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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第69話:押し付けられた伯爵位と、王都の新たな名所

 王都の地下から湧き出た幻の霊泉は、ヘンドリックの【土木建築Lv1】とヒロインたちの手によって、たった数日で立派な大露天風呂へと整備された。

 王都の復興作業で泥と汗にまみれた民衆たちは、この温泉に浸かって心身を癒し、口々にヘンドリックを讃えている。

 温泉の入り口には、ヘンドリックが【道具作成Lv1】で制作した魔道具式の自動給湯システムが設置されており、24時間安定した湯温を保つようになっていた。さらに【付与Lv1】で湯に微弱な回復効果を付与し、疲労回復だけでなく軽い怪我の治癒にも効果があるという。

「あの……ヘンドリック様。これは本当に、レベル1のスキルだけで作ったんですか?」

 温泉の管理を任されたギルドの職員が、目を丸くして尋ねてくる。

「まあね。魔道具の設計自体はシンプルだよ。源泉の温度と流量を自動で調整するだけだから」

「そんな……私たちの組合の一番のベテラン職人でも、こんな精巧なものは……」

「あの人、どんな現場でも同じことを言うんだゾ。『まあね、シンプルだよ』って」

 後ろからミラが割り込んで、得意げに胸を張った。

「でも実際すごいんだゾ! 昨日も温泉でお肌がツルツルになったんだゾ!」

「そうね。旦那様の作るものは、いつも機能美に溢れていますわ」

 エリーゼが扇子で口元を隠しながら、温泉施設全体を眺めて満足そうに頷いた。

 ヘンドリックにとっては普通の仕事の範囲内だが、周囲にとっては到底真似できない神業である。この認識のズレが、彼のスローライフをどこまでも遠ざけていくのだが、本人だけが気づいていなかった。

 そして数日後に開かれた王城での論功行賞で、ヘンドリックの胃は完全に破壊されることとなる。

 玉座の国王は立ち上がり、高らかに宣言した。

「ヘンドリック子爵よ。この度の王都防衛、そして霊泉の発掘……もはや『子爵』という地位では、そなたの功績を正当に評価しきれん」

「な……お、お待ちください陛下! 私はただ穴を掘っていただけで……!」

「よって! 本日この時をもって、そなたを『伯爵』へと陞爵する! さらに、あの温泉区画一帯をそなたの直轄地として与えよう!」

「伯爵などという大層な地位は、私の身には余りすぎます! どうか辞退を……!」

 必死に辞退しようとするが、婚約者である王女がそれを遮った。

「陛下! やはりヘンドリックは、地位や名誉に執着しない無欲な御仁じゃ! この謙虚さこそ、上に立つ者に最も必要な資質というものじゃろう!」

「うむ! ヘンドリック伯爵よ、そなたのような男が国を支えてくれること、余は誇りに思うぞ!」

「『ヘンドリック伯爵、万歳!』」

 謁見の間に集まった貴族たちが一斉に拍手喝采を送る。

『……また上がった。どんどん上がっていく。俺のスローライフが……』

 四人の美女と、国王からの絶対的な信頼。そして伯爵という重すぎる地位。逃げ道など、最初からどこにも用意されてはいなかったのだ。

「旦那様、おめでとうございます。……ふふ、伯爵様」

 エリーゼが楽しそうに微笑む。サンネが「誇らしいことだ」と胸を張り、ミラが「ボスが伯爵なんだゾー!」と尻尾をちぎれんばかりに振った。

「全然おめでたくないんだけどね……」

 ヘンドリックのか細い呟きは、割れんばかりの拍手の波にあっさりと飲み込まれた。

 最強の便利屋おっさんの爵位は、本日また一段階、スローライフから遠ざかる方向へと更新されたのであった。

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