隠さないって、こんなに怖い
第十八話まで読みに来てくださってありがとうございます。
今回は、“隠すこと”と“隠せなくなること”の間にある回です。
付き合う前の二人は、感情を知られるのが怖かった。
でも付き合った今は、“隠し続けること”の方が少しずつ苦しくなってきています。
特にレイは、かなりその状態です。
好きな人を好きって言えない。
幸せなのに、なかったことみたいに振る舞う。
それって思ったより寂しい。
今回のテーマは、
「恋は、隠しているだけでも溢れてしまう」です。
それでは第十八話、どうぞ。
『最近、隠さなくなったよね』
そのコメントを見た瞬間。
私はマグカップを持つ手を止めた。
配信前の控室。
隣ではレイがスマホを見ながら笑っている。
「何笑ってるの」
「“最近のレイミオ、付き合ってからの空気なんだよな”って書かれてる」
「っ……!」
やめてほしい。
心臓に悪い。
「でも当たってる」
「レイ!!」
レイは悪びれもなく笑う。
最近、本当に隠す気がない。
いや。
たぶん隠せなくなってる。
◇
『こんばんは〜!』
配信開始。
今日もコメント欄は早い。
『今日も彼女いる?』
『レイミオ助かる』
『付き合った?』
私は見なかったことにした。
無理だから。
「今日は雑談しながら作業します」
レイが落ち着いた声で進行する。
私は隣で資料を整理しながら、できるだけ普通を装った。
すると。
『二人って今幸せ?』
そのコメントが流れた瞬間。
空気が少し止まる。
「え」
思わず声が漏れる。
レイがちらっとこちらを見る。
その目が優しい。
「……どう?」
なんで振るの。
最近ほんとずるい。
「……知らない」
『出た』
『照れてる』
『幸せそうで何より』
コメント欄が流れる。
私は視線を逸らした。
でも。
レイが静かに笑う。
「私は幸せ」
「っ……!」
心臓が跳ねる。
コメント欄、大爆発。
『言ったーーー!!』
『本物じゃん』
『尊死』
無理。
もう配信にならない。
◇
配信後。
私は事務所のソファへ倒れ込んでいた。
「……最近のレイ強すぎる」
「そう?」
「絶対わざとでしょ」
レイは少し考える。
「……前までは、我慢してたから」
胸が少し痛くなる。
「ミオが怖がってたの知ってたし」
「……」
「でも今は、少しくらい伝えてもいいかなって」
その声は静かだった。
私はゆっくり顔を上げる。
「……レイ」
「なに」
「もしさ」
喉が少しだけ震える。
「いつか、本当にバレたらどうする?」
沈黙。
でもレイは、迷わなかった。
「別にいい」
「え」
「怖くないわけじゃないけど」
レイは少しだけ笑う。
「ミオを隠してる方が、最近つらい」
胸がぎゅっとなる。
そんなこと言われたら。
もう、逃げられない。
「……私まだちょっと怖い」
「うん」
「でも」
私は小さく息を吐く。
「レイの恋人なの、嫌じゃない」
一瞬、静寂。
レイが少しだけ目を見開く。
そして。
「今キスしていい?」
「思考が早い!!」
レイが声を出して笑った。
その笑顔を見ながら。
私は初めて。
“隠さない未来”を少しだけ想像してしまった。
第十八話を読んでくださってありがとうございました。
今回はかなり、“恋人としての空気”が完成してきた回でした。
特にレイの
「ミオを隠してる方が、最近つらい」
は、今の二人を象徴する言葉だったと思います。
好きになった頃は、“近づくこと”が怖かった。
でも今は、“離したことにする”方が苦しい。
関係がちゃんと変わってきています。
そしてミオも、
「レイの恋人なの、嫌じゃない」
と、かなり素直な言葉を言えるようになってきました。
最初の頃を考えると、本当に大きな変化です。
あとレイ、最近キスしたがりすぎです。
恋人になった反動がすごい。
物語も残りあと少し。
ここから二人は、“配信者としての関係”と“恋人としての関係”に、最後の答えを出していきます。
感想やブックマーク、本当に励みになっています。
「ここ好きだった!」や、お気に入りの台詞などあれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
ではまた次回。




