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処刑された令嬢、十年前に戻ったので今度は誰も信じません  作者: ななほし


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第31話 禁じられた父の名

「あなたのお父様は――」


 エレナの声が震えた。


 地下聖堂にいた全員が、彼女の次の言葉を待っている。


「……初代国王の血を継ぐ者」


 私は眉を寄せた。


「それだけ?」


「違う」


 エレナが首を横に振る。


「もっと正確に言うなら……」


 彼女は唇を噛んだ。


「あなたのお父様は、現在の王ではない」


「……」


「そして、私たちが知っている王族でもない」


 レオンハルトが口を開いた。


「では誰だ?」


 エレナは答えなかった。


 代わりに、私の父――ベルク公爵が持っていた古い指輪を取り出した。


「これを見て」


 銀色の指輪。


 中央には、王家の紋章とは少し違う紋章が刻まれている。


 翼を広げた白い獣。


「これは……?」


「王家ができる前の紋章」


 ルシアンが言った。


「古代王家――ルーゼン王統の紋章だ」


「ルーゼン……」


 私の姓。


 アリア・フォン・ルーゼン。


 母の名。


 そして。


 私の血に流れている王家の名前。


 私は指輪に触れた。


 その瞬間。


 ――頭の中に映像が流れ込んだ。


 母。


 そして、一人の男。


 黒髪。


 銀色の瞳。


 私の母と同じ年頃に見える。


『あなたを巻き込みたくない』


 母が言う。


『それでも私は、お前と娘を守る』


 男が答える。


『アリアが生まれた以上、もう逃げられない』


 母は泣いていた。


『あの子には、普通の人生を送ってほしい』


『俺も同じだ』


 男が私を抱き上げる。


 小さな私。


 男は微笑んでいた。


『この子は強くなる』


『……どうして分かるの?』


『俺たちの娘だからな』


 ――映像が途切れた。


「……私の父」


 声が震えた。


 ルシアンが目を伏せる。


「そうだ」


「知っていたの?」


「……知っていた」


 私は彼を睨んだ。


「どうして黙っていたの?」


「言えば、お前が狙われる」


「もう狙われている!」


 思わず叫んだ。


 ルシアンは何も言わなかった。


 すると。


 レオンハルトが静かに尋ねる。


「その男は誰だ?」


 ルシアンはしばらく沈黙した。


 そして。


「名は――」


 その瞬間。


 地下聖堂の奥で爆発が起きた。


「伏せろ!」


 黒い炎が広がる。


 壁が崩れる。


 煙の向こうから、一人の男が歩いてきた。


 黒髪。


 銀色の瞳。


 私は息を止めた。


「……お父様?」


 男は私を見て。


 悲しそうに笑った。


「やっと……会えたな」


 そして。


「アリア」


「……!」


 彼の胸元には。


 王家の紋章が刻まれていた。


 しかし。


 その紋章には――。


 黒い花が咲いていた。

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