トレンド一位おめでとうございます!
第八話まで読みに来てくださってありがとうございます。
今回は、“事故”が完全に事故で済まなくなる回です。
配信切り忘れ。
トレンド入り。
拡散。
説明要求。
ネットの熱量が一気に現実へ押し寄せてきます。
でも今回本当に大きいのは、炎上そのものじゃありません。
レイが初めて、“逃げない形”で感情を口にし始めたことです。
今までは冗談っぽく濁したり、距離感で誤魔化したりしていた二人ですが、今回はかなり真正面です。
そしてミオは、その真っ直ぐさに追いつけなくなり始めています。
今回のテーマは、
「誤解で済ませたい気持ち」と「本当だと嬉しい気持ち」です。
それでは第八話、どうぞ。
スマホの通知音で目が覚めた。
一件。
二件。
十件。
百件。
「……うるさ」
寝ぼけたまま画面を見る。
その瞬間、意識が一気に覚醒した。
『#レイミオガチ』
『#配信切り忘れ』
『#本気だよ』
全部トレンド入りしていた。
「……………………」
終わった。
人生終わった。
通知欄を開く。
『昨日の配信やばすぎ』
『もう付き合ってるだろ』
『営業否定きた?』
『ミオ逃げてて草』
無理。
ネットが全部敵に見える。
その時、着信。
相手はレイだった。
「……もしもし」
『おはよ』
声が普通すぎる。
「全然おはようじゃないけど!?」
『まあまあ』
「まあまあじゃない! 見た!? SNS!?」
『見た』
「なんでそんな落ち着いてるの!?」
通話越しに、レイが少し笑う。
『ミオの方が可愛い反応してるなって』
「今そういうのいいから!!」
頭を抱える。
昨日のあれは事故だ。
事故。
なのに。
「……否定しないの」
気づけば、そんな言葉が漏れていた。
数秒、沈黙。
『ミオは、否定してほしい?』
その返しはずるい。
「そういう聞き方やめて」
『じゃあ質問変える』
レイの声が少しだけ柔らかくなる。
『昨日、嫌だった?』
「……」
嫌じゃなかった。
むしろ。
少し嬉しかった。
でもそんなの認めたら。
『ミオ?』
「……分かんない」
『最近そればっか』
「だって本当に分かんないんだもん」
通話の向こうで、小さく息を吐く音。
『じゃあ、分かるまで待つ』
優しい声だった。
だから余計に苦しい。
◇
昼。
事務所。
会議室へ入った瞬間、マネージャーが机に突っ伏していた。
「おはようございます……」
「おはようじゃないよ……」
死んだ声だった。
テーブルの上には大量の資料。
そしてモニターには。
『【速報】人気Vtuber、配信事故で公開告白か』
「やめてください見せないで」
私は顔を覆った。
レイは隣で笑っている。
なんで笑えるの。
「とりあえず今日、“説明配信”やるから」
マネージャーが言う。
「え」
「誤解を解く感じで。変に黙るともっと燃える」
説明。
誤解。
その言葉に、胸がざわつく。
「……何て説明するんですか」
「まあ普通に、“仲が良すぎて距離感バグってました”みたいな」
それはまあ、事実。
でも。
レイが静かに口を開く。
「もし誤解じゃなかったら?」
空気が止まった。
マネージャーが固まる。
私も固まる。
「……レイ?」
レイは笑っていなかった。
真っ直ぐ前を見たまま、静かに続ける。
「本当に好きだった場合って、どう説明するんですか」
胸がうるさい。
苦しい。
逃げたい。
でも。
私はなぜか、その答えを聞きたかった。
第八話を読んでくださってありがとうございました。
ついに“説明配信”という、配信者もの特有のイベントが来ました。
でもこの二人、説明しようとするほど余計ややこしくなるタイプです。
特に今回のレイはかなり危険です。
「もし誤解じゃなかったら?」
この台詞、ほぼ宣戦布告みたいなものなので。
しかも本人、勢いではなくちゃんと考えた上で言っています。
一方ミオは、まだ「好き」という言葉を受け止めきれていません。
でも拒絶もできない。
つまり今、感情だけ先に本物になって、言葉が追いついてない状態です。
あとマネージャー、本当に胃が痛いと思います。
たぶんこの作品で一番苦労してる人。
次回、ついに“説明配信”が始まります。
もちろん平和には終わりません。
ではまた次回。




