“恋人ですか?”に答えられなかった
第十三話まで読みに来てくださってありがとうございます。
今回は、“周りから見た二人”が強く描かれる回です。
本人たちはまだ曖昧なままなのに、周囲だけどんどん確信に近づいていく。
それって少し怖くて、でも逃げきれない感覚があります。
そして今回ついに、
「恋人なんですか?」
という、真正面の質問が飛んできます。
この物語、ここまでずっと“言葉にできない関係”を書いてきました。
だからこそ、答えを求められる瞬間はかなり特別です。
今回のテーマは、
「否定できない気持ちは、もう半分答えになっている」です。
それでは第十三話、どうぞ。
「……なんでこんな人いるの」
私は帽子を深く被りながら呟いた。
目の前には長蛇の列。
今日から始まる『Lily Crown コラボカフェ』初日。
開店前だというのに、店の外まで人が並んでいた。
『レイミオやばい』
『現地来た!』
『パネル距離近すぎて死ぬ』
SNSも朝から騒がしい。
ちなみに店内には。
“秘密の放課後デート”をテーマにした等身大パネルが置かれている。
しかも。
肩が触れてる。
終わり。
「企業、絶対楽しんでるよね」
「楽しんでるね」
レイは平然としていた。
なんでそんな冷静なの。
「ミオ、顔隠しすぎ」
「無理だから!」
今日、私たちはサプライズ来店をする予定だった。
もちろん変装あり。
でも。
ファン、こういう時の観察力怖い。
◇
「かわい〜!」
店内へ入った瞬間、リンが手を振ってきた。
今回のイベント、リンもゲスト参加している。
「二人の限定ドリンクめっちゃ売れてるよ」
「どれ」
「これ」
メニュー表。
【レイ→ミオ “言えない本音”ストロベリーラテ】
【ミオ→レイ “たぶん好き”ホワイトモカ】
「なんで商品名これなの!?」
私は頭を抱えた。
レイは横で笑っている。
「解像度高いね」
「他人事!?」
その時。
「……あれ?」
近くの客がこちらを見る。
やばい。
「レイミオ……?」
終わった。
次の瞬間。
「えっ!? 本人!?」
店内がざわつく。
無理無理無理。
私は固まった。
でもレイは、すっと笑顔を作る。
「今日は来てくれてありがとうございます」
営業スマイル。
完璧な声。
さすがプロ。
なのに。
「二人って本当に仲良いですよね!」
ファンの一言で、空気が少し変わった。
「見てると本物っぽいっていうか……」
胸がざわつく。
レイがちらっとこちらを見る。
「……どう思います?」
え。
なんで振るの。
「えっ、えっと」
店内の視線が集まる。
無理。
心臓痛い。
「恋人とかなんですか?」
静かになる。
時間が止まったみたいだった。
答えられない。
だって。
まだ、ちゃんと言葉にしてない。
でも。
否定したくもない。
「……っ」
その時。
レイが一歩前へ出た。
「秘密です」
柔らかい声だった。
ファンがきゃーっと盛り上がる。
空気が戻る。
私は小さく息を吐いた。
助かった。
……はずなのに。
◇
イベント後。
控室。
「……ごめん」
私は小さく言った。
「何が」
「答えられなかった」
レイは少し黙る。
責められると思った。
でも。
「うれしかった」
「……え?」
「否定しなかったから」
胸が苦しくなる。
「ミオって、嫌ならちゃんと線引くでしょ」
「……」
「でも今日は、迷ってくれた」
レイが少し笑う。
優しい顔だった。
「だから、ちょっと期待した」
その言葉だけで、また心臓が壊れそうになる。
私は視線を落とす。
「……レイ」
「なに」
「もし」
喉が震える。
「もし本当に付き合ったら」
「うん」
「今みたいに、いられるのかな」
レイは少しだけ目を細めた。
「もっと近くなると思う」
「それは困る」
「じゃあやめとく?」
その聞き方がずるい。
私は小さく息を吐いた。
「……やめなくていい」
一瞬、静寂。
そして。
レイが、どうしようもなく嬉しそうに笑った。
第十三話を読んでくださってありがとうございました。
今回はかなり、“告白直前感”の強い回でした。
特にミオの
「やめなくていい」
は、かなり大きい言葉です。
まだ正式に付き合ってはいない。
でも、“この関係を続けたい”という意思だけは、もうはっきりしている。
それをレイはちゃんと受け取っています。
そして今回のレイの
「秘密です」
も個人的にかなり好きです。
否定しない。
でも急かさない。
あの返答には、ミオを守る意味も含まれていました。
あとコラボカフェ運営、だいぶ楽しんでます。
商品名の圧が強い。
ここから物語は、いよいよ“最後の壁”へ入っていきます。
次回、二人の関係に少し大きな変化が起きます。
ではまた次回。




