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【完結】鏡合わせのミロワール  作者: 知己
第10章 グロンダンの死闘

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第75話 三人目

 ————一方、街の外のミロワとリンファは、最強の『鏡人(ミロワール)』の一角・ルゥインと彼女を守護する白虎型『晄石獣(ジェムート)』のパイフゥと激闘を繰り広げていた。

 

 

 

「————『霧氷穿礫(ムヒョウセンレキ)』……!」

 

 『水天(スイテン)』の力を宿したミロワが氷の薙刀を振るうと、大気中の水分が無数の(つぶて)となって標的を貫かんと撃ち出された。

 

 銃弾の如き速度で飛来する氷の礫をパイフゥは類稀(たぐいまれ)なる反射神経と運動能力で躱し切り、ルゥインは強靭な指力で発射された指弾を跳弾のように打ち当てて回避する。

 

「…………!」

 

 ミロワの礫を難なく外した一人と一匹は瞬時に間合いを詰め、各々の得物を解き放った。

 

 全てを斬り裂く偃月刀と虎爪が青髪の乙女に食い込むと思われた寸前、横から突き出された青龍戟がガッシリと受け止めた。

 

「ウチを忘れんな、ルゥイン!」

「フン」

 

 リンファに攻撃を止められたルゥインは冷静に刃先を返して青龍戟を跳ね上げた。

 

「くっ……!」

「邪魔だ————!」

 

 返しのなぎ払いが無防備なリンファの腹部に襲い掛かる。両腕を跳ね上げられたリンファはバックステップを余儀なくされた。

 

 しかしルゥインはそれ以上リンファを追撃しようとはせず、再び相棒のパイフゥと共にミロワを攻め立てに戻った。

 

 その間に体勢を立て直したリンファはルゥインとパイフゥの様子に眉をひそめる。

 

(……ルゥインたちは私よりもミロワを優先して倒そうとしている……? どうして……?)

 

 脳内で生じた疑問に対して瞬時に回答が導き出される。

 

 リンファは()を握る力を強め、ギリギリと歯を食いしばった。

 

「…………ウチより、ミロワの方が美人で(つえ)えけえ力を合わせて先に倒しちゃろうって言うんかあッ‼︎」

 

 眉を吊り上げ眼を(いか)らせたリンファは怒号を上げて打ち掛かった。仲間のミロワすらも巻き込みかねない豪快すぎる一撃に、二人と一匹は同時に身を伏せてこれを躱した。

 

「ちょっ、リンファ⁉︎」

「ふざけんな! ウチの方が絶対に美人で強うてタスクに愛されとるんじゃ! 撤回せえッ‼︎」

「……一人で何を言っている」

 

 鬼の形相で繰り出されるリンファの連撃を的確に捌きながらルゥインがつぶやくが、リンファは青龍戟を振るう手を止めるどころかますます強める。

 

「ウチがお前を倒して証明しちゃる‼︎」

 

 当初の決意から目的が変わってしまっているような気がしないでもないが、負担の減ったミロワは改めて眼の前のパイフゥへ集中を向けた。

 

(この虎型『晄石獣(ジェムート)』も決して油断の出来ない相手だけれど、ルゥインに比べるとやはり一枚も二枚も落ちるわ。リンファがルゥインを抑えてくれている内に倒して二人で————⁉︎)

 

 一瞬で作戦を組み立てていたミロワは何かを感じ取った様子でパイフゥから距離を取った。

 

「リンファ、待って!」

「うるさいんじゃ! ルゥインはウチが倒すって言うとろうが‼︎」

「そうじゃないの! 新手の『鏡人(ミロワール)』よ‼︎」

「————⁉︎」

 

 その言葉にリンファの青龍戟がピタリと動きを止め、ルゥインはわずかに口の端を持ち上げた。

 

「なんじゃと……⁉︎」

「……この方向は————もう一人、『鏡人(ミロワール)』が海上から港へ向かっている……!」

「ホンマか、ルゥイン⁉︎」

 

 リンファに戟を突き出されたルゥインは腕を組んで冷たく答える。

 

「どうだかな。気になるのならば行って確認すればいい」

「お前……ッ!」

「行って、リンファ!」

「なんでなら! 行くんならお前が行け! 探知出来るんじゃろうが!」

 

 苛立ったリンファが声を荒げたが、ミロワは冷静に首を振った。

 

「……ダメよ。私が向かえば彼らもついて来て、おそらくルゥインは街の中にこの虎型『晄石獣(ジェムート)』を解き放つ……!」

「…………」

 

 ミロワの推測を聞いたルゥインは腕を組んだまま否定しない。

 

「じゃったら、ウチとお前の二人で港に行ったら————」

「————それもダメ……! その場合、三人目の『鏡人(ミロワール)』を抑える手が足りない……!」

「…………ッ‼︎」

 

 歯噛みするリンファに、黙って聞いていたルゥインが挑発するように話し掛ける。

 

「そういうことだ。お前が向かうと言うのなら私とパイフゥは追わんぞ」

「お前え……ッ‼︎」

「行って、リンファ……! あなたが戻って来てくれるまで私は持ち(こた)えてみせるから……!」

「————ミロワ……!」

 

 リンファはハッとした表情をミロワに向けた。

 

「私よりも強いあなたなら新手の『鏡人(ミロワール)』なんか一蹴して、すぐに加勢に戻って来てくれるわよね……⁉︎」

 

 ミロワが珍しく(あお)るような微笑みを浮かべると、つられるようにリンファも不敵な笑みを見せた。

 

「……誰に向かってモノを言うとるんじゃ。ポッと出の『鏡人(ミロワール)』なんか一瞬で片付けて、すぐに助けに戻って来ちゃるわ————それまでやられんな、ミロワ‼︎」

 

 言うなりリンファは『韋駄天(イダテン)』に勝るとも劣らぬ速さで港へと向かって行った。

 

 リンファが離脱したと同時にルゥインは組んでいた腕を離し、パイフゥは刃の如き鋭さの牙を剥き出しにする。

 

「……随分と甘く見られたものだな。アレが戻って来るまで生きていられるとでも……⁉︎」

「グルルゥゥゥッ!」

 

 ルゥインとパイフゥに囲まれたミロワは薙刀を構え直し答える。

 

「あなたたちこそ甘く見ないで欲しいものね。私の本気を見せてあげるわ……‼︎」

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