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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第3章
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 卒業の半年前になると、僕たちは結婚について具体的に話しあい、卒業の1年後に籍を入れようということになった。

 料亭の完全個室で両家の顔合わせを兼ねた和やかな会食後、親達は先に帰ったが、まだ貸し切りの時間が残っていたので、僕たちは残っていた。


 「義兄(にい)さん、姉さん、改めて、結婚おめでとう。」


 義弟(ぎてい)が爽やかに祝福してくれる。


 「ありがとう。」


 彼女が涙ぐんでいる。

 義弟(ぎてい)が、僕に向かって、にこやかな顔で言う。


 「義兄(にい)さん、お願いがあるんだ。」


 僕が笑顔で促すと、義弟(ぎてい)が爆弾発言をする。


 「僕は姉さんとこれからも関係を続けたいのだけど、いいかな?」


 ・・・・・・・・・は?


 「キスして、姉さんを裸にして触るけれど、許して欲しいんだ。」


 義弟(ぎてい)は、(さわ)やかに、(さわ)やかに!言う。

 僕が慌てて彼女を見ると、目を(うる)ませて喜んでいる。

 僕はめまいがした。


 「妊娠はさせない。僕は弟だから。」

 「当たり前だろ!」


 僕はかっとなって怒鳴った。


 「そうよ! 当たり前でしょ!」


 珍しく、彼女も怒っている。


 「私は弟と裸で抱き合っても、それ以上のことは何もしないわ!」


 見損なわないでよ!と、言いたげだ。

 これが他人だったら、二股疑惑で即別れさせるのだけれど、この二人は姉と弟だ。別れるも何も、付き合ってすらいない。


 「裸で、抱き合う、だけ?」


 僕は彼女に確認する。


 「そうよ! 他に何があるの?」


 彼女は、僕の目を真っすぐ見る。

 僕は義弟(ぎてい)を見た。

 義弟(ぎてい)はかなり衝撃を受けているらしく、固まっている。

 裸で、抱き合う、だけ。それって、生殺し?


 「全く、私をなんだと思っているのよ! あなたとすら、必要なときにしか、しないつもりなのに! ね!」


 彼女が僕に同意を求める。

 え? しないの?


 「そうよね?」


 彼女はにこやかに、僕に確認する。


 「そうだね、、。」


 僕は無理して笑顔を作る。

 彼女は満面の笑みで、僕と義弟(ぎてい)を交互に見た。


 「私を幸せにしてくれて、ありがとう。」


 僕は笑うしかない。

 彼女が幸せで、僕も嬉しいのだから、まあいいだろう。

 義弟(ぎてい)は爽やかさに欠けるものの、笑顔になっている。

 よっぽど姉が好きなんだな。男として抱き合うわけではないのだから、見逃してやるか? 

 姉離れできない可愛い義弟(ぎてい)に、僕は(なさけ)をかけてやることにする。

 彼女が、席を立って僕の(ほほ)にキスをした。素早く動いて、義弟の(ほほ)にもキスをする。


 「愛してる。」


 彼女が嬉しそうに言う。

 おい! それは、どっちに言った台詞だ?!

 義弟が、彼女の(ほほ)にキスを返した。


 「愛してる。」


 二人が見つめ合いそうなのをぶった切るように、遅れて僕も、義弟(ぎてい)が触れた頬の反対側の頬にキスをした。

 僕は彼女の腰を抱いて、彼女の耳元にささやく。


 「愛してるよ。」


 彼女の耳が赤く染まっていく。

 義弟(ぎてい)の視線が痛いほど刺さるが放置する。


 「お兄ちゃん!」


 食後に席を離れていた妹が戻って、可愛い笑顔で僕に寄ってきた。


 「結婚、おめでとう!」

 「ありがとう。」


 妹に祝福されるのが、とってもうれしい。


 「お義姉(ねえ)さま、これからよろしくお願いします。」

 「私こそ、よろしくお願いします。」


 義姉(ぎし)義妹(ぎまい)の麗しい挨拶だ。


 「お兄ちゃんはよく私と一緒にいるので、お義姉(ねえ)さまと過ごす時間は少ないかもしれませんが、兄妹(けいまい)で仲良くしているだけなので、許してくださいね。」

 「大丈夫よ。私も、弟のところに入り浸ると思うから、心配しないで。」


 何の会話だ?!

 義弟(ぎてい)が笑い出した。


 「おい! わかっているだろうな!」


 義弟(ぎてい)に、姉離れを促すように声をかけると、義弟(ぎてい)が爽やかな笑顔で言いやがった。


 「ええ、わかっています。姉が妊娠するようなことがあったら、義兄(にい)さんの妹も、すぐに妊娠しますよ。

  大丈夫です。僕が責任とって結婚しますから。」


 なんだか納得できない。

 妹を見ると、得意げな顔になっている。


 「お兄ちゃん、離れて暮らすと寂しいから、近くに住もうね。」

 「そうだよな。お兄ちゃんから離れると、寂しいよな。」


 妹が悲しそうに言うので、調子を合わせて言う。


 「それなら、兄さんが所有しているマンションに空きが二部屋あるので、そこに住みませんか?同じマンション内だと、行き来が楽ですよ。」

 「それ、いいわね!」

 「わあ!いいな!」


 義弟(ぎてい)の話に、彼女と妹が喜んだ。


 「ちょっと待て! 家賃は? 場所は?」


 話がスムーズ過ぎて、ついていくのに必死だ。


 「僕たち姉弟(してい)が兄さんから借りるので、家賃は払わなくていいそうです。」


 気前のいい人なんだな。彼女が家族同然と言っていたのも(うなづ)ける。


 「場所は僕たちの自宅からすぐですよ。」


 義弟(ぎてい)はとってもにこやかだ。

 家賃がタダなのはとてもありがたいし、断る理由もない。

 何より、彼女と妹が手を取り合って喜んでいる。

 この二人、仲良くなったんだな。

 同志よ!という言葉が聴こえる。何の同志だ?


 問題はあるものの、なんとかなりそうなので、僕は良しとした。



 


 僕たちは入籍と同時に引っ越した。この春大学を卒業し、就職する妹も一緒だ。

 母は、義弟(ぎてい)が学生の身分で結婚することに反対どころか真っ先に賛成して、父を説得していた。 

 「早い者勝ち」「玉の輿」「ネタの宝庫」

 家の中で、母と妹が楽しそうに話している内容に、かなり引いた。

 母と妹は、ある特殊な趣味を分かち合う、友達のように仲のいい母娘(おやこ)だ。結婚しないつもりだった妹の結婚相手を知ったときから、母は妹と共に積極的に結婚に向けて準備していた。


 引っ越し場所は、妻の実家と同じマンションだ。義弟(おとうと)が幼児期にマンション内の住人にいたずらされそうになったので、妻の両親の友達がマンション内の部屋を順に買い取ったとか。話を聞いたときにはどんだけ資金力があるのかと、顔が引きつった。

 僕と妻、妹と義弟(おとうと)がそれぞれの家で同居する。

 荷物はそれほどないので直ぐに片付き、僕たちは四人で外で夕飯を食べ、それぞれの家に帰った。

 同居初日の夜、お風呂から出てきた妻を後ろから抱きしめて耳にキスすると、妻が僕の方に身体の向き変えてきいてきた。


 「子供の名前、考えてある?」


 え?! もう、作っちゃっていいの?!

 妻の少し(うる)んだ(つや)めく目を、僕は目をそらせずに見ている。


 「そうだね、考えておくよ。」


 僕は続けて「今から作ろうか?」と言おうとして、(つば)を飲み込んだ。

 インターフォンが鳴る。無視して妻にキスしようとしたら、また鳴った。

 前にもあったパターンだけど、もう、無視していいよね?!

 僕のスマホの着信音がする。同時にまたインターフォンが鳴った。

 


 僕が仕方なしにスマホに出ると、相手は妹だった。


 「お兄ちゃん、ドア開けて!」


 なんだ? 何かあったのか? あの義弟(おとうと)がやっぱり嫌になったのか?!

 僕は急いでドアを開けた。


 「お兄ちゃ~ん!」


 妹が僕に抱き着いて来るのを僕は受け止め、家に上げた。


 「私ね、お兄ちゃんといないと、寂しい!」


 おお! 僕もだよ。でもね、今夜は同居初日だし!

 僕がちらりと妻をみると、妻は笑顔で自分のスマホを持って立ち上がっていた。


 「お兄ちゃん、私、今夜ここに泊まりたい!」


 僕が妹を落ち着かせようとしている間に、妻は自分の部屋に行って部屋着に着替えていたようだ。


 「弟のところに泊まりに行くから、今夜は義妹(いもうと)と一緒に過ごしてね。」


 妻はさきほどと変わらない笑顔で僕に言った。

 え? 何もしないの? 


 「お義姉(ねえ)さま、こちらは心配なく~!」


 妻は妹を優しい目で見て、そのまま玄関を出ていってしまった。 

 僕は茫然(ぼうぜん)とした。今夜は記念すべき、同居一日目の夜なのに!


 「あのね、お兄ちゃん。」


 妹がさっきと打って変わって落ち着いた様子で、僕の前に座って話し出した。


 「私、お兄ちゃんのことが、好きなの。一緒に寝ちゃ、ダメ?」


 首を横に倒して、妹が僕にお願いをしている。

 そんなのもちろん!


 「いいに決まってる!」


 妹は、可愛いのだ。

 僕は真剣な顔で頷いた。



 次回から、第4章に入ります。

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