「親父の…。まさか王家の?」
将軍は答える気はないようで、銃をリアムの胸に向けたよ。
「将軍おやめください。彼を殺したら帝国は我が国を滅ぼすでしょう」
ヒューゴが将軍を止めさせようとしたけれど、周りの兵士に腕を捕まれて追い出されそうになったよ。
「シランス殿。私の邪魔をすると反逆罪で投獄しますよ?」
「それは陛下の命令か?」
「昨日の対応は不服だったそうだ。だから、この場の指揮は私に託すと仰せだ。この男が生きていることが陛下は不安なのだ。
それにこの男を守ったところで、転生など嘘はすぐにバレる。帝国に処刑されるか、ここで死ぬかの違いだ」
リアムは治癒魔法で傷ついた手足を治しながら、逃げる隙をうかがったよ。
杖を持ったカリナとウーノが走って来るのが見えたんだ。
『来るな!ランバートにはコアなしの武器がある!』
リアムが振り返って二人を止めようと叫んだ瞬間、将軍が連射したんだ。
防御魔法を展開していたけれど、魔法具が耐えきれずに切れてしまったんだ。一発背中に命中して、鋭い痛みが走ったよ。
防弾チョッキのおかげで怪我はなかったけれど、衝撃で倒れたんだ。
『始祖!』
カリナは将軍に向かって、魔法で氷の刃を放ったよ。
将軍は防御魔法で防いでから、銃口をカリナに向けたんだ。
「やめないか!皇子を殺したら取り返しがつかないぞ」
リアムは起き上がろうとしたけれど、背中が痛くて顔をしかめたよ。
銃口はそのままリアムに向けられたんだ。
「王家の邪魔になる者は排除しろとのことだ」
「王様は帝国よりも俺の方が脅威になるって思っているのか?どう考えても帝国だろうが!目の前しか見ていないのか?王は!
…まさか、親父が死ぬように仕向けたのか?」
将軍は答えず、兵士もヒューゴたちも動かない。
カリナとウーノ、帝国兵がリアム殺害を阻止しようとしているけれど、ランバート兵に阻まれていたんだ。
ランバート兵はコアなしの魔法具を全員が持っているわけではなく、人の壁になってカリナやウーノに倒されていたよ。
簡単に失われていく命と、奪われようとしている己の命。
唇を噛んで必死に活路を見いだそうとしていたけれど、少し動くだけでも銃口はリアムの心臓に向けられているんだ。
すでに多くの魔力を使い、銃弾から防御できる強力な防御魔法は何度も使えない。
引き金が引かれようとしたとき、空が急に暗くなったよ。
将軍もリアムも敵も味方も関係なく、自然に空を見上げたよ。
すると大きな緋色の鳥が太陽を隠すように飛んでいたんだ。
それがすーと降りてきて、カリナたちは避けるようにデスペハード側へ退避したよ。
鳥はリアムを見ると三本の飾り羽をピンと伸ばしたよ。
「ぱぱ、みっけ!」
嬉しそうに両翼をバサバサさせて、リアムに近づいてきたんだ。




