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百合営業のはずだった  作者: 星恋 hosiko


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19/20

”営業でした”で終われなかった

 第十九話まで読みに来てくださってありがとうございます。


 いよいよ、物語も終盤です。


 今回は、“隠すか、伝えるか”に二人がちゃんと向き合い始める回になっています。


 最初はただの営業だった。

 でも気づけば、嘘のふりをする方が苦しくなっていた。


 ここまでの二人を見ていると、恋って“始まる瞬間”より、“隠しきれなくなる瞬間”の方が大きいのかもしれません。


 今回のテーマは、

「本当の気持ちは、隠し続けるほど苦しくなる」です。


 そして次回、ついに最終話です。


 それでは第十九話、どうぞ。

 「次の配信、どうする?」


 マネージャーの声は、少しだけ緊張していた。


 会議室。


 机の上には資料と、SNSの反応まとめ。


【レイミオ、本当に付き合ってる説】

【最近隠してなくない?】

【むしろ公表してほしい】


 もう、みんな気づいている。


 たぶんずっと前から。


「周年配信だからね」


 マネージャーが言う。


「同接も過去最大になると思う」


 一周年記念配信。


 『Lily Crown』が始まってから、ちょうど一年。


 営業から始まった二人組。


 でも今は。


 もう、その言葉だけじゃ説明できない。


「……どうしたい?」


 マネージャーは静かに聞いた。


 仕事としてじゃなく。


 ちゃんと、私たち自身に。


 私は隣を見る。


 レイもこちらを見ていた。


 静かな目。


 逃げなくていいよって言うみたいに。


 帰り道。


 冬の夜。


 駅前のイルミネーションが滲んで見える。


「……怖い?」


 レイが聞く。


 私は少しだけ笑った。


「まだちょっと」


「そっか」


「でも」


 私は小さく息を吐く。


「前みたいな怖さじゃない」


 前は。


 好きになるのが怖かった。


 壊れるのが怖かった。


 でも今は。


「……嘘つく方が、苦しい」


 レイが少しだけ目を見開く。


 その顔を見て、胸が熱くなる。


「ミオ」


「なに」


「今すごい抱きしめたい」


「最近そればっか」


「彼女がかわいいから」


「うるさい」


 でも。


 少し嬉しい。


 夜。


 私は一人で、最初の配信アーカイブを見返していた。


『百合営業、やっていきますか〜』


 画面の中の私たちは、まだ少しぎこちない。


 距離も遠い。


 でも。


 今見ると分かる。


 レイは最初から、少しだけ優しかった。


 私はスマホを握りしめる。


 通知。


 レイから。


『起きてる?』


『起きてる』


『会いたい』


 その短い言葉だけで、胸が苦しくなる。


『私も』


 送信。


 数秒後。


『迎え行く』


「行動早……」


 思わず笑ってしまう。


 三十分後。


 家の近くの公園。


 レイはマフラーに顔を埋めながら立っていた。


「寒……」


「呼んだのレイでしょ」


「でも会いたかった」


 その言い方がずるい。


 私は少し笑う。


「……ねえレイ」


「ん?」


「もし次の配信で」


 喉が少し震える。


「ちゃんと言ったら」


 営業じゃなくて。


 好きだから隣にいるって。


 そう言ったら。


「後悔するかな」


 レイは少しだけ黙った。


 そして。


「しないと思う」


「なんで」


「だって」


 レイが静かに笑う。


「ミオのこと好きなの、隠してる方がもう無理」


 胸がいっぱいになる。


 私は俯いたまま、小さく笑った。


「……私も」


 風が吹く。


 冷たいのに。


 隣だけ、少し温かい。


「ねえミオ」


「なに」


「最終回みたいな空気出てるけど、まだ終わんないからね」


「……ふふ」


「これからの方が長いんだから」


 その言葉が。


 どうしようもなく嬉しかった。

 第十九話を読んでくださってありがとうございました。


 今回はかなり、“最終回直前”の空気が強い回でした。


 特にミオの

「嘘つく方が、苦しい」

 は、この作品を通しての大きな変化だと思います。


 最初のミオは、“好きになること”そのものを怖がっていました。

 でも今は、“好きじゃないふりをすること”の方が苦しくなっている。


 恋がちゃんと、二人の中で本物になった証拠です。


 そしてレイの

「これからの方が長いんだから」

 という台詞。


 個人的にかなり好きです。


 この作品は、“付き合うまで”だけの物語じゃなく、“好きになったあとも続いていく関係”を書きたい気持ちがずっとあったので、その空気が少しでも伝わっていたら嬉しいです。


 いよいよ次回、最終話。

 “百合営業”から始まった二人が、最後にどんな答えを選ぶのか、見届けていただけたら嬉しいです。


 感想や応援、本当にありがとうございます。

 最後まで楽しんでいただけますように。

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