“好き”って、言わせてよ
第十五話まで読みに来てくださってありがとうございます。
今回は、ずっと積み重ねてきた感情がようやく言葉になる回です。
この作品の二人は、
「好き」
を簡単には言えませんでした。
営業だったから。
壊れるのが怖かったから。
今の距離が大切だったから。
でも感情って、不思議と“言わないまま”でも大きくなってしまうんですよね。
今回のテーマは、
「答えは、言葉になる前からもう決まっている」です。
それでは第十五話、どうぞ。
最近、レイの距離が近い。
いや、前から近かった。
でも今は違う。
前みたいな“営業の近さ”じゃない。
逃がさないみたいな近さ。
しかも本人にその自覚がある。
たちが悪い。
◇
『今日の配信なんか甘くない?』
『空気やば』
『もう告白しろ』
コメント欄が今日もうるさい。
私はゲーム画面を見ながら、必死に平静を装っていた。
無理だけど。
「ミオ、回復」
「え、あ、ごめ」
「集中して?」
「レイのせいで無理なんだけど」
一瞬、沈黙。
そして。
『!?!?!?』
『今のやば』
『無意識発言』
『ごちそうさま』
「……っ」
やってしまった。
私は慌ててマイクを伏せる。
「最悪……」
隣でレイが肩を震わせていた。
「笑うな!」
「だって、かわいすぎて」
「うるさい!」
コメント欄が完全に祭りだった。
◇
配信終了後。
私は逃げるように立ち上がる。
「帰る!」
「待って」
レイに腕を掴まれた。
心臓が跳ねる。
「……なに」
「話したい」
「今!?」
「今」
逃げられない声だった。
◇
事務所の屋上。
夜風が冷たい。
街の光が遠くに見える。
「……で、何」
私は手すりにもたれながら聞く。
レイは少しだけ黙っていた。
珍しい。
いつもならもっと余裕そうなのに。
「ミオさ」
「うん」
「まだ怖い?」
その質問だけで、胸が痛くなる。
私は小さく息を吐いた。
「……怖いよ」
「そっか」
「だって」
言葉が詰まる。
「もし付き合って、終わったらどうするの」
配信も。
活動も。
今の関係も。
全部壊れそうで。
レイは静かに聞いていた。
否定しない。
笑わない。
ちゃんと待ってくれる。
「……でも」
私は視線を落とす。
「レイが誰かのとこ行く想像の方が、もっと嫌だった」
一瞬、風が吹く。
沈黙。
そして。
レイが、少しだけ困ったように笑った。
「それもう答えじゃない?」
「うるさい」
「ミオ」
名前を呼ばれる。
優しい声で。
「私、ずっと待ってるけど」
「……」
「そろそろ限界かも」
心臓が跳ねる。
レイが一歩近づく。
逃げられない距離。
「好きって、言わせてよ」
その声は、少し震えていた。
初めて見る顔だった。
余裕のないレイ。
苦しそうで。
でも真っ直ぐで。
私は息を呑む。
「……レイ」
「うん」
「私」
喉が熱い。
怖い。
でも。
この人から逃げたくない。
「私も、多分」
レイの目が揺れる。
「レイのこと、好き」
世界が静かになる。
数秒。
本当に数秒だけ、レイは動かなかった。
そして。
「……っ、無理」
「え」
「今かわいすぎる」
「は!?」
次の瞬間。
私は強く抱きしめられていた。
「ちょ、レイ、苦し……!」
「ごめん無理。限界だった」
声が少し震えている。
本当に。
本当に嬉しそうだった。
私はその温度の中で、小さく目を閉じる。
たぶん。
もうとっくに、答えは決まっていた。
第十五話を読んでくださってありがとうございました。
ついに言いました。
ミオ、
「レイのこと、好き」
認めました。
ここまで長かったです。
でも個人的には、この二人は“付き合う瞬間”より、“そこへ辿り着くまでの揺れ”が大事な関係だったと思っています。
だから今回の告白も、
勢いではなく、
「怖いけど、それでも離れたくない」
の先にある答えとして書きたかった回でした。
そして今回のレイ、完全に限界突破してました。
抱きしめるまでずっと耐えてたので、むしろよく今まで我慢したなレベルです。
あと、
「好きって、言わせてよ」
はかなりお気に入りの台詞です。
“言ってほしい”じゃなく、“言わせてよ”。
待っていた時間の長さが少し滲む言葉になっていたら嬉しいです。
ここから二人は、“営業だった関係”ではなく、“恋人になった関係”を始めていきます。
でももちろん、平穏には進みません。
ではまた次回。




