一夜城
地震があっても気づかない。結構危険な体質。
2月21日
ー茶道室ー
朝九時
蓮はモゾモゾと布団から這い出た。彼は低血圧なのだ。
他の仲間は既に起きて朝食を作ったりコーヒーを飲んだりしていた。
ボーっとしながらあたりを見渡していると蓮に気付いたゆーじがやってきた。
「相変わらず寝起きが酷いな蓮」
そう言って寝起きの蓮にコーヒーを差し出した。
きちんとミルクと砂糖がたっぷりと入っている。蓮は苦いのが飲めないのだ。
飲みながら徐々に頭が覚醒していく。
ああ、茶道室か。茶道室でコーヒーも悪くないな。
飯は__昨日のカレーとバナナとヨーグルトか。
モソモソと喰いながらこれからの予定を立てていく。
「各自報告ー」
「瑠衣ねぇが制服洗濯済みです」
「昨日の夜また地震あったらしいよ~」
「朝ラジオ体操やってたwww」
「生徒会長が後で会いに来てくれって言ってた」
「工事の人が内装どうすんのかって、荷物あるなら運ぶから連絡くれって」
「シャワーじゃなくてお風呂入りたーい」
「体育館付近のトイレは行列が出来てますね」
「向こうはパンとサラダと魚肉ソーセージだって」
「朝家に戻ってった人結構いるっぽい」
ふ~~~~~ん。なるほどね。
「まず工事現場行って部室の荷物運んでもらおう。んで会長んとこいくか。」
『ういっす』
風呂は作ってると思うけどなければ女子寮行って入ってくれ」
『りょうかーい』
「んで結局何処に建てたの?近くにないっぽいけど」
「裏山の方の川の近くらしいッス。水力発電がどうたらいってたッスよ」
ふ~~~~ん。電気関係はよくわかんねーや。
川近いなら釣りしたいね。どうせ暇になるだろうし。
あっち側だと人こないだろうし、周りを気にしないでバーベキューも出来るな。
避難してる奴らの前でバーベキューは流石に気がひけるもんな。
かといって全員に作って配るとかめんどくせーしな。
「んじゃいくかー」
ポケットにチーズとチョコを入れて裏山の方へと向かった。
~裏山~
部活棟から校舎の反対側、女子寮から花壇や裏庭を抜けて更に奥にある場所。
人工的な川や小さい橋があり、釣り部が良く利用している。
そんな場所にひときわ場違いな施設が建てられていた。
………上り坂のない小田原城?
いや、城壁があるし川と堀が繋がってるしで結構違うか。
完全にじーちゃんの趣味だなコレ。
一応トラックが中に入れるほど門が広いあたり実用性皆無って訳じゃなさそうだが。
ぽけーっとみてると作業員が声をかけてきた。
「二階堂さんですか?中で監督がお待ちです」
はいよと声をかけて門を抜けるとホテルのフロントみたいなロビーだった。
統一しろよ!和テイストじゃねーのかよ!!
心のなかで突っ込んでいるとソファーに座っていたおっさんが立ち上がった。
「お待ちしておりました二階堂様。総監督の橘です」
「蓮だ」
「二階堂会長から一夜城とのご要望でしたので外観は小田原城風になってますが、中身は最新設備となっておりますのでご安心ください」
「そうなんだ。普通にマンションでよかったんじゃね?」
俺は苦笑いしながら答えた。
「量産タイプでは普通にマンションにします。こちらは特別仕様ですね」
…そんな特別は欲しくなかったな。
「1階はロビーになってます、2階は食堂、3階が各個人部屋。奥に蓮様と瑠衣様の専用部屋。
4階が大浴場、屋上が展望デッキとミニプールです。
地下1階が倉庫兼保管庫、冷凍室もあります。地下2階が機械室です」
「電力は地下を通している川から水力発電で賄っています。一応ソーラーパネルも設置してますがそっちは発電力が少ないのであくまでも補助です」
「わかりやすく言うと城の外壁を纏った普通の別荘ですね。災害直後だと言うことで物資も運んでおります」
すらすらと施設説明をしていく監督さん。
「ありがとね。後で部室から各部屋に荷物運んでくれ。大浴場があるのが嬉しいね、姐さんの指示かな?」
「”蓮ちゃんは露天風呂じゃないと嫌がる”って仰っておりました」
俺はあの風呂場の蒸した空気がダメなんだよね。呼吸困難になりそうで。
「風呂はもう使えるの?」
「もちろんです。アメニティも揃っております」
「んじゃ入るか。ミカー、入れるってよー」
「やった!」
「一応せいとかいちょーも呼んどいてー。くるか知らんけど」
「はーい」
「他に報告ある?」
「昼に自衛隊医療団がきます。付属高校を拠点に各地をまわるようです。
後道路整備の工事作業員達が旧第二都市中央大学の場所を利用したいそうです」
「あ~、そういうのはいいや。そっちは校長の仕事でしょ。俺は単なる学生だよ」
単なる学生がこんな事するか!という心のツッコミを受けつつ、
皆で大浴場へと向かうのであった。
屋上のプールは金持ちっぽいな。清掃大変だからな。




