覇王になる為に。
新しいスキルを獲得したユート。
『覇王』の覚醒とはなんなのか…。
「もう一つ伝えないといけないことがあります」
「え、何だ改まって」
「それは『覇王』の真の覚醒条件についてです」
カルマが改まって俺に話始めた。
「主よ、『覇王』としての資格者が完全なる『覇王』になるには、七つの大精霊の加護を受ける必要があると言われているのです。 この世には様々な属性を司る大精霊がいて、我が司る【闇】、ニケが司る【風】と【雷】、ニクスが司る【炎】と【爆】、それ以外にも【水】、【土】、【星】、【幻】、【氷】、【木】、【石】…そして【光】と【聖】、他にも精霊はいますが大きな力を持つ大精霊はそのくらいでしょうか…。 それぞれの大精霊の神殿があり、『覇王』スキルを覚醒した状態で加護を受ける事が条件となるのです。」
この世界の各地に点在する神殿に赴き、各大精霊から加護を得る必要があるのだとか。
それぞれに"守護者"が存在していて、大抵は戦う事で認められるという事だった。
そういえば、"守護者"と戦ったのは今回が初めてだな。
「重要なのは、このうちの七つの大精霊から加護を受けなければならないと言うことです。そうすると、『覇王』の真の能力が覚醒するという事です。」
「なんだか凄い感じがするけど、どんなスキルが覚醒するんだ?」
「残念ながら、それは我にも分からないのです。 そもそも我がこの世に産まれてから『覇王』が誕生したと聞いたことがないので…」
精霊として生まれ、大精霊に進化した後に魔族としても生きたこの世界のカルマですら出会ったことが無いと聞いて、本当に『覇王』の情報が正しいのか謎になって来た。
「まぁでも、スキルが貰えるというならやっておくのは悪くないかぁ。しかし、カルマって詳しいよな。それは精霊の知識か?」
「ええ、その通りです。闇の精霊として生まれ、大精霊として昇格した時に勝手に流れ込んできた知識です。大精霊を引き継ぐとそういう知識の伝承がされるようです。今の話も、昔から精霊に伝えられている伝承のようなものなので」
少し迷惑そうにそう言いながら、でもそのおかげで主の役に立っているのであれば良かったかも知れないなと付け加えた。
どんなスキルが覚醒するか分からないが、多分ユニークスキルの筈なのでゲーマー魂がそそられる。
この世界を生きていく上でスキルはとても重要なので優先しておくべきだな。
『覇王』なんて大層なものには興味はないが、スキルを取るために各地の大精霊から加護を受ける。
そのための旅に出るというのが今後の方針として決まった。
「我の【闇の神殿】は、魔族領の本拠地にありますので最後にするのが良いでしょう」
「そうか、流石に魔王のお膝元で好き勝手には出来ないだろうし、竜姫の双子をこっちに引き入れちゃったからなぁ。下手したら狙われるか?」
「ええ十中八九、誰かしら幹部が襲ってくるでしょうね」
「うえ~、あのアモンとかいう奴は勘弁して欲しいけど…」
「そういう勘が働くヤツですから、必ず来るでしょう…」
そんなわけで最後に【闇の神殿】に行くとして、まずはどこから行くかだが。
「まずは、近くにある【火の神殿】に行くといいだろう。アグニから授かった【爆】属性のスキルと相性がいいはずですし、取っておいて損はないのではないか?」
「そうだよな。俺もそう思ってた。明日辺りに早速いってこよう。今日は収穫した肉を売ったり採取した素材をギルドに納品したりして身軽にしておきたいしな」
「それがいいでしょうね、では戻りますか?」
「ああ、そうしよう。おーい、休憩が終わったら下山するぞ~!帰りは襲ってくる奴以外は倒さなくていいからな!」
全員にそう告げて下山を開始した。
カイトは、チームメンバーを乗せて一人ずつ地上に降ろすために何度も往復していたが、その度に火の鳥に襲われてちょっとウンザリした顔になっていた。
「懲りないと言うか、めげないというか…」
倒しても倒しても次の鳥が襲ってくる状況に、なるほど鳥頭とはこういう事かと一人納得するカイト。
しかし段々と攻撃精度が上がってきているので、全く無駄というわけでは無いようだ。
一匹、また一匹と倒す度にどこから攻撃を仕掛けてきて、どのように躱そうとするのか考えなくても分かる様になってきていた。
カイトがメンバーを全員下山させ終わった頃には、日が傾き始めていた。
火山から差し込む夕日が綺麗で一瞬見惚れる一同。
「こういうのを見ると、異世界にいるんだなって実感するよなぁ」
「ええ、そうね。火の鳥が飛んでる場所なんて地球にはなかったものね。それに、ゲームの時と違って遠くまで凄く綺麗に見えるし素敵だわ」
カイトとアイナはそれまで慌ただしく生活してきたため、ゆっくりと景色を楽しむ余裕が無かったのだと実感した。
これもユートと一緒に生活するようになったから生まれた余裕のある生活が出来るようになったおかげだと感じる。
カイトの仲間達もこういう時に思い出すのだった。
自分たちがあの時諦めていたら、そしてユートが救援に来ていなかったらこの景色をこの仲間たちと一緒に見ることは叶わなかったのだろうと。
改めて感謝の念を抱きつつ、今はこの時を堪能するのだった。
カイト達全員が下山してから1時間くらいして、全員が下山してきた。
すぐに降りるような事を言っていた割には遅いなと思ったら、途中で鉱脈を見つけたらしく試掘してきたらしい。
やはりあの火山でも"火焔鉱石"が出るらしく、洞窟よりは守りやすいのでいい採掘場所を見つけたとガントがホクホク顔で語っている。
まぁ、あんな火の鳥だらけの所で採掘しようなんて酔狂な人間はガントくらいだろうなと思いつつも、言葉に出さないカイトだった。
───
全員が下山した時点ですでに空は夜色に染まっており、あちこちで明かりが灯っている。
観光地という事もあり、他の冒険者たちがお目当てのお店を探すためにあちこちを回っている様子が見えた。
「はぁ~、すっかり夜ですね。お宿の中が快適だったのであんまり外に出ていませんでしたが、さすが温泉街ですね。夜の町も賑やかですぅ~」
ミラは、昼には居なかった屋台や出店を見て目を輝かせていた。
こういう風景はなぜか懐かしく感じる。
子供のころにお祭りにいくとよく見るような風景だなと思っていると、リンが俺の袖をひっぱってくる。
「パパ~!私あれが食べたい!ね、い~でしょ?」
子供らしくも甘えた声でねだってくるリン。
報酬は年齢に関係なく分配しているので、お金は持っているはずだがそんな無粋な事は聞かない。
本当は自分の本当の父親にこうやって甘えたかったんだろうな。
そんな事をおもいつつ、自分の娘もこうやってよく自分におねだりしてきたもんだと思い出す。
自然と笑みが込み上げて『いいよ、どれがいい?』と言うと満面の笑みでやったーと言うリンを見て俺もより笑みを深めるのだった。
ついでにとばかりにシュウやショウタなどのキッズ達もたかってきたのだが、ここまできたらしょうがないと思い、
「もー、しょうがないな。よし、好きなもん買ってやる!全員好きなもんを頼んで来い!」
というと、戦闘のときよりもきびきびした動きで屋台を回って頼みまくるキッズ達を見てもはや苦笑いしか出なかった。
レーナとアーヤもリンを捕まえると私達も同じの食べる!と言って色々と頼んで食べていた。
「今日の晩飯は、これで済むかもなぁ…」
「あ、ユートさん私たちはあれがいいです」
「うえ?!お前たちもか…もう、いいぞ何を食べるんだ?」
普段はお淑やかな雰囲気のアイナだったが、場の雰囲気に呑まれたのか少し興奮気味のように見える。
「いえいえ、違います。あれを飲みたいんです。ほら、あれ!」
「お、飲み物か…へぇ~、そんなものがあるのか!」
アイナはじめ、大人女子達が指示した屋台にはなんと"ソーダ"が置いてあるようだ。
さすが温泉街だ、ここで"ソーダ"を売り出すとは。
店主に聞いてみると炭酸冷泉が湧く場所があるらしく、そこから汲み上げた炭酸水に果汁を入れて冷やしたものらしい。
ビール以外の炭酸飲料をコッチの世界で飲めるとは思っても居なかったので、俺の分も含めて全員に買ってあげた。
「くあ~っ!最高だなぁ。数年ぶりに飲んだ気がするぜ…」
「いや、まだこっちにきて3か月も経ってないぞ…」
だが懐かしく感じるくらい久々な気分なのは俺も一緒だ。
爽快感と程よい甘さが喉いっぱいに広がって気分も晴れやかになる。
屋台で食べ物を買い漁ってきた子供たちも戻ってきたので、好きな味を選ばして買ってあげる。
「コーラが無いのが残念だけど、炭酸ジュース飲めるだけでも幸せ~。俺、ユートさんとこに来れて最高に良かったよ」
とショウタが目を輝かせて言ってきたので、そりゃあ良かったなと頭をワシワシしておいた。
しかしこの炭酸だが、炭酸冷泉というだけあって口当たりがとてもまろやかで普通に美味しい。
試しに割っていない炭酸水を飲ませてもらったが、それだけで美味しいと感じる程だった。
「なぁなぁ、店主。これを大量に売ったり出来ないか?」
「ええ?!ダメですよぉ。このシュワシュワするのは一日で消えてしまうんで、採ってきた日に売らないと美味しくないんです。それに他の店に売られても私が困るんです」
屋台の店主は、この町の他の店に卸すと勘違いしたようだったので、自国に持って帰って売りたいんだと説明した。
ただ、さきほどのシュワシュワが消えてしまう件はこちらの責任ではないですからねと言うと、1樽分くらいなら売れると答えてくれた。
どうやら採掘場所自体が店主の実家の保有地らしく、他の場所ではここまで飲料に適したものは出ないのだそうだ。
どうせならと、今度商談させて欲しいと【ウィンクルム】のユートだと教えて、家を教えてもらった。
かなりびっくりしていたが、どうりで強そうな冒険者を沢山連れているわけですねと言われて少し照れた。
一般人から見ても、メンバー達は強そうに見えるらしい。
俺には分からんけどなぁ、そういうもんか?と口に出していたところ
「ユートさん、強い魔物を見た時に本能的に強そうだなと感じるのと一緒で、人間もある一定以上の強さになると一般の方でも強そうに見えるらしいですよ?」
とサナティが教えてくれた。
だから、英雄ランクの冒険者が来ると大抵はすぐにばれてしまうのだという。
「あれ、俺の時はバレた感なかったけど??」
「それは…ドラゴンの方がインパクトありますから…」
「ああ…なるほどね…。嬉しいような悲しいような…」
ふふふ、お気になさらずに…と微笑み俺をドキッとさせた後に、すんなり俺を置き去りにしてふわーっと他のメンバーの方へ去っていった。
女は怖いなと少し思った俺だった。
「さて、そろそろ宿へ戻ろうか。みんないくぞ~」
「「「はーい」」」
今日のクエスト報酬はメイアとガントで受け取りに行ってもらう事にした。
ユニオンのお金の管理はメイアにもしてもらっているので、そのまま金庫に預ける処理をしてもらうためだ。
各自屋台でそれなりに食べたので、結構お腹が膨れてしまった。
なので夕食は軽めのものをバイキング形式で用意だけしてもらって、お腹がすいたら食べに来るように全員に伝えておいた。
俺はというと、自分の部屋に戻り明日の行こうと思っている神殿の場所を確認していた。
ここからだと、そこそこの距離があるので徒歩で行くと2日間掛かってしまうだろう。
宿も今夜泊まったら明日チェックアウトするつもりだったので、ゴンドラごと移動するのが良さそうに見える。
幸い近くには小さな町があるらしいので、宿にも困ることはないだろう。
さすがに今日のような高級宿に泊まることはできないので、そこは明日の朝にちゃんと念を押しておかないとだな。
毎回贅沢ばかりしてられないのだからね。
航空ルートを確認し終えてから、本日最後の温泉に行く。
はー、やはり温泉は最高だ。
三日目にもなると、メンバーも慣れてもので各々好きなタイミングで好きな時に入っているのであまり被ることは無くなった。
…筈だったのだが、なぜかサナティとセツナがやって来るのだった。
「ふふふ、また会いましたね」
「ユート殿…お持ちなのだろう?」
「ったく、狙いはそれか!いや、自分で頼んで持ってくればいいだろ」
今回も持ってきた米酒を狙っていたようで、ちゃんとグラスを持ってきていた。
サナティは同じルームに泊まっているから、出ていくときにバレバレになるらしいな。
でも、わざわざセツナを呼びに行くあたり、意外と二人の仲が良くなっていたみたいだ。
「案外二人の気が合うのな」
「ええ、セツナさんにユートさんの世界の話を色々と聞かせてもらっているうちに意気投合して」
「そうそう、私もサナティにこちらの世界について、色々と教えてもらっているんだ。知らない事が多くて凄く為になるぞ?ユート殿にも今度教えてあげよう」
「おー、それはありがたいな。こっちの世界の常識とか分からない事が多いかもしれないしな」
そういうと、すすっとセツナが近づいて耳打ちした。
「例えばこの世界はな…地位と経済力があれば一夫多妻が許されているらしいぞ?」
マジかっ!?って思わず反応してしまうが、いやいや何を考えてるんだ俺は。
でも普通に考えたら、それって貴族や王族の事なんだろうな。
ただ俺も一般人から見たら十分に裕福なわけで、資格があるかも…っていやいやそういう事じゃないだろう?!
そんな葛藤を見とってか、セツナがその張りのある豊かな膨らみを押し付けてくる。
「私はな、お前ならいいと思うぞ…?」
あのー、当たってますけど…。
「あ、セツナさん。抜け駆けはズルイです!」
と反対側の腕を取り抱き着いてくるサナティ。
その二つの柔らかな膨らみに包まれる俺の腕。
これ以上ここにいたら、俺の理性が吹き飛びそうだ。
「すとーっぷ!」
そう、思っていたらいつの間にか来ていたリンが空からダイブしてきた。
ドボーンッ!と豪快な音を立てて飛び込んできたリンに驚いて俺での腕を放した二人と俺の間にリンが入り込みビシッと!音がしそうな勢いで二人に目掛けて指を指した。
「私の許可なく、パパを誘惑をするのは禁止なんだからっ!」
プンスコ!と聞こえてしまいそうなほどご立腹なリン。
そのリンの勢いに負けた二人はついに…噴出して笑うのだった。
「はいはい、冗談、冗談だよリン。ちょっとした悪戯だよー」
「ふふふ、リンちゃんは可愛いのね。大丈夫、パパは取らないからね?それとも、リンちゃんも一緒に…」
そういうサナティにパチュンと音を立ててデコピンをお見舞いした。
「いくらサナティでも、リンにそういう事いって揶揄うんじゃない」
「うう、いたいですユートさん。 ふふ、本当に親子なんですね、少し羨ましいです。…でも、ユートさんの事は冗談じゃないですよ?」
「はいはい、もうこんなおっさん揶揄ってないで明日に備えてくれよ?」
そう言って、残っていたお酒を飲み干してから先に上がることにした。
上がる前にリンに小声で『助かったよ、ありがとうな』と言うと照れた顔でえへへと顔を緩めていた。
うん、可愛い、なんだこの可愛い生き物!!
俺の目が黒いうちは、この子に手を出す男を赦すことは無いかもしれない…。
「しかし、俺らは元の世界に帰れるのだろうか?というか、もうこの世界の人間として生まれているとか言ってたし、別の人間としての人生も考えないといけないかも知れないな…」
そんな事を漠然と考えながら、明日の事に頭を切り替えて温泉から上がるのだった。
※日々に忙殺されて、投稿に時間がかかりました。
いつもご覧になって頂いている方々、本当に有難うございます。
日々、評価やブックマークが増えていき、皆様に応援されているようでとっても励みになっています。
是非よろしくお願いします。
おまけ==============
「もう、セツナさんもサナティさんも油断も隙も無いんだから!」
「はいはい、でもね私が新しいお母さんじゃダメかしら?」
「え、サナティさんがパパと結婚するの?」
「も・し・もの話よ?でもね、この世界の男性はね、実力者は沢山の奥さんを迎えて沢山の人を幸せにする責務があるのよ。だからそのうちユートさんも、たくさん奥さんを迎えないといけないの」
「え、じゃあパパは結婚しているけど、また結婚しないといけないってこと?」
「そうよ、だからその時にはね立候補しようと思うのよ。ダメかしら?」
「うーんうーん、サナティさんは綺麗だし、パパをいっぱい助けてくれるし…ダメじゃないけど…あ、そしたら!」
「うん、そしたら?」
「私がパパの新しいお嫁さんになる!」
「「やっぱ、恐ろしい子!」」
おわり==================
※おまけは本編とは一切関係ありません。
次回もよろしくお願いします、




