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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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21話 開戦

 翌日、リアムは急所に鉄の板が入った戦闘着を着て、ヘルメットを被ってから、ガレオたちと集合場所に向かうと副団長がいたよ。


「リアムの言うとおり、肉の臭いに飼い犬が怯えて私に近づかなかった。効果はあるようだね。でも間違えて森の奥には行ってはいけないよ。火の鳥(オワゾ・デ・フウ)級の魔物がいるからね」


 リアムはジョゼフとバヤールを探していると、ガレオの師匠とデジレが見つけたよ。


「傭兵は十人前後で好きに組んでいいそうだ」


 ヒューゴの計らいでリアムたちは二陣で出発するようなんだ。一陣は全滅覚悟と言われているけれども、戦力的に負けているランバートはシランス領で敗戦の可能性は十分あるよ。


「よ、リアム。俺も混ぜてくれ。一緒に武勇伝を作るぞ!」


 レオが手をブンブン振って、やってきたよ。


「レオの戦いを真似したらだめだぞ。敵に真っ先に突っ込んでいくからな」


 バヤールも来て耳打ちしたよ。


 途中まで車でいくらしく、屋根付きのトラックに乗ったよ。


「ジョゼフ、トイレ行ったか?」


「…行った。わざわざ確認しなくていいじゃないか」


 バヤールの発言にジョゼフは不機嫌になったよ。どうやら任務中によくトイレに行きたくなって、抜け出すことがあるんだって。


「緊張してるか?」


 ガレオが最もトイレに行きそうな新人リアムに聞いたよ。リアムは笑おうとしたけれど、頬が強張っていたんだ。


「敵はまだ現れないわ。気楽にね」


 アルマンがリアムの緊張をほぐそうとしてくれたよ。


 帝国軍と会うのは、森の真ん中あたりと思われていたんだ。


 トラックの荷台は布で覆われていたけれど、明かりとりや監視用の窓が開けられていたよ。


 リアムはそこから顔を出すと、いたって普通の森が広がっていたんだ。


 車の走行音であまり音は聞こえなかったけれど、鳥などの生き物の姿は見えなかったんだ。


「この道の周辺には魔物避けの魔法陣が置かれていて、めったに道には入ってこない。おそらく敵も道を通って来るはずだ。大所帯だしな。俺らはあえて脇から狙う」


「え?魔物がいるんでしょう?」


「なぁに。これだけ車が通るんだ。魔物もどっかにいくだろう。一陣がトラックで道を通る間に俺たちは徒歩でいく」


 デジレがなんともないように言うよ。

 だから、リアムも大丈夫だって思ったよ。


 二十分くらい進むと前のトラックが徐行になって、止まってしまったんだ。


 ガレオたちはすぐに防御の魔法具を発動したから、リアムも慌てて発動したよ。


「何かしら。もう少し進むと思ったんだけど」


 アルマンがゆっくりと前の方を覗くと第一陣がいるだろう遥か前方で、火の手が上がっていたんだ。


「作戦変更!兵士はトラックを降りて進軍!」


 運転手が叫ぶと、ガレオたちは機敏に降りて物陰に隠れたよ。リアムは釣られるように降りて、ちょとつまずいちゃったよ。


「敵は想定より近いところにいたようだ。すでにここにいるつもりでいくぞ」


 ガレオを先頭に周囲を確認しながら、ゆっくり進んだよ。リアムたちが乗っていたトラックの前後のトラックから降りる兵士の姿があって、二陣は森の中を進むみたい。


 トラックが再び前進したんだ。


 道が木や岩に隠れる場所まで入ると、バンと大きな音を立てていくつかのトラックが燃えたんだ。


 リアムは運転手がまだ残っているから、助けに行こうとしたんだ。腕をレオに掴まれたよ。


「囮なんだ。俺らがまだ乗っていると思わせないといけない。早くいくぞ!」


「でも人が…」


「作戦のために殉死した。誇りある戦士の死だ」


 兵士として当然の考えなのかな?


 リアムは軽くパニックを起こしながら、みんなについていくよ。


 トラックが燃える音が遠ざかり、鳥や虫も鳴いていなくてとても静かだったんだ。


 小枝を踏んだ音に驚いたり、自分の呼吸と心臓の音が大きく聞こえるように感じたよ。


「…会わないな」


 ガレオはすぐそばに敵がいると考えて、銃を構えたまま木に隠れたよ。


 リアムは怖かったけれど眼には頼らない、可視化魔法を使ってみたんだ。


 ふわっと浮き上がった人の輪郭にリアムは震え上がったよ。


 ガチガチと歯が合わないリアムに、老戦士がどうしたと落ち着いた声で聞いてきたよ。


「周りに味方がいるって考えていい?」


「銃の音もしない。味方も敵にぶつかっていないだろう」


 ガレオが言った瞬間、銃声が響いたよ。


 可視化した人の気配がゆっくりと物陰に隠れながら、リアムたちに近づいてきたんだ。


 どうみても味方の動きではないし、リアムたちの場所がばれているよ。


「囲まれてる…」


「リアム?」


「十…二十…。それくらいいる。見づらいけど、先に小さい魔力…銃弾が飛び交っているから、味方が戦っている。俺らの方を見ている」


 みんなの顔がぴりりと引き締まったよ。


「本当か?」


「魔法で見えた。でもなんで肉眼で見られないんだろう?」


「リアムは可視化魔法が使えるのか?少し前に聞いたことがある。帝国が姿を消す魔法具を開発したが、可視化魔法では視えるってね」


 老戦士が聞きたくないことを言ったよ。


 ガレオは怪訝そうに周囲を見渡したけれど、人の姿はなかったよ。


「なら、なんで攻撃してこない?俺らの方が圧倒的に少ないんだ」


「わからんよ。今はどう切り抜けるかだ」


 震えが止まらないリアムの背を老戦士が、音を立てないように軽く叩いたよ。


「んだよ。こそこそ隠れられちゃつまんねーじゃねーか。俺は行くぜ!」


 レオが物陰に隠れながら、身を低くして走っていってしまったよ。


 途端に茂みや岩影から人が出てきて、発砲してきたんだ。


 ガレオたちは応戦するけれど、リアムは手が震えて銃をまともに持てないよ。


「リアム!何でもいいから撃ちまくれ!」


 ガレオに怒鳴られ、隠れていたリアムは身を縮めてしまったよ。


 仲間や敵の声と銃声。


 リアムはなんでこうなったとしきりに考えていたよ。


 戦争はどういうものか理解していたし、覚悟はできていたはず。


―――どうして帝国が俺を殺そうとする?


 そういう強い思いが浮かんで、頭の中を占めていたんだ。


 違う俺はランバート国民だと言い聞かせたよ。


「リアム!しっかりしろ!」


『…!』


「リアム、走れ!」

 

『…か!』


「リアムちゃん!」


 顔をあげると三メートルほど先に、帝国兵がリアムを狙って銃を構えていたよ。


 逃げなければ撃ち殺される!


 帝国兵と眼が合ったよ。


『蒼い眼の男を発見。確保する。目標以外は排除する』


 襟になにかを呟いていたけれど、リアムは聞こえなかったんだ。


 彼は言葉を話す、人間だ。魔物ではない。


 故郷には彼の帰りを待っている家族や恋人がいるかもしれない。


 人の人生をこの手で終わらせることができるのか?



 リアムの構えた銃は発動はせず、横から突き飛ばされたよ。


「アルマン!」


 ガレオがアルマンを撃った帝国兵を撃ち殺して、駆け寄ってきたんだ。


 倒れて脇腹から血を流すアルマンを、リアムは呆然と見ていたよ。


「あんだけ最新のにしろって言っただろうが!」


「ふふ。やっぱり魔法具破壊銃使ってたわね。リアムちゃんのも発動するかわかんないわよ?」


「人のこと言ってる場合か!」


「リアムちゃんのこと、頼んだわよ。シャルルさんみたいにしないでね」


 ガレオはアルマンの手当てをしたいけれど、周りは敵だらけだから銃を撃ちまくっていたよ。


 リアムは二人のやり取りが耳に入らず、倒れた帝国兵を見たよ。血を流して眼を開いたまま、倒れていたんだ。



 白い地面に赤い血が撒いたように飛び散っている。


 そこにはつい先ほどまで会話していた少年兵がいて…。


―――これは俺の記憶じゃない!いったい誰のものなんだ。


 リアムは混乱しながら、アルマンに治癒魔法をかけたんだ。


 魔法と、血の臭い。


『…下!』


『陛下!お逃げください!』


―――化け物


 自分を恐怖する眼、眼、眼。


 リアムは魔法をかける手を止めずに、空を見上げたよ。


『神々よ、どうして天国の扉ポルタ・デル・パラディーゾを閉ざすのですか?』


 それに応える声はなかったよ。




 開戦する約一週間前、リアムを探しに住み慣れた森を飛び立ったフーは、北上していたよ。


 魔鳥のフーは手がかりのないまま、なるべく人と会わないように、夜移動して日が昇ると眠ってという生活をしていたんだ。


 はじめは南で探していたんだけれど、フーは野生の嗅覚でリアムの向かった北へ進んだんだ。


「ぱぱのまほうのにおいがする」


 魔法って臭いあるのかな?


 フーは人間ではないから、違った感覚を持っているのかもしれないね。


 都会に向かうにつれて、森は開かれ、人の住む土地が多くなり、フーは人間に目撃されることが多くなったんだ。


 幸い攻撃してくる人はおらず、見つかったと思ったらフーはすぐに逃げたんだ。


 リアムが魔法を使ったとされる一番臭いがする場所へ降り立ったよ。


 遠くに街並みが見え、広い畑の中に延びる道でフーはウロウロしていたんだ。


「ぱぱ、ここにいるとおもうんだけどな」


 キョロキョロしていると車がゆっくりと近づいてきたよ。銃を持った人の姿を見て、フーは逃げようかリアムのことを聞こうか悩んだよ。


「お前は火の鳥(オワゾ・デ・フウ)か?」


 兵士はフーに声をかけたよ。普通の魔物なら言葉がわからないだろうけど、フーはわかったから兵士の方を見たよ。


 おっかなびっくりしながら、兵士は銃の射程距離ギリギリで近づいてきたよ。


―――ぱぱがしらないひとと、はなしちゃだめっていってたからな。


 フーは飛び立つと、もうひとつリアムの魔法の臭いのする方へ向かったよ。


 突然、デジャルダンの街に伝説の魔鳥が現れて、街の人たちは大騒ぎになったんだ。


 人が騒いでるのを知らず、フーは大きな敷地にいくつか建物が建っている場所へ降りたよ。


 リアムの魔法の臭いが建物の裏の、とても狭いところからしたんだ。


 建物の屋根に降りたけれど、とても強い魔法の臭い(・・)がするところにフーは入れなかったんだ。


 首をめいっぱい伸ばして木をくまなく探したよ。


「いないかぁ」


 建物の窓がガラッと開いて、男の人と眼があったよ。


 男の人は驚愕の表情を浮かべたけれど、フーは喜んだよ。


「ままんのにおいがする。おじちゃん、ままんのはねもってる?」


「ママン?君はリアム君の言っていたフーかね?」


 フーは嬉しいのか、三本の頭の飾り羽根がピンと立ったよ。


「ぱぱのなまえ、りあむっていうの。ぱぱがどこにいるかしってる?」


「もしかして、リアム君を探しているのかい?フーは巣立ったって聞いたが」


「ふぅはもりのはじっこをさがしてたら、ぱぱはもっとおおきなはじっこさがしてるって、おじちゃんがいってた!

 ふぅも、はじっこをぱぱとさがすの!」


「それは…できない。早くおじさんのところに帰りなさい。リアム君は戦争に行ってしまった。君が行くと大変な騒ぎになる」


 今もカレ商会の建物の前には、たくさんの野次馬や報道陣が集まっていたんだ。


「せんそう?」


「人が殺し合って…。ええっと、なんといえば君に伝わるかな?

 縄張り…そう、縄張り争いをしているんだ」


「ぱぱが…?ふぅもてつだう!ぱぱとおおきなおうちにすむの!

 ぱぱはどこにいったの?」


 鋭い嘴に魔物の臭いが目の前に迫って、マリアスは恐くなってつい話してしまったよ。


「北だ」


「きた?」


「ここより寒いところだ」


 マリアスが指差した方へ、フーは顔をあげて大きく息を吸うと、なにかを感知したように全身を震わせたよ。


「あっちだね!ありがとう、おしえてくれて!」


「フー、行ってはいけない。捕まってしまうよ!」


「ぱぱはふぅよりもちっちゃいから、まけちゃうよ!はやくいっていっしょにたたかうの!」


 フーは羽ばたいて、リューリッシュの方へ向かったよ。


 その日のリューリッシュは火の鳥の話題でもちきりで、新聞各社は大きく取り上げたんだ。


「伝説の鳥が現れた!我が国を守るために!」


 と喜んだ王様が急いで火の鳥の軍旗を作らせ、戦勝モードになっていたそうだよ。


 そんなことを知らず、フーはあちこち飛び回っていたんだ。


 ところどころリアムの魔法の臭いがして、困っちゃったみたい。


 一番強そうなところは、また狭い建物だったよ。


 人の住む家は小さくてフーは入れないから、屋根に止まって周りを見ていたよ。


 住人たちはビックリして、慌てて外に避難したんだ。


 火の鳥が機嫌を損ねて火でも吐いたら、あっという間に街は焼け野原になるからね。


 一軒だけ住人が出てこないから、二階に住むおばあさんが心配したよ。


「ジョゼフィーヌ、大丈夫かしら」


 しかも彼女の家の辺りを火の鳥がうろうろしているんだ。


 身を縮めてから狭い庭に下りて、フーは窓を嘴でトントンと軽く叩いたよ。


 カーテンもきっちり閉じていて、誰もいないのかな?


 もう一度トントンと叩いたよ。


 誰も出てこない。


 トントン。


 しばらくすると、カーテンがシャーっと開いたんだ。


 黒い喪服を着た女の人が眼を丸くしていたよ。


 フーが現れたその日の朝、ジョゼフィーヌは最愛の母を亡くしたんだ。


 リアムのお陰で症状がよくなったと喜んでいたんだけれど、お母さんは少し話すと息苦しそうにしていたんだ。


「ジョゼフィーヌ。私は長くない。恋人を見つけて結婚しなさい」


「そんなこと言わないでよ、お母さん。それに…リアムが帰ってきたら二人でお祝いしましょうよ」


「彼はとても優しい子。無事に戻ってきても、今までの彼と同じと思わない方がいいわ。

 愛しているわ、ジョゼフィーヌ。幸せになって」


 そう話した次の日の朝に冷たくなっていたんだ。


 お母さんのお葬式はアパートの住民に手伝ってもらい、費用はリアムが薬屋さんから取り返してくれたお金でできたよ。


 誰もいなくなった部屋に、ジョゼフィーヌは孤独に打ちひしがれていたんだ。


 トントン。


 ジョゼフィーヌはお母さんが寝ていたベッドに伏せて泣いていたよ。


 トントン。


「誰よ!放っておいて!」


 トントン。


 ジョゼフィーヌはゆっくりと立ち上がって、カーテンを開けたんだ。


 そこにはとても大きな鳥の顔が間近にあって、ジョゼフィーヌは口から小さな悲鳴を上げたよ。


―――殺される!


 ジョゼフィーヌは魔物と隔てる一枚の窓ガラスがとても頼りなく思えたよ。


「ぱぱいる?」


「パパ…?」


 魔物が話したと驚いていると、リアムの体験談がふいに頭に過ったよ。


 ジョゼフィーヌは思いきって、窓を開けてみたんだ。


「おねえちゃん。ぱぱしらない?ぱぱは、りあむっていうの」


 とても生臭い息が顔にかかって吐き気がしたけれど、ジョゼフィーヌは我慢したよ。


「ええ、知ってるわ。あなたはフーちゃんね?」


「そう!ふぅだよ。ぱぱいる?」


「ここにはいないわ」


 飾り羽根がしおしおと垂れて、それが面白く、ジョゼフィーヌはくすくす笑ったよ。


「パパを探しているのね?ここより、もっと北に行くといいよ。

 シランスという大きな森にリアムはいるって聞いているわ」


「おおきなもり?いってみるね!おねえちゃん。ありがとう!」


「フーちゃん。リアムを守って…!」


 フーは羽ばたきながら、元気よく言うよ。


「うん!ぱぱとなわばりあらそいにかって、おおきなおうちにすむの!」


「そうなのね!私はジョゼフィーヌ。私も入れて!」


「いいよ!じょぜふぃーぬおねえちゃん。ままんのはねもってるから、ふぅのかぞく!」


 飛び立つとあっという間に空へ消えてしまったよ。


「お願いよ、フーちゃん。リアムを守って」


 さすがにジョゼフィーヌも、リアムが預けた箱の中身に気づいたよ。


 箱は開けずにぎゅっと握り閉めたよ。


「リアム…」


 今度は玄関からノックする音がしたよ。


 ジョゼフィーヌはゆっくりドアを開けると外にたくさん人が集まっていたよ。


「ジョゼフィーヌ。無事だったかい?」


 二階に住むおばあさんが心配そうにしていたよ。


「大丈夫よ。大きな鳥がいて驚いたけれど、何もなかったわ」


 ジョゼフィーヌが微笑みを浮かべていたから、おばあさんは安心したよ。


「お母さんが亡くなってつらいと思うけれど、ちゃんと食べて元気出すんだよ?」


「うん。ありがとう」


 ちょっといいかねと、スーツ姿の小太りな男の人が野次馬を掻き分けて、ジョゼフィーヌのところに来たよ。


 おばあさんは記者か何かと思ったのか、怒ったよ。


「なんだね?住民じゃない人は敷地に入るのはお断りだよ!」


「すまない。怪しい者ではない。私はカレ商会の会長のマリアスという。お嬢さんがお持ちのモノが知り合いが持っていたものと似ていてね」


 ジョゼフィーヌはギュッと木箱を握りしめて、警戒していたよ。


 マリアスはにこりと笑って、小声でジョゼフィーヌに言ったよ。


「フーと話したかね?」


 ジョゼフィーヌはおばあさんに帰ってもらって、マリアスを家に上げたよ。


「誰か亡くなったのかね?」


 喪服姿だったからマリアスも気がついたよ。


「今朝、母を」


「そうか。お悔やみ申し上げる。フーはどうやらリアム君の魔法を使った跡を辿っているようなんだ。

 私はフーが戦場に行くとよくないことが起こりそうで、止めようと追ったんだが、いやー伝説の魔鳥は早いね!」


「フーが戦争に行けば勝つかもしれないでしょう?」


「人に慣れているとはいえ、魔鳥だ。君もフーのそばにいたならわかるだろう?鋭い嘴と爪を持ち、血がわずかに羽根についていた。魔物を喰ったのだろう。

 戦争は血にまみれる。フーが本能のまま、見境なく人を襲ったら?

 リアム君はきっと止めるだろう。彼の能力を信じているが、暴れる魔物を止められるのは魔鳥を殺したという神帝が現れない限り難しいだろう」


 ジョゼフィーヌは今にも泣きそうな顔していたよ。


「…リアムは帰ってくるわ」


「ああ。私も帰ってくると信じているよ。

 あなたとリアム君の関係は?」


 ジョゼフィーヌはリアムが声かけてきたことと、理由について話したよ。


「私は間接的だけれども、クレマンさんに助けられたんですね。ありがとうございます」


「亡くなった甥もそう言ってもらえて喜んでいるだろう。

 ジョゼフィーヌさん。働き口はあるのかね?」


 お母さんの病気のせいで、長時間働けないから、追い出されたり急に休んで嫌な顔されたりして、職を転々としていたそうだよ。


 マリアスがうちで働かないかと言ってきたんだ。


「リアム君が結びつけてくれた縁だ。彼が戻ってきたら、もう一度うちで働かないかって誘うつもりなんだ。一緒に口説き落とそう」


 ウィンクして茶目っ気を見せるマリアスに、ジョゼフィーヌは笑ってやっと前向きになれたんだ。



 ハイドランジア大陸の北を支配するデスペハード帝国は、中央(ケントルム)へ軍を進めていたよ。


 レナータとギムペルから集まった兵士たちの前に、一人の若者が立ったんだ。


 若者は皇帝の子カルロス。


 腰には剣をさし、手には長い杖を持ち、黒い髪に蒼い眼、そして水の使い手の彼は、始祖の転生者として最も有力視されていたんだ。


「我らの始祖のお心とお考えは、まだこの大陸のすべての人々に届いていない。

 人は皆平等で幸福になる権利がある!だが、少数の人間が独占し民を苦しめている国がある。それはランバート王国だ!

 本人の自由意思という言葉で覆い隠し、人々を奴隷として使役している!

 今こそランバート民を救い、圧政を敷く王族を倒すときだ!」


「神の御心と救いをすべての人に!」


 兵士たちは合唱したがら、進軍したんだ。


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