おっさんテイマーと覇王への道。
神殿を出てきたユートは…。
新たな力を手に入れた俺は神殿から出てきた。
「これで、妾の使命は一旦終わりじゃ。お主が万が一に死ぬような事が無い限りはの」
「寿命で死んだ場合は?」
「それはそれで仕方ない事じゃが、お主の寿命はお主が考えておるよりも長いのじゃぞ、主殿?それに、覇王を狙う輩もおる故そんなに悠長なことは言ってられまいよ」
「げっ、まじかよ。なんて迷惑な…」
「仕様があるまい。そもそも、そういう運命なのだからの。嘆くよりも、諦めて精進するのが良いと思うぞ」
あれだけ挑戦的に襲ってきた割に、仲間になった途端に親身になってくれるニクス。
これもスキルの効果なのかも知れないけど、若干腑に落ちない。
「なんか、急に角が取れたというか…性格変わった?」
「んん、元々こんなんじゃが?お主の世界におったフェニックスが捻くれてただけじゃろうて」
あのフェニックスとは別だと言うニクス。
確かに、全然懐かなかったし性格は別な気がするな。
そこでふとあの日の事を思い出して聞いてみる。
「そういや、そもそもなんで最初に逃げたんだ?」
今の性格なら、あの場で逃げるよりもカルマの様に挑戦をして来そうな気がするのだけどな。
「主殿よ考えてもみてくれ。気を失ったと思って次に意識を取り戻したら、目の前であの馬が暴れておったのじゃぞ? ただでさえ恐ろしい奴なのに、自我を失って暴れてるのじゃぞ? …普通は逃げるじゃろっ!」
確かに、あのカルマが暴れている時点で逃げたくもなるか。
しかし、あの時点でもカルマの方が格上だったのか?
まぁ、ここはニスクに有利な精霊が多いからあんな技使えるけど、そうじゃ無いとかなり不利になりそうだし相性も悪いだろうしな。
「そっか、それは大変だったな…。と言うことは、その時点ではもうこっちの意識を持ってたのか?」
「うむ、最初は変な"邪悪なるモノ"がこの山にやって来たかと思ったら、抵抗する間もなく妾は意識を失ってな。気が付いたら、目の前で強化されたナイトメアが暴れているではないか!なのに自分では知らない筈のお主の情報や、目の前のナイトメアがカルマだと分かるし…あれで混乱するなと言う方がオカシイのじゃ!」
想像してたよりも大混乱だったみたいだな。
ふんと鼻息荒くし憤りを顕にするも、
「結局恐れをなして逃げただけだろう?貴様は主の従僕としても守護者としても半端ものなのだ」
出て来てからの会話を聞いていたらしく、辛評を呈すカルマだったが特に敵意が有るわけでは無い様だった。
ただ更にぼそっと、
「貴様も鍛え直すから覚悟するといい。このままで力不足だ」
と恐ろしい事を告げられて灰に成りかけたニクスだった。
「妾は逃げる場所を間違ったのじゃ…」
と悲壮な顔でしくしくと泣いているがフォローしようがなく、頑張れよと言うだけだった。
俺らが出てくると、後発部隊のシュウ達がやって来た。
来る途中、火の鳥の討伐合戦をしたようでどうらやシュウが勝ったらしく、ホクホク顔だ。
「ユートさーん!俺頑張ったよ!」
「おう、そうか!ちなみに皆でどれくらいいった?」
ショウタ兄わかる?と聞いて、ショウタに回答を託すシュウ。
今回の討伐で更に仲良くなったみたいだな。
「シュウ〜、さっき皆で数えただろ〜。全部で230羽だよ。カイト兄達が下の方飛んで戦ってるの見えたからまだまだ増えそうだね」
「カイトさん達凄いよね、一撃で数匹倒してたよ」
「ユウマは戦闘してるとこまで見えたの?すげーな、さすがスナイパー!」
「スナイパーじゃなくて、レンジャーね」
「相変わらずショウタはテキトーだなー」
子供たちの会話は止まりそうもなかったが、大体把握は出来た。
その分だと、カイト達も上がってくるだろう。
この分だと、今日現れた火の鳥たちは全滅したんじゃないだろうか。
まだ近隣地域にも住処があるので、絶滅はしないだろうけど今回の討伐でかなり出現率は減るだろうな。
カイト達もしばらくしてから合流して討伐数を確認したがやはりかるく100を超えていた。
「いやー、今回は楽でよかったぜ。フェニックスもテイム成功したんだろう?…そういやどこにいるんだ?」
「ん?目の前にいるぞ?」
ガントがテイムした筈のフェニックスの姿が見えないのを不思議に思ったらしい。
実際には、目の前にいるのだが…
「てか、そのすごい恰好の女子はどこの人だ?」
「今、やっと気が付いたのか。これがフェニックスのニクスだ。今後は仲間だから皆よろしくな」
「妾はニクスだ。どれ、本来の姿も見せてやろう」
ニクスはそう言うと、全身を炎で包み込む。
その炎がボウゥッと広がるとそこには大きな火の鳥になったフェニックスのニクスがいた。
クァッー!と鳴くニクス。
「おお…本当にフェニックスかよ…。しかし、ユートのペット達はみんな人型になるんだな…」
「いや、なれるのは特殊個体だけだから。ニクスもその一人ってことだな…」
「そうなのか?てっきりお前のスキルかと思ったぜ」
「そんなスキルないからっ!てかどんなスキルだよ…」
「擬人化みたいな?ほら、一部の女子にそういうのが好きなのが…」
「…やめとけ、それ以上は危険だっ」
とはいえ、確かに異常なほどそういう個体を仲間にしているわけだが理由は簡単だ…『覇王』に選ばれたからだ。
この世界で『覇王』に選ばれたユートと同一化してしまった俺は、その運命をそのまま背負う形になってしまった。
本人がそういうのだから、間違いないのだろう。
あの時、この世界の事を頼むと言われた。
自分の代わりに、この世界を正しい形に戻して欲しいと。
そして、もし可能であれば自分のような独りで生きていく子供がいない世界を作って欲しいと。
「出来る限りの事はするさ…」
「何か言ったか?」
「いいや、独り言さ」
この世界のユートとの約束を思い出しながら、俺は旅を続けることを決意する。
「ニクス、炎の神殿はここからどのくらいでたどり着く?」
お披露目が終わったので、既に人化したニクスは気怠そうにしながら答えた。
「ここらだと…飛べば2時間程じゃろうな。じゃが、そう焦らなくても良いじゃろう?」
「まあ、そうなんだが。近いなら寄ってもいいかなと思ってな」
「お前、そんなコンビニでも行くかのように言うなよ…」
ガントがツッコミを入れるがスルーしておく。
ちなにみマイニャやサナティは『コンビニ?』と頭にはてなを浮かべていた。
「丁度昼過ぎだし、ちょっと遅いが昼飯にでもしておくか。メイア、準備してくれ」
「畏まりました、旦那様」
そういうと、メイアはサクサクとお昼の準備をしていく。
予め用意していた食材と、ここで取れた火の鳥の肉を渡して料理も任せた。
さすがにルガー程の腕前はないが、俺よりは上手なようで見る見るうちに様々な料理が出来ていく。
毎度思うのが、このメイアを筆頭にうちのメイド達の作業スピードは目を疑いたくなる速さだ。
的確に神速で進められる作業は、ランクが上の俺達ですら目で追うのがやっとである。
「うわ~、あのメイドさん凄い速さでご飯作ってるわね。おじ様…あの人は本当に人なの?」
「ん、レーナ。メイアはな、元々人間だけど、進化して鬼族になったんだよ。今じゃ、鬼王なんだ。個体名は守護鬼姫メイアだし、凄いだろ?」
「…情報がありすぎてコメントに困るけど、凄いのはわかったわ。」
あんなに一番労働しているのにお姫さまってなんだかね、と呟いていたレーナはぼーっと見ているだけの自分に気が付き、手伝います言いながら走っていった。
ああやって率先して動けるのはあの子のいい所だな。
レーナが手伝いにいくと同時に、アーヤもリンも手伝いをしていた。
その点、何もしようとしない男子たちは…と思ったがレーナに指示されて働いているな。
あの歳でリーダー気質が備わっているとか、本当に優秀な子だ。
その頃、カイト達はというと討伐した火の鳥達の処理をしていた。
さすがに数が多すぎて道中で解体する余裕がなかったらしい。
シュウやダイキも手ほどきを受けながら、一緒に手伝っている。
血抜きをして、羽根を毟り肉を分けていく。
肉だけにしたものは、ミラやサナティが魔法で氷漬けにしていく。
この世界でも氷漬けにすると保存が効くのは常識らしく、長期保存する際はやはり凍らせてかららしい。
冷凍された鶏肉はゲンブの保存ボックスに収納して、あとで肉屋に卸す予定だ。
ギルドに売ってもいいが、皮等の素材と違って捨て値にしかならない。
もちろん、それだけで効果があるような価値が高い肉は別だが。
よって火の鳥の肉は、単なる鶏肉となってしまうので肉屋に卸すのが一番高値で売れるのだ。
「肉だけでゲンブの容量半分いきましたよ。さすがに狩りすぎでしたね」
「全員合わせて400匹くらいいったか?」
「ええ、そのくらいですね。これだけ羽があれば全員分の羽マント作れますよ。耐火性もいいし、この地方では需要の高い装備品です」
「へ~、それはいいな。それなら俺らが使うよりも売りに出した方がいいんじゃないか?」
「あー、その考えは無かったですね。ガントさんが作れば高品質ですし、消耗品であるマントはかなり高値になりますよ。」
「お~、マジでか。しかし、羽根マントなんてレシピあるのか?…お、あるんかよ!うん、作れるわ。ほぼ100%で高品質いけるぞ」
得意げにそういうガント。
まあ、確かに装備品のレシピなんてかなりの数があるから全部把握しろとは言わないが…
もう少し把握しておいてほしい所だな。
「ガント、もう少しレシピを把握しておけよ?それ次第でお前の給金変えるからな」
「ええ!?いきなり酷くないか!?今まで自由にやってきたのに…」
「ん?いや、減らすって話じゃないからな。把握して商売につなげれればもっと増やしてやるってことだよ」
「マジ!?やったぜ。さすがユートだ!話が分かるじゃないか。すぐに把握しておくよ。ようは行く地域の特徴に合わせたレシピが知りたいんだろ?」
お金が貰えると思うと頭が冴える辺りがガントらしいが、やる気になってくれて良かった。
よくすぐに減給だっ!なんていう上司がいるが、あれはダメだ。
生産性向上させるには、鞭よりも飴だ。
それを分からない経営者が何人も経営破綻していくのを今まで沢山見てきたので良く分かる。
生産者や労働者がいない会社なんて、上手くいくはずがないのだ。
なのでうまくノせてやる気にさせるのが一番の近道だと俺は思っている。
俺とガントも解体を手伝いつつ、あらかた終わった頃には昼飯の準備が完了していた。
火口付近で食べるわりには比較的涼しいのは、カイト達と一緒に来たセリオンとシュウを乗せてきたシロのお陰だ。
氷のブレスで辺りを冷やして、その気化熱を利用して涼しさを作り出している。
岩の一部を綺麗に切り取って(包丁で岩をバターのように斬っていた)出来上がったテーブルにいろいろな食事が置いてあった。
焼いたパンに、温野菜サラダに、スープ、持ってきてたベーコンと一緒に今回討伐した火の鳥のソテーなどが置いてあった。
もし他の冒険が来てこの光景をみたら度肝を抜かすだろう。
なんせ危険な火の鳥の生息地のど真ん中で呑気に座って食事を取ろうというのだから。
幸いなことに、こんな危険な場所に来れる冒険者は少ないので遭遇することはなかったが。
一緒にニクスが食べているのを見て、一瞬ぎょっとしたが試しに『火の鳥は食べれるのか?』と聞いたことろ、『あれは妾の食料じゃよ?食べるに決まっておる』と言っていた。
「主様、フェニックスは悪食なので、なんでも食べるんですよ?」
「そう言えばそうだったな。体内ですべて灰にしてしまうので魔力を含むものなら何でも食べてしまうらしいですよ、主よ」
とニケとカルマも当然かのように人化して食事の席についていた。
竜姫の双子も大人しいと思ったらもぐもぐと昼飯を食べていた。
他のペット達も焼いた火の鳥の肉を食べたり、持ってきている餌を食べたりしている。
リャマたちにも干し草と水分を与えておく。
それぞれが満腹になった頃…
「カルマ、ニケ」
「何でしょう主」「はい、主様」
「二人からは加護を受けた筈なのにスキルの覚醒が無かった気がするんだけど?」
そういや、最初に加護を与えてくれたのは二人のはずだ。
なのに何も覚醒していない気がする…
「おや、気が付かれましたか…」
「流石にこれ以上は隠せまいよ。我が話そう」
そう言うと、カルマは理由を説明してくれた。
「まずは、我らが加護を授けた時に主はまだ『覇王』を覚醒していなかったのがひとつ。もうひとつは、守護者の神殿で儀式を行う必要がある為です」
「それは何処にあるんだ?」
「我の場合は、【闇の神殿】ですから中央大陸【ウルステア】にある。そして、ニケの場合はあの【嵐の神殿】にもう一度行く必要がありますね」
「じゃあもしかして、北大陸の【氷の大精霊】からも加護を受けれるのか?」
「そうですね。…もう一つ伝えないといけないことがあります。」
「え、何だ改まって」
「それは『覇王』の真の覚醒条件についてです」
そして俺は、カルマから『覇王』の本当の力の解放について聞くのだった。
いつもご覧になって頂いている方々、本当に有難うございます。
日々、評価やブックマークが増えていき、皆様に応援されているようでとっても励みになっています。
是非よろしくお願いします。
次回も宜しくお願いします。




