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百合営業のはずだった  作者: 星恋 hosiko


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14/20

はじめて、嫉妬じゃなくて不安だった

第十四話まで読みに来てくださってありがとうございます。


 今回は、“嫉妬”から少し変わった感情を書く回でした。


 今までのミオは、

「取られたくない」

 より、

「近づきすぎるのが怖い」

 という感情が強かった子です。


 でも今回は初めて、

“離れていくかもしれない不安”

 を自覚し始めます。


 それはたぶん、相手をちゃんと特別だと思い始めた証拠です。


 そして今回のレイは、かなり“迎えに行く側”の人になっています。


 今回のテーマは、

「好きになると、失う想像まで始まってしまう」です。


 それでは第十四話、どうぞ。

 「ねえミオ、今日のコラボ相手知ってる?」


 リンがスマホを見せてくる。


 私は何気なく画面を見て。


 固まった。


【超人気配信者・黒瀬アオ × 雨宮レイ コラボ決定!】


「……聞いてない」


「レイさん言ってなかったんだ」


 胸がざわつく。


 嫌な感じ。


 別にコラボくらい普通なのに。


 でも。


 黒瀬アオ。


 登録者三百万人超えの大型配信者。


 距離感近め。

 人懐っこい。

 しかも。


『レイちゃん前から好きだったんだよね〜』


 過去の切り抜きで、そんな発言までしていた。


 最悪。


     ◇


 「ミオ?」


 控室。


 レイがこちらを見る。


「どうしたの」


「……別に」


「嘘」


 最近、本当にすぐ見抜かれる。


「今日のコラボのこと?」


「……」


「怒ってる?」


「怒ってない」


「じゃあ不安?」


 その言葉に、心臓が跳ねた。


 不安。


 私は少し黙る。


 そして。


「……分かんない」


 またそれ。


 でも今回は、本当に少し違った。


 嫉妬だけじゃない。


 もっと静かで、嫌な感じ。


「ミオ」


 レイが近づく。


「大丈夫だよ」


「何が」


「私、ちゃんと帰ってくるから」


「……何それ」


 恋人みたいな言い方。


 そのくせ、まだ恋人じゃない。


 曖昧で。

 近くて。

 苦しい。


     ◇


 夜。


 コラボ配信。


 私は家でそれを見ていた。


 見なきゃよかった。


『レイちゃん今日かわいくない?』


『アオくん距離近!』

『お似合いじゃん』


 コメント欄がうるさい。


 黒瀬アオは、確かに話しやすそうな人だった。


 配信も上手い。


 空気作るのも上手い。


 そして。


『レイちゃんって、好きな人いるの?』


 その質問に、私は息を止めた。


 レイは少しだけ笑う。


『いるかも』


 胸が苦しくなる。


『え、誰誰!?』


『秘密』


 コメント欄が盛り上がる。


 私はスマホを伏せた。


 見てられなかった。


 苦しい。


 なんで。


 なんでこんなに嫌なんだろう。


 その時。


 スマホが震えた。


 レイから。


『配信終わった』


 私は少しだけ迷って。


『おつかれ』


 だけ返した。


 数秒後。


『今から会える?』


 胸が跳ねる。


     ◇


 夜の公園。


 人は少ない。


 レイはマスク姿のまま、ベンチへ座った。


「……寒」


「呼び出したのレイでしょ」


「でも来てくれた」


 その声が少し嬉しそうで、余計にずるい。


 沈黙。


 冬の空気。


 白い息。


「ミオ」


「なに」


「今日、嫌だった?」


 私は答えられなかった。


 でも。


 答えなくても、たぶん顔に出てた。


 レイが少し困ったように笑う。


「ごめん」


「……なんで謝るの」


「不安にさせたなら」


 その言葉で、胸がきゅっとなる。


 私は俯いた。


「……嫉妬とかじゃない」


「うん」


「ただ」


 喉が苦しい。


「レイが、誰かのところ行っちゃう気がして」


 一瞬、静寂。


 言ってしまった。


 終わった。


 顔を上げられない。


 でも次の瞬間。


 レイの手が、そっと私の指先に触れた。


「行かないよ」


 優しい声。


 まっすぐな声。


「だって、行きたい場所もう決まってるから」


「……え」


 レイは少しだけ笑う。


 そして。


「ミオの隣がいい」


 その言葉で。


 胸の奥にあった不安が、少しだけ溶けた気がした。

 第十四話を読んでくださってありがとうございました。


 今回はかなり静かに、でも大きく関係が進んだ回でした。


 特にミオの

「レイが、誰かのところ行っちゃう気がして」

 は、ほぼ無意識の本音です。


 ここまで来るともう、“特別”はかなり明確になっています。


 そしてレイの

「ミオの隣がいい」

 は、かなりストレートな告白に近い言葉でした。


 でも面白いのは、この二人まだ正式には付き合っていないところです。


 好きはもう溢れてる。

 でも最後の一歩だけ、お互い少し怖い。


 今の二人は、まさにその境界線に立っています。


 あと黒瀬アオ、完全に当て馬ポジションでした。

 でも彼のおかげで、ミオが自分の不安を言葉にできたのでかなり重要人物です。


 次回、二人の関係はさらに決定的な方向へ動きます。


 ではまた次回。

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