18話 御守り
ジョゼフィーヌとごはんを作って、お母さんのいる部屋で一緒に食べたよ。
お母さんはもう噛めるけれど、しばらく流動食だったから急に硬いものを食べると胃の調子が悪くなってしまうから、柔らかく煮た野菜とお肉のスープを食べてもらったよ。
「どこの家にもスプーンとフォークがあるんだね」
お客様用と渡された綺麗なスプーンをリアムは触っていたよ。
「普通どこにでもあるでしょう?」
「そうだよね」
「スプーン無いくらい貧しかったの?」
「貧しかったけど、ダヴィドにはあって、俺にはなかったんだ」
「どういうこと?」
「味付けどう?適当にやっちゃったから」
彼女たちに話すことじゃないなと思って、リアムは話題を変えたよ。
ジョゼフィーヌも強くは聞かずに、料理をおいしいわと言ってくれたよ。
「リアムはいつ行ってしまうの?」
「移動の命令が出たから…。明後日にはリューリッシュを出発するよ」
「明後日…。本当に行くの?傭兵辞めて、ここにいてよ。リューリッシュなら働き口たくさんあるし」
「傭兵組合に登録しちゃったから。それに決めたし。ごめんね」
「でも…」
ジョゼフィーヌが引きとめようとするのは、お母さんの病気を治してほしいからなんだ。お母さんもすがりたいけど、リアムの意志を聞いて、引きとめられないと感じたよ。
「ジョゼフィーヌ。彼の人生よ。私は彼の善意で話せるまで回復したの。これ以上甘えてはいけないわ。
ありがとう、リアム君。本当ならお金を払わなくてはいけないんだけど、うちにはなくて」
「気にしてないよ。俺はある人に助けられて、ここまで来れたんだ。その人は、本当に親切にしなくてはいけない人は世の中にいるって言っていた。
俺は右も左もわからないまま、リューリッシュに行こうとしたのをその人は気づいてくれて、色々教えてくれたんだ。
ジョゼフィーヌとすれ違ったとき、少し前に会った人に似ていて声をかけちゃったんだ。クレマンさん…俺をここまで連れてきてくれた人が言っていた意味わかった気がして。
ジョゼフィーヌはあの人と違って笑ってるし、お母さんもいるから大丈夫だよ」
ジョゼフィーヌはリアムの気遣いが嬉しかったけど、モヤっとしたよ。
「何よ。私に気があって、声をかけたんじゃないの?」
さすがのおニブのリアム君でも、気づいたみたいだね。
ポリポリ頭をかいて、目をそらしたよ。
「あ、その…。綺麗な人だなって思ったよ…?それで、その…」
ジョゼフィーヌも恥ずかしくなったのか、食べ終えた食器を片つけてあたふたとキッチンへ行ってしまったよ。
お母さんは若い二人が微笑ましくて、ずっと笑っていたんだ。
「娘の事を心配して声をかけてくれたのね。ありがとう」
「うん。お母さんも大丈夫だよね?死にたいとか言わないでよ?お母さんはつらくて死ぬことが、自分のために生きることかもしれないけれど、ジョゼフィーヌは一人になってしまう」
「お願いしたいこと、言われてしまったわね。息をするのにも苦しくて、自分の意思も伝えられなくて、置物のようになった私は何のために生きているのだろうと何度も思ったわ。若い娘に迷惑かけて。本当なら恋人も一人くらいいてもおかしくないのに。
また置物に戻る前に頼みたいと思ったの」
「望まなくてもあなたは死ぬよ。色々な臓器がおかしくなっている。息をすることもできなくなるまで、ジョゼフィーヌと一緒にいてあげて」
お母さんはリアムの顔をじっと見たよ。
「あなたは嘘をつかないのね」
「ついて救われる嘘ならつくよ。でもあなたが一番身体のことを知ってる。俺が嘘ついて治ると言って、ジョゼフィーヌに伝えたいことを後回しにして、また話せなくなって後悔するかもしれないでしょう?だから嘘はつかないよ」
お母さんはそうねと呟いたよ。
「お茶、淹れたわよ。さっき出したのと同じで悪いけど」
ジョゼフィーヌが食後にお茶を持ったきてくれたんだ。
「ありがとう」
「ところで、リアム。私とすれ違って似ているって言ったあの人って、クレマンさんっていう人じゃないよね?」
どうしてかジョゼフィーヌが責める口調だったから、リアムは困ったよ。
「違うけど…」
「女の人?リアムが好きな人?」
「その…」
正直に話しなさいという眼にリアムはため息をついたよ。さっきの恥ずかしがっていたジョゼフィーヌは、どこにいってしまったんだろうね。
「気を使わないでほしいんだけど」
「うん?」
「新聞読んでるよね?二、三日前のってある?」
新聞ってなに、はぐらかさないでという眼にリアムは苦笑したよ。
ジョゼフィーヌは言われたとおり、数日分の新聞を持ってきたよ。
一部を抜き取ってジョゼフィーヌに見せたんだ。
「え、クレマンさんって亡くなったクレマン・カレだったの?」
「そう。奥さんは助かったんだけど、クレマンさんと出会う前は酷い人生だったみたいで、彼が亡くなって後を追って…。酷く絶望した顔が彼女の顔とジョゼフィーヌが似てたから、つい声をかけちゃったんだ」
「私、そんなに酷い顔してた?」
「うん。まるで地獄に落とされるかのような顔だった」
ジョゼフィーヌは自分の頬を両手で挟んで、恥ずかしがっていたよ。
「だから、元気になってよかった」
リアムがニコニコしているけど、ジョゼフィーヌはまたモヤモヤしていたよ。
お母さんは楽しそうに若い二人を見ていたよ。
リアムは明日も来ると約束してから、アルマンたちのいる練習場へ向かったよ。
バヤールが魔法具を使っているのを見せてくれるといいながら、なかなか見せてくれなかったんだ。
使いこなせていないのをリアムに見られたくなかったから、練習しているみたいだよ。
練習場の手前にある広場を通りかかると、聞きなれない音楽が耳に入ってきたよ。歌声も聞こえて、人々は足を止めて聴いていたんだ。
ストリートミュージシャンかな?
リューリッシュには様々な人種や出身の人がいたから、たくさんの音楽のジャンルが生まれていたんだ。
リアムは耳に残ったリズムを口ずさみながら、練習場へ入ったよ。
ガレオが教えてくれたオンボロ練習場には、アルマンの他にガレオ、ジョゼフやバヤールもいたよ。
「ご機嫌だな、リアム」
「やあ、ガレオ」
「シエロ教の奴はいなかったか?」
ジョゼフに聞かれて、そういえば絡まれなかったなって思ったよ。
「ジョゼフが伸してくれたからね」
「殺してないだろうな…?」
バヤールがジョゼフが伸したシエロ教の人たちを哀れに思ったよ。
「まさか。殺したら捕まるだろう?襲ってきた奴を蹴り飛ばして銃を撃ったら、逃げていったよ。
リアム、襲われても大丈夫だ。あいつら弱い」
「シエロ教徒がみんな強いわけないでしょう?あたしたちは戦場なら許されているけど、一般人に暴力振るったら捕まるからだめよ」
ジョゼフが新入り傭兵に一般人に対して、暴力で解決することを勧めているから、アルマンはリアムに違うよって教えたんだ。
「わかった。バヤール、魔法具を見せてよ」
「いや、まだ技の名前が決まらなくてな!」
「技の名前がなくても発動するし、バヤールは魔法の才能がなさすぎる」
「言うなよ、ジョゼフ~」
魔法具は魔石や魔力補填付のコアなら、魔力がない人でも魔法が使えるって話したよね?
ただ使いこなすとなると、魔法具なしで魔法を使える人の方が、魔法具の応用力やセンスが高くなる傾向があるんだって。
バヤールは魔法が使えるけど、センスないようだね。
「リアムはどうなんだよ?見せてみろよ」
「わかった。水魔法が得意だから水にするね」
リアムの魔法を見て、バヤールは凹むなって、ガレオは思っていたよ。
「水よ、我が手の中に溢れろ!」
と唱えると、手のひらからチョロチョロと水が出てきたんだ。
バヤールは指差して大笑いしたよ。
「全然溢れてねーじゃねーか!」
「魔法具って難しいね」
「だろう!」
仲間を得たようにバヤールは喜んでいたよ。
他の三人はリアムの気遣いに気づいて、優しいなと思っていたよ。
「バヤールも見せてよ」
「おうよ!あの的を狙うぞ!」
真向かいにある、三メートル以上離れた木の棒を狙うみたい。
「行け!」
と言って、バヤールは魔法具を発動したよ。
うん、呪文や技の名前をつけたほうがよさそうだね。
行けと言ってた発動した魔法具もいかがなものかということだけど、この魔法具は雷撃と防御しかないようだから、雷撃用の魔法を発動する手順をすれば発動するようだよ。
手順は、呪文や銃のトリガーのようなものがあったりと魔法具によって違うよ。
放たれた雷撃は宙を這い、大幅にそれて二個隣の的に中ったよ。
「どうだ、リアム!」
「ノーコン」
「ジョゼフには感想を聞いてない!」
「雷の魔法かっこいいね。俺も出来るようになるかな?」
リアムが目を輝かせて聞くものだから、バヤールは調子に乗って魔法の種類や構造を説明してくれたよ。
「そういう魔法なんだね。わかった。ありがとう、教えてくれて」
「わからないことがあったら、いつでも教えてやる。俺は用があるからまたな!」
バヤールが練習場を出ていくと、リアムはさっそくバヤールの持っていた魔法具の魔法を真似て雷撃を撃ってみたんだ。
威力はバヤールの魔法具よりは弱かったけれど、狙った的に中ったよ。
「魔力を消費するから、コアの魔力を使った方がいいね!」
バヤールの魔法具の再現をしてしまったリアムに、ジョゼフは目を丸くして呟いたよ。
「いるんだ、天才って」
「俺、バヤールの説明まったくわからなかったんだけど。リアム頭よくないか?俺が馬鹿なのか?」
「いや、あたしもわからないわ。リアムちゃんの認識間違ってたわ。天然じゃなくて、したたかだったわ」
リアムは知ったばかりの魔法を試すのに夢中で、三人の感想を聞いてなかったよ。
出兵のための買い出しに行ってから、バヤールと合流して、みんなと出会ったお店で夕飯を食べたよ。
リアムもお酒を飲んでほろ酔いになりながら、アルマンのおうちに置いてある荷物を取りに向かったんだ。
リューリッシュの街には傭兵の姿がたくさんあって、みんなお酒を飲んでいて、楽しそうだったよ。
いや、浮き足立っているって感じだね。
時折ケンカがあったりして、リアムが通りかかった居酒屋さんから怒声が聞こえてきたよ。
「おめぇ、帝国の人間か?出てけ!非国民!」
蹴られて男の人がお店から出てきたよ。
「エルスター語を話せるからっておかしいだろう!俺はランバート民だ!」
お店にいた人や通りがかりの人たちは、白い目で男の人を見ていたよ。
リアムは一歩踏み出したときに肩を掴まれたよ。
ガレオが関わるなという眼で牽制したんだ。
「リアムもバヤールもわかってるよな?」
バヤールは肩を落とした。
「話さねぇよ」
エルスターの言葉をっていう意味だよ。
せっかく酔って楽しい気分がどっかにいっちゃったよ。
リアムはジョゼフの家に行っても、ムスッとしたままなんだ。
「モヤモヤするのはわかるが、割りきれよ。帝国は俺らの敵だ。倒さないとやられるんだぞ」
寝る前にジョゼフに言われてしまったよ。
次の日機嫌が直ったリアムは、ジョゼフィーヌの家に行ってお母さんの治療をしたよ。
ジョゼフィーヌがお昼ごはんを作ってくれている間に、リアムはお母さんに大切なことを伝えたんだ。
「俺が治療しなくなったら数日でもとに戻ると思う。たくさんお母さんの魔力も使ったし、寿命を削ったと思う」
長くはないだろうということを話したんだね。
「わかってるわ。ありがとう。最期に娘と話せて死ねることを感謝するわ。あなたも生きることを考えて、無事に戻ってきて」
「うん、会いに来るよ。それまで頑張って生きてね」
お母さんは微笑みを浮かべたけれど、約束はしなかったよ。
「ジョゼフィーヌに会いに来てちょうだい」
そうリアムにお願いしたんだ。
ジョゼフィーヌが作ったごはんをリアムは美味しい美味しいと言って食べたよ。
「ジョゼフィーヌは料理が上手いね」
「そんなことないわよ。二階のおばあさんがくれたハーブを入れたからよ。軍で食事出ると思うけど、少し持っていく?」
「いいの?」
小瓶に分けてもらって、リアムはお母さんに挨拶をしてから家を出ようとしたよ。
ジョゼフィーヌが玄関で、スカートのポケットから何かを取り出したよ。
「リアム。こんなもので、あなたを守れるかはわからないけれど…。昨日市場で見つけて。ヴァリエンテに伝わるお守りですって」
「お守り?」
丸い木の枠の中にガラス玉がはめてあって、紋様が彫られていたよ。
リアムはどうしてかそのペンダントが、とても懐かしかったんだ。
ジョゼフィーヌはリアムの首にかけてあげて、ペンダントに触れたよ。
「神よ。この地に降り、あらゆる災厄からこの者を守りたまえ。
ってお願いするといいよって、お店の人が言ってたの」
ペンダントには魔力が一切なかったから、魔法具ではなかったよ。
リアムはジョゼフィーヌの気持ちが嬉しかったんだ。
「ありがとう。つけていくね」
「リアム、目を瞑って」
「うん?」
素直なリアム君は目を瞑ったよ。
言われて数秒経っても何も起こらないから、リアムは反応に困ったよ。
ジョゼフィーヌが近づく気配がして、ひんやりと柔らかいものが頬にあてられてから離れたよ。
「気をつけてね。絶対に生きて帰ってきて。待ってるから」
キスしたんだって後で気づいたけれど、この時は頬を朱くして上目使いのジョゼフィーヌに、リアムはドキドキしていたんだ。
「うん。ジョゼフィーヌも無理しないでね。あ、これを渡しておく。お金に困ったら、これをカレ商会のマリアス会長に持っていって。多分力になってくれるから」
「これはなに?」
細長い箱を開けようとして、リアムに止められたよ。
「ジョゼフィーヌは幸せ?」
「え?ええ。少し前よりは。お母さんも話せるようになったし、すべてリアムのおかげ。あなたがずっとここにいてくれたら、もっと幸せなのだけど」
「そういってくれると嬉しいよ。
これは、ジョゼフィーヌが働けなくなって、お母さんももっと大変になったときに開けて」
「今ではだめなの?開けてしまうと不吉なものでも飛び出してくるの?」
「そうかも。求める人には価値があって、生きるのには価値のないものなんだ。人によっては運命を変える力があると思う。いい意味でも、悪い意味でも」
「何それ、謎かけ?あなたが去ったら開けてしまうかも」
「開けても構わないよ。これをどうするかはジョゼフィーヌに任せる。ただ、インチキ薬屋みたいなところを頼るなら、カレ商会に行ってもらったほうがいいと思う」
ジョゼフィーヌは苦笑していたよ。
「ええ。もう懲りたわ。もしかしてお父さんの形見とか、あなたの大切なもの?」
「俺の親父のではないけど、形見といえば形見かな。戦場に行くから落としたり失くしたりするかもしれない。だから、ジョゼフィーヌに預けておくよ」
二人の距離はとても近く、ジョゼフィーヌはリアムの手に自分の手を重ねたよ。
「わかった。必ず取りに来て」
「大変だったら手放してもらってもいいから」
「手放さないわ。あなたが戻って来ると信じてるから」
リアムは伝え方を間違えてしまったかもと、困ってしまったよ。訂正するのも微妙な感じになってしまったんだ。
「俺、行くね」
「ええ。武運を祈ってるわ」
「ありがとう。ジョゼフィーヌとお母さんの幸福な時間が続くように祈ってるよ」
道に出て、振り向くとジョゼフィーヌは寂しそうな顔をしていたよ。
だから元気に手を振って、さよならと言おうとしたけどやめたんだ。
「またね!」
ジョゼフィーヌは笑って手を振り返したよ。
リアムが見えなくなるまで、ずっとずっと笑顔で見届けたんだ。
家に入ると預かった箱を握りしめて、お母さんのところに行ったよ。
「行ったの?」
「うん。これ預けるって。どうしようもなく大変だったら、これをカレ商会の会長さんに持っていってって。それまで開けないでって。
ねえ、お母さん。求める人には価値があって、生きるのには価値のないモノで、人によっては運命を変える力があるモノってなんだと思う?」
「何かしら?とても貴重なものかもしれないわ。でもカレ商会ってそういうモノを取り扱っていたかしら」
「お父さんの形見かなって思ったけど、お父さんのじゃないっていうの。本当になんのことかわからないわ」
お母さんは気づいたみたいで、クスッと笑ったよ。
「何?お母さんわかったの?」
「多分。リアム君の話をちゃんと聞いていたらわかるはずよ。それは私たちがもらっていいものではないわ。彼の家族の人の遺品よ」
「リアムの話…。遺品?お母さんのかな?」
娘はリアムのことが好きなのに全然彼の話を聞いてないのねと、お母さんはちょっと呆れたよ。
「愛の試練だと思ってわかるまで、箱を開けてはだめよ」
「ああもう!今すぐ開けたい!」
ジョゼフィーヌが葛藤している間に、リアムはもらったお守りを見つめていたよ。
見覚えがあるなっと思いながら、首の辺りになにかが当たったよ。タグのようなものがあって、カレ商会の刻印が押された紙がついていたんだ。
もちろん、値段は書いてなかったけどね。
「きっと市場やカレ商会に行ったときに見たんだろうな」
リアムはジョゼフィーヌがくれたものがカレ商会が扱っていたものだったから、不思議な縁を感じていたよ。
「リアムちゃん、どうしたの?それ」
待ち合わせ場所に行くと、アルマンはリアムの首に下がっているペンダントに気づいたよ。
「お守りもらったんだ」
「お守り?誰から?」
「ジョゼフィーヌから」
アルマンたちは一斉にジョゼフを見たんだ。ジョゼフはギョッとなったよ。
「なんだよ、お前ら」
「ジョゼフの家ばっかり泊まるから、そういう関係だったのね!」
「はあ?なんでそうなるだ!ジョゼフィーヌって誰だよ。俺とは関係ない!」
ジョゼフの女の人の名前ヴァージョンは、ジョゼフィーヌだよ。
日本語でいうなら徹男と徹子みたいな感じかな。
「誰よ、その女!」
アルマンはムキーっと怒って、バヤールは少しがっかりしたよ。
「ニノンはどこいった?変わり身早くね?数日で女ひっかけるってどんな手を使ったんだよ。俺、彼女どころか女とも話せてないのに」
「子は親に似るってか。シャルルも女が妊娠したから、結婚するとかいって結婚したからな。すでにその歳でガキの一人いたりして」
「ガレオ?何か勘違いしてない?」
お守りから手を放して、腰に片手を置いたよ。
「ジョゼフィーヌっていう女と、どこまで行ったんだ?」
「どこまで?家までだけど?」
「家で何した?」
「家に上がってごはん食べたよ」
アルマンが女の手料理!と対抗心見せはじめて、ガレオがうるさいと怒鳴ったんだ。
「その先だ、その先」
「その先?部屋に病気で動けないお母さんがいて…」
説明するとモテ男めとリアムを目の敵にしていたバヤールが、涙を浮かべていたよ。
「なんていい子なんだ、ジョゼフィーヌ」
アルマンに至っては涙を流していたよ。
「あたし、ジョゼフィーヌちゃんならリアムちゃんとお付き合い認めてあげる。一ミリだけね」
「許容範囲、狭っ」
ジョゼフの突っ込みに、アルマンがバシッと背を叩こうとして、さらりと避けられちゃったよ。
リアムはお守りをみんなに見せたよ。
「カレ商会が扱ってるみたいなんだ。クレマンさんが取引したものだったら、いいなって思って」
「そうだといいわね。リアムちゃん、今日はどこのお店行く?クリームたっぷりのケーキはいかが?」
リアムがジョゼフィーヌに脈なしとアルマンは決め込んで、アピールを続けるみたいだったよ。




