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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第75話:枯渇する精鋭と、不気味に笑う呪具

「はぁっ、はぁっ……! おっさん、キリがねえぞ!」

 ブラムの大剣が【火魔法Lv10】の炎と共に群れを焼き払うが、倒しても倒しても、奥の階段から深層の魔物が黒い津波のように押し寄せてくる。

 ここは浅い階層の狭い通路だ。魔物の死骸が壁を作り、満足な回避行動もとれない。普段なら余裕のある精鋭たちも、この状況では少しずつ消耗が積み重なっていた。

「っ……! 【水魔法Lv5(派生:氷属性)】!……くっ、魔力が……!」

 エリーゼの氷槍が群れの先頭を串刺しにするが、その表情には珍しく焦りの色が見えた。

「私の雷も、威力が落ちてきました……! この数、尋常ではありません!」

 サンネが盾で魔物の爪を受け止めながら、奥歯を噛みしめて叫ぶ。彼女たちは人類最高峰のレベル5であり、ヘンドリックから【魔力消費軽減Lv1】や【魔力自動回復Lv1】を習得させられている。それでも、相手は深層の強力な魔物の大群だ。休む間もなく全力で処理し続ければ、いかにトップランカーといえど限界が来る。

「ボス! ミラの爪、もう三本折れたんだゾ……! でも、まだ戦えるんだゾ!」

 ミラが血の滲む拳を握りしめ、それでも前を向いていた。獣人としての本能が「群れのボスを守れ」と叫んでいる。彼女は折れた爪の痛みも顔に出さず、ひたすら前衛を張り続けていた。

「リーダー! 前衛の三人の魔力が枯渇寸前です! 私の支援魔法も、これ以上は……!」

 最後尾で支援に回っていたロッテが、悲痛な叫びを上げた。

 彼女の【水魔法Lv4】による回復支援は、この状況で仲間たちの消耗を最大限に抑えてくれていた。しかし、自身の魔力も底が見え始めている。ロッテの声には、限界に近い仲間たちへの焦りと、それでも諦めない意志が混ざり合っていた。

「師匠! 俺もそろそろ……次の一手を頼む!」

 ブラムが後退しながら叫ぶ。彼の【火魔法Lv10】は圧倒的な火力を誇るが、その分消費魔力も凄まじい。【魔力消費軽減Lv1】と【魔力自動回復Lv1】で補っているものの、この数の敵を相手に連発すれば枯渇は免れない。

 限界まで戦い抜いた頼れる弟子と、愛が重いヒロインたち。彼女たちの足が止まり、巨大な魔物の群れがその体へと牙を剥こうとした、その瞬間だった。

『……ふざけやがって』

 ヘンドリックの目から、飄々とした穏やかさが消えた。

『俺の休日は潰すわ、俺の可愛い弟子たちを傷つけるわ……絶対に許さねえ』

 ヘンドリックは空間拡張の鞄の奥底、決して普段は開けない厳重なロックが施された区画に手を突っ込んだ。

 そして取り出したのは、真っ白な陶器の表面に、赤い塗料で異常なまでに口角の吊り上がった「不気味な笑顔」だけが描かれた、一つのお面だった。

「おっさん!? それ、まさか【狂笑の呪面】か!? 被った者の魔力を一滴残らず吸い尽くして、廃人に変えるっていう伝説の呪具じゃねえか! やめろ!」

 ブラムが顔色を変えて叫ぶ。

「旦那様! それは危険ですわ! 絶対にダメです!」

 エリーゼも杖を下ろし、青ざめた顔でヘンドリックに向かって声を張り上げた。サンネが盾を構えたまま「リーダー、命令だ! それを戻せ!」と叫び、ミラが「ボス、ダメなんだゾ! ボスが廃人になったら、あたしが悲しいんだゾ!」と叫ぶ。

 仲間たちの声を聞きながら、ヘンドリックは静かに微笑んだ。

 確かにそのお面は、王国の歴史上、被った者を例外なく廃人にしてきた最悪の呪具である。だが、二十年間あらゆる道具を【鑑定Lv1】で調べ尽くしてきた職人ヘンドリックは、このお面の「真実」を知っていた。

『魔力をすべて吸い取るんじゃない。こいつの起動コストが「魔力1000の固定消費」だから、普通の人間じゃ耐えきれずに廃人になるだけだ』

 ヘンドリックの保有魔力は、異常な拡張を繰り返した結果「7000」に達している。魔力1000など、彼にとってはタンクの七分の一に過ぎない。

 そして【鑑定Lv1】が見抜いたこの呪面の真の効果は、「装着者の魔力を起動コストとして消費した後、周囲の魔力環境を強制的に書き換え、装着者の全スキルを短時間だけ実質Lv10相当まで底上げする」というものだった。

 廃人になるのは、その起動コストに耐えきれない者だけだ。

「下がってろ、お前ら。……俺の、本当の『作業』を見せてやるよ」

 ヘンドリックは、その不気味に笑うお面を、自らの顔へとガシャリと装着した。

 次の瞬間、彼の全身から凄まじい魔力の奔流が解き放たれた。

 洞窟の壁が震え、天井から岩が落ち、迫り来ていた魔物たちが本能的な恐怖で一歩後退する。

 仲間たちは、ただ息を呑んだ。

 今まで見たことのない、ヘンドリックの姿がそこにあった。

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