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処刑された令嬢、十年前に戻ったので今度は誰も信じません  作者: ななほし


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第34話 もう一人のアリア

銀髪の少女。


 彼女は。


 幼い頃の私と同じ顔をしていた。


「……どういうこと?」


 私は目の前の光景を見つめる。


 少女は幼い私の手を握っている。


『あなたは忘れてしまう』


 少女が言う。


『だから、私が覚えている』


 幼い私は不思議そうに首を傾げる。


『何を?』


『あなたが本当に望んだ未来を』


 少女は微笑む。


『あなたが大きくなったら、私はあなたを迎えに行く』


 そして。


 映像が途切れた。


「……あの少女は誰?」


 私は振り返る。


 白髪の男は黙っている。


 父も。


 ルシアンも。


 エレナさえも。


 誰も答えない。


「誰なの?」


 もう一度尋ねた。


 すると。


 エレナが震える声で言った。


「……アリア」


「何?」


「あなたの……姉」


「……え?」


 頭が真っ白になる。


「私に……姉がいるの?」


 エレナは頷く。


「正確には」


 彼女は言葉を選ぶように続けた。


「あなたより先に生まれた、“もう一人のアリア”」


「……」


 父が目を閉じる。


「彼女は王冠によって生み出された」


「生み出された?」


「お前の記憶と魔力を分けて作った存在だ」


 私は少女の顔を思い出す。


「じゃあ……人間じゃないの?」


「違う」


 父は首を振る。


「お前と同じ人間だ」


 白髪の男が笑った。


「そして私が最も欲しかったものだ」


 私は睨みつける。


「どういう意味?」


「王冠を完成させるには、お前一人では足りなかった」


 男はエレナを見る。


「銀の鍵と黒の鍵」


 そして。


「最後に必要だったのが、“二人目のアリア”だ」


「……」


 エレナが青ざめる。


「だから……私たちは」


「そう」


 白髪の男が笑う。


「お前たち三人は、最初から王冠のために作られた」


「違う!」


 エレナが叫ぶ。


「お母様はそんなこと望んでいなかった!」


「だが、結果としてそうなった」


 男が手を上げる。


 黒い魔力が集まる。


「やめろ!」


 レオンハルトが飛び出す。


 だが。


 黒い壁に弾き飛ばされた。


「殿下!」


 私は駆け寄ろうとする。


 しかし。


 銀髪の少女の声が聞こえた。


『アリア』


「……!」


『まだ、戦ってはいけない』


「どこにいるの?」


『あなたの中』


 私は胸に手を当てる。


 銀色の光が鼓動する。


『私はあなたの失われた記憶』


『そして、あなたが選ばなかった未来』


「……」


『だから』


 少女が囁く。


『あなたが私を受け入れれば――』


 銀色の光が強くなる。


『王冠を壊せる』


「……本当に?」


『でも』


 少女の声が悲しくなる。


『その代わり、私も消える』


 私は息を止めた。


「嫌」


『アリア』


「嫌だよ」


 私は胸元を握る。


「あなたも私なら――」


 涙が落ちる。


「消したくない」


 すると。


 少女が初めて笑った。


『やっぱり』


「……?」


『あなたは優しいね』


 銀色の光が私を包む。


 その瞬間。


 少女が私の身体へ溶け込んだ。


「……!」


 無数の記憶が流れ込む。


 母の笑顔。


 エレナとの幼い日々。


 レオンハルトと初めて会った日。


 そして。


 一度目の人生で。


 レオンハルトが私を守っていた記憶。


 私は泣きながら笑った。


「……全部、覚えてる」


 白髪の男が叫ぶ。


「やめろ!」


 王冠がひび割れる。


 ――パキッ。


 そして。


 黒い王冠の中心から。


 一滴の血が落ちた。


 その血を見た瞬間。


 父が顔色を変えた。


「……まさか」


「どうしたの?」


「王冠の中に封じられていたのは――」



 父が震える。


「俺たちの血じゃない」


「……?」


「これは――」


 父が血を見つめる。


「お前の母親の血だ」


 その瞬間。


 地下聖堂の奥で。


 誰かが笑った。


「ようやく気づいたか」


 聞き覚えのある声。


 私は振り返る。


 そこに立っていたのは――。


 死んだはずの母だった。

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