第97話 たった一つの策
〜〜〜〜〜 第11章のあらすじ 〜〜〜〜〜
ダチのシュウが怪我しちまってるから今回はこの俺・ヘイワン様があらすじを担当するぜ!
グロンダンとか言うきらびやかな街で因縁の『鏡人』たちを倒したお嬢とタスクだが、その代わりにミロワとシュウが大怪我を負っちまった……!
運良く二人を診てくれる医者夫婦を探し当てたお嬢たちだったが、一人で留守番をしてたタスクをジャンの奴をコピーした『鏡人』が襲撃する……!
動揺するタスクに追い打ちを掛けるみてえに姿を現したのは、ミロワたちを治療した医者夫婦。最初タスクはこの夫婦も『鏡人』と疑っていたが、妻の方はそれどころじゃねえ、人間を滅ぼそうと企んでる『地母神』そのものだった……‼︎
全ての人間を『鏡人』に写し替えるっつう『地母神』のヤベえ計画にミロワも『再教育』されちまって、お嬢たちは逃げることだけしか出来なかった……。
逃げた先で変態に磨きを掛けたジゼルと再会したお嬢たちは反撃の態勢を整えるためにとある山あいの町に向かうことになったが、そこに現れたのはジャンをコピーした『鏡人』。子供を使ってタスクを揺さぶるド汚ねえ奴だったが、そのピンチを救ったのは、奇跡的に生きてやがった本物のジャンだった……‼︎
ジャンとジゼルがまた仲間に加わったことで、お嬢たちにも勝ち筋が見えてきたかも————ん? ツユリとネージュが呼んでるから、俺ぁこの辺で失礼するぜ! じゃあな!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
新たに産み出された『鏡人』によって住民の写し替えが完了した町を後にしたタスクたちはヘイワンたちの待つ森へと戻っていた。
「————ええっ⁉︎ 姿が見えねえと思ってたら、ミロワちゃんがテルースに寝返っちまったって⁉︎」
取り戻したゼフィール号の脇で素っ頓狂な声を上げたジャンに、ヘイワンの毛並みを撫でていたリンファが眉を吊り上げる。
「タスクの話をよう聞いとらんかったんか! ミロワはウチらを騙しとったテルースから『再教育』とかいうのをされたんじゃ!」
「裏切ったんじゃねえってこと? じゃ、その『再教育』ってのは何よ?」
「そ、そりゃあ……」
ジャンの反撃を受けたリンファは返す言葉に詰まって、助けを求める視線を同じくツユリの背を撫でるタスクに向けた。
「……ミロワはテルースに洗脳されているのだと俺は解釈している」
「そんじゃテルースを倒しちまえば洗脳も解けるんじゃね⁉︎ せっかく向こうさんから姿を現してくれたんだ。そうすりゃこれ以上、『鏡人』が産み出されることも無くなるし、一石二鳥ってヤツじゃん!」
「…………」
「…………」
まるで世紀の大発見をしたようなジャンに対してタスクとリンファの反応は薄い。首をひねったジャンにジゼルが補足する。
「確かに洗脳を施したテルースを倒せばミロワ嬢も元に戻るかも知れないね。しかし、そうなると別の大きな問題に行き当たる可能性が生まれる」
「相変わらず回りくどい言い方をしやがるハカセだな。なんだよ、その別の問題ってのは?」
「世界が終わるかも知れない」
「は?」
眉を歪めて訊き返したジャンにジゼルは簡潔に答えて見せる。
「言葉の通りだよ。世界の創造主である『地母神』が倒れれば、彼女が産み出した世界が共に崩壊しても不思議じゃない」
「…………‼︎ お……俺、やっぱり抜けさせてもらってもいいかな……」
「そうしたければ止めはしないが、何処に行こうと言うんだね? 今や世界中『鏡人』だらけだ。キミの望む安息の地などなかなか見つからないと思うが」
ジゼルの正論に捲し立てられたジャンは先ほどの様子とは打って変わってガックリと肩を落とした。
「……倒しちまったら世界が終わるなんて、詰んでんじゃねえかよ……! 俺ら、黙って『鏡人』になるしかねえのかよ……⁉︎」
「…………」
「…………」
ジャンの嘆きの声にこの場の誰もが言葉を返すことが出来ない。
————ただ一人を除いて。
「いや、策はある」
口を開いたタスクに皆の視線が集中した。
「ホントか、アニキ⁉︎」
「ああ。あれからずっと考えていたが、たった一つだけ妙案が浮かんだ」
「どんな策なんじゃ、タスク⁉︎」
先ほどまでの沈んだ表情を一変させたジャンとリンファが詰め寄るが、タスクはあくまでも冷静に答える。
「悪いが、今は言えない」
「なんでだよ⁉︎」
「なんでなん⁉︎」
「上手くいく保証など無い上に、その策を成功させるには期を待つ必要がある。時が満ちれば伝えよう」
そう言ったきりタスクは口を貝のように閉ざし、ジャンたちが何を訊いても反応しなくなってしまった。
◇
————漆を塗り重ねたような艶のある黒髪を携えた乙女は一羽のハヤブサへ小さく刻んだ肉片を丁寧に与えていた。
「……美味しい……? シュウ……」
「……ピィ……」
籠で設えられたベッドに横たわるシュウは小さく答えた後、意を決したように黒髪の乙女————ミロワへと鋭い眼光を向けた。
「ピピッ! ピィピ、ピィッ!」
何かを訴えるように矢継ぎ早に鳴いたシュウにミロワはどこか無機質な笑みを以て答える。
「分かるわ……。もっと欲しいのね、シュウ……」
「ピィッ⁉︎ ピッピ‼︎」
何度も首を振りながらシュウが否定するが、ミロワは気付く風もなく次の肉片を箸でつまみ上げる。
「そんなに急かさなくてもご飯は逃げないわ。いっぱい食べて元気になってね……」
「ピィィィ……ッ!」
まるで別人のように意思の疎通が叶わなくなった主人にシュウは悲しげに声を上げた。
「もう少しよ……。いま『母様』が歪んでしまった世界を正そうと私たちの『兄弟』を産み出してくれているの。皆が『母様』の子になれば、きっと全てが上手く行くわ……」
「…………ッ」
虚空を見つめてつぶやくミロワにシュウはついに口を閉ざした。




