40話 ゴブリンの巣、ジェネラル以上の可能性
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1月5日土曜日、今日も北に冒険者業です。今日こそ1時間程のところで森の中に入りましょう。昨日は街道沿いで出会ってしまったからな。
……今日はこっちから向こうに行く商人がいるのか。こういう場合はどうすればいいんだろう。待てばいいんだろうか。
他の冒険者は先に行っているな。先に行くのが正解なのかな? 解らんな。でも先人に習っておけば迷惑にはならんだろう。
護衛依頼が昨日のうちに出ていたんだろうか。見てなかったからな。……少なくとも2パーティーは雇わないと怖いよな。どっちとも結託した盗賊の可能性もあるが。
どちらにせよ、朝早くからご苦労様ですな。まだ朝の1時になってないぞ。うちも大概朝が早いんだよなあ。鍛冶も裁縫も忙しいらしいよ。多くの冒険者はもう少しのんびりしてるかな。
護衛依頼も一度は受けておいた方が良いのかなあ。でもなあ。あんまり次の町までだけの依頼は少ないだろうな。大体は遠くまで一括で依頼を受けることだろう。
それに向こうの町に行っても次の日は帰ってくるだけになるもんな。稼ぎが少なくなるだろうさ。それはそれで嫌だよな。もう少し奮発してくれないと。
普通の冒険者が一日に一体幾ら稼いでいるのかは解らんけどな。俺は稼げている方だと自負している。初日でも上出来の上出来だったらしいからな。
しかし、所詮ゴブリンである。ステータスの上がりは微々たるものだ。稼ぎは冒険者の方が流石にいいかなー、程度である。武器のランニングコストを考えるとトントンかなあ。
アリの巣の方がステータスの効率は圧倒的に良い。でも冒険者は今のステータスくらいでないとやる気にならないからなあ。そのうちアリの巣から帰ってこなくなるからまあ、今くらいいいだろう。
ハルバードも全金属の奴が大分手に馴染んで来た感じがある。冒険者業をし始めたときから全金属のハルバードを使っている。昨日はそのおかげで助かった所があるからな。トレントの木の柄では吹き飛ばすのは怖かっただろう。
さて、1時間くらい経ったかな。西か東かどうしようか。……昨日は西側に行ったから今回は東側に行ってみようか。集落があるといいんだけどな。
森に入ってから1時間後くらい、……小山があるんだけど。5mくらいの。なんだこれ? ……ああ、アリの巣かなあ。迷宮じゃなくてアントの巣。上に穴が開いていますよ。
大体3mくらいの直径が開いているのでアリの巣よりは狭いですが、まあ、入って討伐すればいいんですよね? 早速行きましょう。急勾配になっているわけでは無いので、入るのも楽ですね。
さてさて、アントは何処にいるんでしょうかね。……スキル暗視師が役に立ってます。暗いもんな。迷宮は若干明るいんだよな。暗視師を持っているから照明も要らないんだけど。
普通の探索者は明かりを持っているよ? 荷物持ちが明かりを持ったり、斥候が明かりを持ったりと色々だ。よくすれ違う度にぎょっとされたもんだ。相手からは明かりが無い所から人が出てくるんだもんな。
さて、第一戦闘部隊はゴブリンでした。……何故に? まあいいけど。3体ですね。さっくりと行きましょう。チャージからの連続突きでいっちょ上がりです。狭いからね。しょうがないね。
剥ぎ取りだけささっとしてしまいまして、なんでゴブリンなんだろうね? アントだとばかり思っていたんですが。ゴブリンの集落は穴の中にもあるのか?
まあ気にせず行きましょう。どれだけのゴブリンが居るかなあ。そして戦利品はあるかなあ。前回のゴブリンの集落には戦利品は無かったんだよな。まあ、有ったら有ったで問題な訳だが。誰かが負けたって事だからな。
それに魔道具の類は期待薄である。そんな高価なもの、冒険者が持っているかって話よ。持っていたら負けねえよ? それだけ稼いでいる証拠だ。奥へ奥へ進んでいくぞ。
30分ほど潜っていたでしょうか。ここが最後の部屋でした。今ゴブリンを8体潰した所です。30~40は居たんじゃ無いかな。全部ゴブリンでした。ハイゴブリン? 解らんかった。多分居たんでしょう。
基本は突きで違和感なく一撃でしたからね。でもゴブリンが穴を掘って巣にするなんて思いませんでしたね。アントの巣と思いましたよ。普通そう思うよなあ。
まあ、何のこともなく制圧出来ましたね。さて、帰るか。戦利品も無しだったし、こんなこともあるんでしょう。
久しぶりの外だな。明るい。……森の中だから程々なんだけどな。穴の中よりは明るい。これもキャンプしてたら戻ってくるゴブリンとかがいるんでしょうか?
ここもマーキングしておきましょう。そのうちまたゴブリンが住み着くでしょう。覚えておけば定期的に狩り場になる可能性もあるし、大体の位置は記録しました。地図士便利だよ?
さて、探索を再開しましょう。ゴブリンやーい、出ておいでー。お金になりに来なさいな。経験値が欲しいぞー。
そんな訳で、街道まで帰ってきました。成果は上々では無いでしょうか。多分70~80は狩ったと思います。巣があるかないかで大分成果が変わるなあ。今回も巣が有ったので上々と言ったことろだと思いますね。
しかし、今回は商人さんには見つかりませんでしたね。良いことです。出会うと面倒な事にしかならないのは前回と前々回で学びました。出来る限り出会いたくない。
ゆっくりと歩いて帰りましょう。今日の成果は昨日ほどじゃあ無いとは思いますね。でもどっちかって言うと1時間くらい奥で森の中に入った方がいいような気がします。同業者が居ない分稼げるでしょう。
何事も無く、門まで帰ってきまして、冒険者ギルドにやってきました。264番ですね。今日は商人さんに会いませんでした。良かった良かった。
成果もまあまあだと思うし、冒険者業も順調でしょう。……探索者の方が強くなれてるのは仕方ない。冒険がやりたかったんだから寄り道もいいと思います。
冒険者もギルド外にクランがあるんですよね。探索者もハンターも。父さんに聞いたところ、探索者のクランが一番大きいそうです。まあ、迷宮都市だし当然だよな。
レベルを上げるにしてもリスクを承知で下層に潜らないといけないもんな。上層でも経験値を得られる俺とは違うんだ。強欲はつくづく探索者に成れって職業だよな。
冒険者のクランもあるにはあるらしいよ。南側を拠点にしているクランがあるんだと。他の所の武器は作ってないから知らんらしい。多分どの方向にもあるんじゃないかと言っていた。
……雑魚狩りの為にクランなんて要るのか? オークはまあ解らんでもない。運ぶのに人手がいるんだろう。収納系統のスキル持ちばかりな訳無いもんな。
南にクランは必要なのか? 所詮ウルフやゴブリンやアントだろう? なんで必要なんだろうな。パーティーで十分だと思うんだよな。
北も同様だな。ゴブリンとアントだよ? それに森だよ? 人数が多くて何になるんだよな。邪魔なだけだと思うんだ。
東はなんとなくだが、解らんでもない。敵国人と会ったときに戦力が多い方が被害が減るだろう。互いに引けばいいのにな。戦うんだろう。ハンターなら逃げるんだろうけど。
「264番!」
おっと、呼ばれましたね。さて、今回の成果はどうだろうな。
「お願いします」
「確認します。――――――――78体分ですね。多いですね。集落でも見つけましたか?」
「巣を見つけました。そこに沢山いたので」
「……巣ですか?」
「そうですが?」
「それはアントの巣で間違いないですか?」
「ゴブリンは巣を作らないんですか?」
「作りませんね。作るのはアントです。小山が有って、そこから地下に行くものじゃ無かったですか?」
「そうですそうです。だから巣と表現しました」
「それはアントの巣ですね。そうですか。ゴブリンがそこに居ましたか。リーダーと戦いませんでしたか?」
「すみません。全部一撃だったので、リーダーが居たのか解りません」
「推定リーダーを……一撃ですか。凄い職業を頂いたんですね。初心者冒険者の方ですよね? 余り見た覚えが無いのでそうだと思うのですが」
「そうですね。冒険者になってから1週間も経ってないですね。……リーダーって苦戦するもんなんですか?」
「初心者冒険者でもやれなくはないですが、数の利を使って戦うので、……ソロですか?」
「ソロですね」
「じゃあやっぱり凄い職業を頂いたんですよ。余り無理をしない様にレベルを上げることをお勧めしますよ。リーダーを一撃で倒せる冒険者がどれだけいるのか」
「……ハイアントとどっちが強いですか?」
「ハイアントですか? そうですね。個の力ではハイアントの方が上だと言われていますが、ゴブリンリーダーは群れで戦いますから、ゴブリンリーダーの方が厄介だと思いますよ」
「アリの巣の経験者なので問題なく勝てるんだと思いますよ」
「ああ、それで。……それでも一撃は凄いですよ。職業を大切に育ててくださいね」
「ありがとうございます」
「……あ、それよりも巣の件です。ゴブリンがアントの巣を乗っ取っていたんですよね?」
「状況証拠的にはまあ、そうだと思います」
「それなら今年はゴブリンの年なのかもしれません。一応注意喚起を行います」
「……なんですか? ゴブリンの年?」
「はい。北の森ではゴブリンとアントが勢力を拡大しているんです。そこはご存じですか?」
「ゴブリンとアントが出てくるのは承知してますが、勢力を拡大とは?」
「そのままの意味です。冒険者が狩るので一概には言えませんが、放っておけばもの凄い数に増えるのがゴブリンとアントなんです。そして偶にその均衡が崩れる時があるんです。今回の場合はゴブリンの繁殖力がアントの繁殖力を上回ってしまったんだと思います」
「アントが増えるにはクイーンアントが居ないといけないんじゃ無いんですか?」
「そうですね。アントの年になるときは必ずクイーンアントが誕生してます。……魔物は魔力だまりから産まれるという説を知りませんか?」
「あー、アントが沢山いるとアントの魔力が集まってアントが産まれるってあの説ですよね?」
「そうです。その説です。その説で誕生するクイーンアントがいるんじゃないかというのがアントの年です。普通はアントの方が強いんですが、ゴブリンリーダーが増えてくるとアントが負け始めるんです」
「成る程、普段は繁殖力の高いゴブリンと個の力が強いアントの勢力拡大は拮抗していると言うんですね」
「そうです。それがアントが巣を追われるほどに負けている。ゴブリンジェネラル以上の個体が誕生している可能性が高いんです」
「たまたま産まれたリーダーが巣を乗っ取ったという可能性はないんですか?」
「無くはないですが、可能性を放置して冒険者を死なせることをしてはギルドの名折れです。可能性があるのならきちんと通達しないといけません」
「成る程。そう言う事なら了解しました。複数のリーダーがいる可能性とジェネラルがいる可能性があるという事なんですね?」
「はい。ジェネラルの群れの規模は200を優に超えてきます。注意してください」
「解りました。きちんと殲滅します」
「違います! 逃げてください。ソロで戦う数じゃ無いんです。パーティーを複数集めるか、クランに強力を仰ぐなりしてください」
「いえ、大丈夫だと思いますよ。ジェネラルは一撃かは解りませんが、リーダーくらいなら一撃で倒せますので」
「いえ外皮が、HPが持ちませんから。タコ殴りにされるんですよ。痛くないのは最初だけです。そのうちHPが無くなって直接攻撃を受けることになります。幾ら棒くらいしか武器にしないゴブリンでもHPが無くなった状態で攻撃を受け続けると死にますよ?」
「あー、そう言う問題があったか。解りました。気を付けて殲滅します」
「解っていません! 注意はしましたからね! 絶対に無茶は駄目ですからね」
「厳しく止めないんですね」
「そこは自己責任の冒険者です。聞き分けが悪い冒険者には痛い目を、死線を潜り抜けてみて貰わないと解らない人も居ますから、運悪く死ぬときは残念ながらあるんですよ」
「まあ、無茶はしません。安全に殲滅しますから」
「……安全に殲滅出来たら苦労はしないんですが?」
「それよりも注意喚起だけお願いしますね。あと、精算をお願いします」
「……解りました。少し待っていてください」
なーるほど。クランが必要な理由はジェネラルやキングが出た時用の数の暴力の為ですか。クイーンアントの方がめんどくさそうだけどな。ジェネラルか、狙うのもいいな。
「精算してきました。くれぐれも安全第一でお願いしますよ」
「了解です」
「……解っていませんね。――――――285番!」
いえいえ、解っていますとも。HPが全損する可能性があるだけでワクワクするじゃないですか。5桁もあるんですから少々は削って貰わないと。
しかし、リーダーが居たのか。ならハイゴブリンも居たんだよな。解らんかったなあ。どいつがリーダーだったんだろう。
とりあえず一撃だという事は解りました。……ジェネラルも一撃じゃないかなあ。STRが標準の人とは少し違うからな。ちょっと数値がバグってますので。
取り合えず今後はジェネラル以上を探すとしましょう。見つかるといいなあ。ゴブリンの年か。個人的にはアントの年の方が嬉しかったな。まあどっちでもいいですが。




