キスしたあと、配信どころじゃなかった
第十七話まで読みに来てくださってありがとうございます。
今回はついに、“初キス後”の回です。
ただ、この作品の二人は大人っぽく余裕のある恋愛をするタイプではありません。
なので今回かなり、
「好きな人と付き合った直後の情緒」
が出ています。
特にミオは、今まで抑えていた分、恋人になった瞬間すべての破壊力を真正面から受けています。
そしてレイは、幸せすぎて少し壊れています。
今回のテーマは、
「恋人になったあと、好きはむしろ増えていく」です。
それでは第十七話、どうぞ。
「……五秒経ったけど」
レイの声が近い。
私はソファの端で顔を覆ったまま固まっていた。
「無理」
「まだ?」
「まだ」
「かわいい」
「うるさい」
心臓がおかしい。
なんでこんなに緊張するの。
付き合ったのに。
いや、付き合ったからか。
「ミオ」
レイが少しだけ笑う。
「逃げる?」
「……逃げない」
その返事をした瞬間、自分で顔が熱くなる。
レイが静かに近づく気配。
逃げられる距離。
でも。
私は動かなかった。
「ほんとにするよ」
「確認多い……」
「大事だから」
その声が優しくて、ずるい。
私は小さく息を吐く。
「……うん」
次の瞬間。
柔らかい感触が、そっと触れた。
一瞬だけ。
本当に、一瞬。
なのに。
頭が真っ白になる。
「……………………」
「ミオ?」
「待って」
「うん」
「今たぶん死んだ」
レイが吹き出した。
「大丈夫、生きてる」
「無理、心臓うるさい」
「私も」
その声が少し掠れていて。
私は思わず顔を上げる。
レイの耳が、少し赤かった。
「……レイも緊張してたの」
「めちゃくちゃしてた」
「嘘だ」
「ほんと」
レイが困ったみたいに笑う。
「好きな子との初キスだし」
「っ……!」
もうだめ。
この人、付き合ってから破壊力上がってる。
◇
そして問題は。
その二時間後に、配信があることだった。
『こんばんは〜!』
絶対無理。
私は開始五分で悟った。
『今日ミオ静かじゃない?』
『顔赤い』
『レイ機嫌良すぎる』
全部バレてる。
怖い。
「ミオ、コメント読んでない」
「え、あ、ごめ」
集中できない。
だってさっきキスした。
しかもレイ、普通に隣にいる。
近い。
いい匂いする。
無理。
『何かあった?』
『絶対あった』
『ニヤニヤ止まらん』
その時。
レイが突然こちらを見た。
「ミオ」
「な、なに」
「かわいい」
「は!?」
一瞬、空気が止まる。
コメント欄大爆発。
『!?!?!?』
『言った』
『配信中です』
『糖度で死ぬ』
「ちょ、レイ!!」
「本当のことじゃん」
「今言う!?」
レイが楽しそうに笑う。
絶対分かってやってる。
でも。
そんなレイを見てると、私まで笑いそうになる。
『ミオちゃん嬉しそう』
『顔隠してるw』
『もう隠さなくていいよ』
隠せるわけない。
こんなの。
好きな人にキスされた直後に平然としてられる人の方がおかしい。
◇
配信終了後。
「今日めちゃくちゃだった……」
私は机へ突っ伏した。
レイは隣で笑っている。
「楽しかった」
「私は心臓止まるかと思った」
「でもミオ、最後ちょっと嬉しそうだった」
「……知らない」
レイが小さく笑う。
そして。
「もう一回する?」
「は!?」
「キス」
「軽く言うな!」
「だって恋人だし」
その言葉だけで、また顔が熱くなる。
レイはそんな私を見て、優しく目を細めた。
「……好き」
ぽつりと落ちた声。
あまりにも自然で。
私は数秒、何も言えなかった。
「……っ」
「返事は?」
「……私も」
レイが笑う。
その笑顔を見た瞬間。
ああ、この人を好きになってよかったって。
初めてちゃんと思った。
第十七話を読んでくださってありがとうございました。
ついにキスしました。
しかもこの二人らしく、甘いのにめちゃくちゃ不器用です。
特に今回好きなのは、
「今たぶん死んだ」
と
「好きな子との初キスだし」
の流れです。
レイ、かなり余裕ありそうに見えて、実はちゃんと一緒に緊張しています。
そして今回から少しずつ、“恋人としての空気”が配信にも漏れ始めました。
今までは“営業っぽい距離感”だったものが、今後は完全に“本物の恋人の空気”になっていきます。
コメント欄、たぶんもう全部気づいてます。
あと、
「好き」
を自然に言えるようになったレイ、かなり強いです。
ミオの心臓はしばらく持たないと思います。
次回、二人の関係はさらに外側へ広がっていきます。
ではまた次回。




