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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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9話 親切な商人

 車で移動中は傭兵のおじさんたちは護衛のお仕事があるから、リアムは話せなかったよ。護衛と言っても、トラックの助手席に座っているだけだがら退屈らしいよ。


 カレ夫妻と同じ車に乗って、クレマンから世の中のことをたくさん教えてもらったんだ。


「クレマンさんって、どうしてここまで親切にしてくれるの?」


 見ず知らずの少年を目的地近くまで車で連れていってくれる上、宿代まで出してくれたんだ。


「ん?俺は会う人全員に親切にしているわけではないよ。お客さんになるかどうか、見極めて親切にすることもあるけど、親切にした方がいい人ってたまに会う。

 道がわからなくて困っている人、具合が悪くて歩けない人を介助したり。

 リアムを見たとき、家出少年だと思ったんだ。聞けばリューリッシュに向かうって言うし、それなのに世の中のことをさっぱりわかっていない。

 悪い人が田舎から出て右も左も分からない君を見つけて、犯罪に巻き込むかもしれない。リューリッシュは国で一番人口が多くて、一番犯罪者が多いんだ。

 一人で放り出したら危険だって思った。俺もまだまだ若いけど、君よりは世の中のことを知っているつもりだから、色々教えてから列車が通っている街に君を下ろして、故郷へ帰すつもりたったんだ。君の生い立ち聞いて、違う心配がおきたけどね。でも、君はリューリッシュに行くと決めたから、俺はその覚悟を尊重して約束通り、リューリッシュの手前まで届けることにしたんだ。

 ただ一つだけ確認していいかな?貧しい暮らしをしていたんだよね?

 俺が勧めた魔法具を買うし、旅費に困っていなさそうだ。そのお金はどこから手に入れたんだい?」


 すでに犯罪に手を染めているのではないかって、思われているみたい。


 クレマンは親切な人だけど、商人だ。火の鳥の話をしたら、火の鳥を探しにプラット村に来てフーが見つかってしまうかもしれない。


 でもここで犯罪者として捕まったら困ってしまう。


 お金持ちになって疑われたときにと、エドおじさんと決めた話をすることにしたよ。


「素直に話すから、一つ約束してほしいんだ」


「わかった。約束とははなんだい?」


「俺のいた村に行かないでほしいんだ。聞いたら商人のクレマンさんは、行きたくなるかもしれないから」


「商人の俺が行きたくなるようなこと?お金になるってことか」


 逆に興味を持ってしまったよ。ニノンがクレマンっと叱咤してやっと、身を乗り出していたことに本人も気づいたよ。


「わかったよ。約束する」


 運転手さんの方をリアムは見たよ。小声なら聞こえないだろうと思って、リュックにしまっていた長方形の小箱を一つ出したんだ。


「クレマンさんは、これを何だと思う?」


 箱を開けて見せたよ。真っ赤な羽根にクレマンは目を見張ったよ。


「綺麗な羽根だね。オウムとかインコかな?にしては大きいけど…。光りに当てると虹色になるなんて、本当に珍しい」


「わからない?」


 リアムの言葉に商人としての鑑定魂に火がついてしまったよ。


「触っていいかい?」


「いいよ」


 クレマンは羽根を触ったり、ひっくり返ししてみたりしたんだ。


「人工物ではなさそうだ。何の羽根だろう」


 ふっと鼻に火の臭いが掠めたんだ。くんくんと嗅いでみたよ。


 もちろん車の中も外も火の気配はないよ。となるとこの羽根からなんだ。


「火の臭い?焼けたものと一緒に入れたのかな?火…」


 リアムが旅費に困らない理由。それがこの羽根だというよ。とても珍しい鳥の羽根なんだなと思った瞬間、クレマンの顔が驚愕に変わったよ。


「まさか、火の鳥(オワゾ・デ・フウ)の羽根?」


「うん。そう。どうやら縄張り争いをしてたみたい。負けた一体が火だるまになったのを見つけて、運良く残った羽根をおじちゃんと取ったんだ。かなり激しい戦いだったみたいで、かなり大きい鳥なのに売れそうな羽根はほとんどなくて…。

 俺らが暮らすために一つ売って、お金は俺とおじちゃんで分けたんだ。旅費はそこから出してる」


「そういう、ことか。驚いた。本当にいるんだね。俺も本物を見たかった」


 クレマンは羽根の触り心地を確めてから、箱に戻したよ。


「そう言うと思って村に行かないでほしいんだ。おじちゃんが売ってなければ一つあるはず。クレマンさんがおじちゃんに売ってくれって頼みに行くんじゃないかって思って。

 断ったとしても、クレマンさんがおじちゃんの家に行ったら村の人が怪しむし、他の商人の人が聞きつけて来てしまうかもしれない。

 おじちゃんは非国民って呼ばれてるし、国に見つかったら羽根とお金が取られちゃうかもしれないし」


 羽根はまだまだあったけれど、たくさんあるというとクレマンが村に行ってしまうかもしれないから嘘ついたよ。


「リアムの心配はわかった。エドさんの居場所が特定されて、押し掛けられると困るってことだね。約束するよ。

 でもリアム。これを持ち歩くのかい?お金か貴金属に換えておいて、銀行に預けた方がいいよ?盗まれるかもしれないし」


「そうだけど、いい鑑定士を知らないし、ガキの俺が持っていっても低く見積もられるんじゃないかと思って。

 だから、この羽根をクレマンさんに一度預けるから、高値で買い取る人がいたら売って。俺、手持ちのお金なくなる前に取りに行くから」


「預ける?この場で売るんじゃなくて」


「買い付けしたなら現金が手元にないでしょう?」


 クレマンは伝説の魔鳥の羽根を見て、少し動転してたみたい。リアムの言うとおり、現金はあまり手元になかったよ。


 リアムはそれにと付け足したよ。


「俺はクレマンさんに預けるんだ。クレマンさんは高く買ってくれる人を探してほしい。

 伝説の魔鳥だから買えないけど見たい人がたくさんいるはず。博物館のようにクレマンさんがお金を取って、展示しても俺は文句言わないよ。羽根の買い手を探す手間があるだろうから、手数料?としてもらっていいよ」


 売ったらその金額しか手に入らない。羽根とはいえ展示すれば伝説の魔鳥だ。この目でみたいという人はたくさんいるだろう。


 リアムはそういう人から少しお金を取ったらどうだっていうんだ。もしかしたら見てから、ほしいという人たちがお金を積んで買ってくれるかもしれない。


 クレマンはリアムをじっと見たよ。


「展示してお金を取るっていう話。リアムが考えたのかい?」


「うん。思いつきだけど」


「こりゃ驚いた。君はただの田舎少年ではないね。本当に君のお父さんのように国の傭兵になってしまうのかい?

 うちで働こうよ。傭兵より、もっと賃金出すし」


「クレマンさん。お金の問題じゃないんだ」


 リアムがピシッと言うと、クレマンの顔が真面目になったよ。


「そうだね。お金の問題じゃない。俺は商人だからお金は大事だ。でも人間は大切なものはお金ばかりではない。

 君がリューリッシュに行って、その目で見てからうちに来てほしい。リューリッシュに本社があるからね」


 クレマンは羽根を眺めて、どうやって稼ごうって考えていたよ。


「クレマンさん」


「ん?なんだい?」


「俺が傭兵になってもしものことがあって、羽根を売ったお金を取りにいけなかったら、貧しい人たちのために使ってくれない?」


 クレマンは一度稼ぎの話は置いておいて、羽根から目を離したよ。


「もしものことは俺は考えたくないけどね。そうなってしまったら、君の言う通りにしよう。

 君は優しいね。神帝の逸話みたいだ」


「神帝の逸話?」


 リアムはマロおじいさんから昔話をたくさん聞いたけれど、神帝という人の話は知らなかったよ。


「昔、デスペハードに狩人がいてね。その狩人は伝説の魔鳥、氷の鳥(オワゾ・デ・グラス)を倒して、その羽根をいくつか取ったあとにデスペハード皇帝に献上したんだ。そのときに、羽根を売ったお金を貧しい人のために使ってほしいって言ったそうだ。

 その後に狩人はデスペハード帝国の始祖の転生者だってわかって、即位し神帝と後に呼ばれるようになったんだ。

 その話とリアムの言葉が重なってね。君の故郷のために使うとか、エドさんにお金を渡すという訳ではないんだね?」


「おじちゃんは羽根があるからお金には困ってないよ。非国民って呼ばれていて辛い思いしているから、本当に大変だったら助けてほしいけど」


 プラット村の名前を言うのは避けて、生い立ちを少し話したよ。


「俺は水道代わりに学校も行かず、コーヒー畑や色んな畑に水を撒いてきた。犬って呼ばれたこともあったし。だから養父母家族と村はあまり好きじゃない。でも貧しいのはもっと嫌だ。帝国のせいなら、俺は傭兵になってなんとかしたいと思ってる」


「なんとかというのは、帝国を武力で倒すってことかな?」


「無理なのはわかってるけど」


 クレマンは渋面のまま、何か考えているようだよ。


「リアム。君の親は帝国に殺された。嫌いになったり恨む気持ちは分かる。帝国が全部悪だと考えてるね?」


「親父は負けるとわかって傭兵として戦って死ぬことを選んだ。戦士が最後まで戦った相手を恨むのは違うと思う。でも帝国のせいで貧しい暮らしをさせられているなら許せない。

 そう思っていたんだけど、エドおじちゃんはこの国が貧しいのは、帝国のせいばかりではないって言ってたな」


「そうだよ。その理由は聞いた?」


 リアムは首を振ったよ。クレマンは商人としての立場からだけどと前置きして、理由を教えてくれたんだ。


「コーヒー豆の最終的な買い手は帝国やレナータの一般人たちだ。でもその前に帝国やランバートの商人がリアムたちの作ったコーヒー豆を買い取る。

 うちの会社もコーヒー豆を扱っているから、なるべく正規の価格で取引しようとはしている。帝国も不当な価格で仕入れたものは買ってはならないという法律があるんだ。

 でもその法律に従わない人たちはたくさんいてね。コーヒー豆は大体は生産地のコーヒー豆組合が一度回収して、俺らのような商人や国へ売るんだけど、そのときに商人が安く買い叩いてしまう場合、そして、もう一つは組合が正規の価格で商人に売ったあとに生産者へ不当な金額しか支払わない場合があるんだ。不当、つまり安い金額を払うってこと」


「帝国が安く買い取るって聞いたけど…」


 クレマンは紙にコーヒー豆の流通について、簡単に書いて見せたよ。


 組合というところに丸で囲ってトントンとペンで叩いたんだ。


「リアムの聞いた話からおそらく、組合が帝国の商人に安く買い叩かれてしまったのだろうね。

 俺が聞いた話では、ある組合が利益を取って生産者へ渡さないということが、帝国側の調査で発覚してその組合とは取引中止になった。帝国の商人も不正をすれば罰せられる。

 帝国は始祖という人が唱えたこは平等、そして機会の平等をモットーに法律は考えているけれど、帝国にも色々な人がいる。国の方針を無視して、安くモノを買って高く売ろうという人もいる。もちろんランバート側もそういう人もいてね。

 帝国またはランバートの商人とランバートのコーヒー豆組合が組んで、安く仕入れて高く売っている。その利益は生産者に渡らない。今、ランバートで問題になっている貧困の原因の一つだよ。

 本来なら外国の帝国ではなく、ランバートの国が注意しなくてはならないんだけど、機能はしていはい。なんでかって、上の役人とうちより大きな商社が癒着してるっていう噂。

 うちは頑張ってるんだけど、買い手からよそはもっと安いよとか言われるとね…。あ、愚痴になってしまった。難しかったかな?」


「なんとなくわかった。帝国はちゃんと買ってくれるようにしているけど、商人とか組合の人たちが自分のお金にしようとして、農家にお金を渡していないから、俺も貧しかったってことだね。

 クレマンさんたちいい商人が頑張っても、安く買って安く売ろうとする人たちがいるから、クレマンさんちは苦労しているってこと」


「そういうこと!リアムは頭がいいね!本当にもったいない。リューリッシュにいったら伯父に会ってくれよ。ね、そうしよう。傭兵組合に行く前にさ」


 妻のニノンが溜め息つくと、クレマンはコホンとわざと咳をしたよ。


「リアムの道はリアムが決めることだ。一応、住所渡しておく」


 カレ商会の住所が書いてある紙を渡されたよ。いくつか支店があるみたいだから、ランバートの商社の中でも大きい方みたいだね。


「それでさ。リアム。火の鳥(オワゾ・デ・フウ)の肉を食べると不老不死になるっていう噂があるけど、肉は食べた?」


「食べたけどまずかった。不老不死はデマだよ。魔力の回復効果があって、おじちゃんがもっととっておけばよかったって後悔してた」


「デマか…。それでも食べたい人がいるだろう。肉を売ってくれれば高値で…」


「干し肉にしていくらか持ってるけど?」


「リアム!売ってくれ!一切れでもいいから」


「いいよ。お代はリューリッシュまでの宿代と食費、交通費ね。あとは色々な話を教えてよ」


 リアムは袋から手のひらサイズに薄く切ってある干し肉を一枚出したよ。


「一口食べたら回復する。ただ死ぬほど魔法を使った後で試した訳ではないから、全回復するかわからないけど」


「これが…」


「いっておくけど、まずいよ?薬だと思って粉にして飲んだ方がまし」


「なるほど…。焦げた肉でもいいからとっておかなかったの?」


 商人魂に燃えているようだね。


「うん。他の魔物が来ないように燃やして埋めた。必要以上に刻みたくなかったんだ。

 火の鳥(オワゾ・デ・フウ)って人語を操れて、かわいそうになっちゃって」


「え!そうなの?」


 今まで黙っていたニノンが身を乗り出したよ。夫の仕事の話は興味なかったみたいだけど、伝説の魔鳥の話は聞きたいみたい。


「うん。親鳥だったんだ。近くにハトくらいのヒナがいて、死体をずっとツンツン突っついていて」


「ヒナがいたの?そのヒナは?」


 ニノンは無意識に娘を撫でていたよ。自分が死んで娘が生き残ったらどうなるんだろうって考えてしまったようだね。


「親鳥に育ててくれって頼まれたんだ。無事にフーが巣立ちしたから、俺も大人になろうって。フーってヒナの名前で…」


 フーの話をたくさんしたんだ。ニノンも娘のモニクも興味津々で話を聞いていたよ。


「あの森にフーがいるから、探さないでほしいんだ」


「リアムが故郷に行かないでってしきりに言っていたのはそういう理由もあったのか。貴重な話を聞けた。リアム、火の鳥(オワゾ・デ・フウ)の本を出してみない?」


 クレマンの目がお金で輝いて見えたよ。ニノンは少年と魔鳥のヒナのあたたかエピソードを金にするのかと、冷ややかな目で夫を見ていたよ。


「だって、みんな知りたいって…」


「みんなそう思うけれど、多くの人は俺の話を信じないと思う。フーがこの場にいるならいいけど、俺の話に証拠がないもん。疑い深い人は作り話だと思うだろうし」


 クレマンはひたすら残念だと言っていたよ。ふと窓の外を見て指差したよ。


「見てごらん、リアム。黄金の丘(コート・ドール)だ」


 道路を挟んで辺り一体が黄金(こがね)色だったんだ。


「麦畑?」


「ああ、そうだ。この辺りはコート・ドールと呼ばれて、麦の一大産地なんだよ。ランバートは農業の国だ。デスペハード帝国は寒い場所だから麦も米も育ちにくい。ランバートは帝国の魔法具がなければ生活できない。でも、帝国はランバートの農作物がなければ立ち行かない。

 世界は互いに支えあっているんだ」


「でも帝国はランバートと戦争をしようとしているよね?」


 プラット村とは違う草の匂いの風を吸い込んで、どうして戦争なんてするんだろうと思ったんだ。


 人は生きるために作物を育てて収穫して、食べる。それだけでもとても労力がいる。いつかは死ぬのに戦争をして命を縮めるのか。


「帝国は最初は国内の平等と平和を目指したとされている。さっき、俺が言ったように世界は繋がって支えあっている。一つの国が平等で平和であっても、それは彼らの始祖の真の望みではないと考えたそうだよ。ランバートは始祖の考えを受け入れて、民のための政治をすべきだって言っているそうだ」


「それって、お節介じゃない?」


「ははは。俺もそう思う!ま、俺は商人だからね。帝国の考えまでわかんないよ」


「ねえ、負けるとわかって、何でランバートの王様は戦おうとしたの?」


「君のお父さんが亡くなった戦争の話?」


「うん」


 果てのない黄金の地を眺めて、クレマンはどうリアムにどう話そうかと考えたよ。


「正直俺が小さい頃の話だし、一介の商人だ。王の考えはわかんない。ただ、負けたらこの国はランバートという名前ではなくなる。地図上、デスペハード帝国になるわけだ。王族だってどうなるかわからない。最悪処刑されるかもしれない。王だろうが平民だろうが、死にたくないだろう?だから戦ったのさ」


 コート・ドールが終わり、田舎道を進むといくつか街を通りすぎたよ。


 干し肉を売り、羽根をクレマンに預けると目的地のリューリッシュの手前の街、デジャルダンに着いたよ。


「リアム!ガレオとアルマンによろしくな!」


 傭兵のセザールがトラックの助手席から顔を出して、手を振ったよ。


「うん!色々教えてくれてありがとう!」


「そうだ、リアム。お前は魔法を使うんだよな?魔法具があるから今は属性とか関係ないが、隠す奴もいる」


「なんで?」


「魔法具を奪われたときに、自力で魔法を使わないといけない。凄い使い手かと思いきや、魔法具の使い方が上手くて自力ではあんまり魔法が使えないって奴もいるんだ。属性と魔力量が弱点になると考え方もあるから、人に話すのも聞くのはよせ。お前の親父は自力がヤバかったから、属性バレても問題なかったけどな」


「わかった」


「リアム、気をつけてね!」


 ニノンに言われてリアムはとてもいい笑顔になっていたよ。


 それを見て、傭兵のおじさんたちはニヤニヤしていたんだ。


 クレマンたちが乗った車とトラックを見送ったよ。街は少し高台になっていて、見えるかなって開けたところからクレマンたちの車を探したよ。


 街から離れるとすぐに畑が広がってて、トラックの列がよく見えたよ。


 するとオオカミの群れがトラックに向かって走ってきたよ。


 近くにいた男が急に叫んだんだ。


「あれ、まさか…。ルーカニバルだ。人喰いオオカミ(ルーカニバル)だ!」


「ルーカニバル?」


 リアムが言うと男は走りながら言ったよ。


「魔物だ!誰か兵に連絡しろ!」


 同時にけたたましいサイレンが街中からしたんだ。


「そこの坊主!早く避難しろ。喰われるぞ!」


 ルーカニバルという魔物は、まっすぐクレマンたちのトラックへ走っていたよ。


「あの車、襲われるぞ!」


「兵士は!」


 この国は警察官はいなくて、兵士が警察をしていたよ。


 近くにいた見回りの兵士たちが車に乗り込んでいるのを、リアムは走って手を振ったよ。


「乗せて!今まであのトラックの護衛をしていたんだ!」


 咄嗟に嘘をついたよ。少年だけど剣を持ってるから、兵士も傭兵だと思ったみたい。


「早く乗れ!」


 飛び乗ると急発進したよ。


「おい、ガキ。依頼主ってどこの誰だ?」


「クレマンさん。クレマン・カレ。カレ商会の…」


「マジかよ!カレ姓ってことは、会長の親族か?」


「甥って聞いてる。有名なの?」


「ああ。デジャルダンに支店がある。俺の知り合いがカレ商会で働いてるからな。護衛はいるんだよな?」


「三人」


「三人!?キツいな。間に合ってくれよ」


 祈りはむなしく、一番後の一台のトラックがルーカニバルに襲われて横転したんだ。それに巻き込まれて車両同士が玉突き事故を起こして止まってしまったよ。


 待っていたとばかりにトラックに魔物が群がったんだ。


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