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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第68話:湧き出る温泉と、新たなる称号

「……そなた、一体何をしておるのじゃ?」

 広場の中央から噴き出す湯気の柱と、全身ずぶ濡れのヘンドリックを見て、王女は目を丸くした。

「地脈の調査をしていたら、温泉が出まして」

「温泉……」

「はい。王都の地下にあった熱源の正体です。危険なものではありませんでした。ただ、長年閉じ込められていた圧力が相当なものだったので、調整が必要ですね」

 ヘンドリックが淡々と説明する横で、国王が目を細めながら湯気の柱を見上げた。

「素晴らしい……! そなた、疲弊した王都の民を癒すため、自ら地脈の乱れを読み切り、王都の地下に眠る幻の霊泉を掘り当ててくれたというのか!」

「いや、あの、地脈の調査で土魔法を使って穴をくり抜いたら、温泉が出まして……」

「なんという男だ! 魔法の粋を集めて戦闘だけでなく、民の心と体のケアまで完璧に見据えているとは!」

『違う。俺はただ穴を掘っただけだ』

 心の中で全力でツッコみながらも、ヘンドリックには反論する隙すら与えられなかった。

 周囲の民衆や冒険者たちが次々と歓声を上げ始める。

「ヘンドリック様が、王都に温泉を作ってくださった!」

「さすが英雄様だ! ゴーレムを倒して、街を修復して、さらに温泉まで……!」

『俺はただ穴を掘っただけなんだが……』

 ヘンドリックのツッコみは、誰にも届かない。

 その頃、少し離れた場所では、ブラムとロッテが呆れたように師匠の背中を眺めていた。

「……また師匠が意図せず英雄的なことをしてる」

「ふふっ。リーダーらしいですよね」

「らしいか? あれ絶対、穴掘ったら温泉出てきてびっくりしてるだけだろ」

「でも結果的に王都の住民の役に立っているわけですから、それがリーダーのすごいところだと思います」

 ロッテが静かに微笑む。ブラムは少し考えてから「……まあ、そうだな」と頷いた。

 一方、エリーゼ、サンネ、ミラの三人は、全身ずぶ濡れのヘンドリックをまじまじと眺めていた。

「……旦那様、びしょびしょですわ」

「後でしっかり拭いてあげるんだゾ」

「ヘンドリック。後で着替えを持ってきてあげるわ。風邪をひいたら困るもの」

 三者三様の心配が飛んでくる中、ヘンドリックは「大丈夫だよ」と手を振った。

「それより、この温泉の流量を調整して、安全に使えるようにしないといけないからね。少し作業させてもらうよ」

「旦那様、まだ働くつもりですの!?」

「当たり前だろ。穴を開けたのは俺なんだから、最後まで責任を持たないとね」

 エリーゼがため息をつく。サンネが呆れたように腰に手を当てる。ミラが「ボスはほんとに仕事好きなんだゾ……」と尻尾を垂れさせた。

 ヘンドリックは再び地面に手を当て、【土木建築Lv1】と【土魔法Lv1】を発動させた。温泉の源泉から王都各所へと配管を引き、流量を細かく調整していく。さらに【付与Lv1】で配管に耐久性を持たせ、【耐久度向上Lv1】で長期間の使用に耐えられるよう強化する。

 数時間後。

 広場の一角に、湯気の立ち上る小さな温泉施設が完成していた。

「……完璧な仕上がりだ。あとはギルドの人たちに管理を任せれば大丈夫だろう」

 ヘンドリックが満足げに頷いた瞬間、再び王女が歩み寄ってきた。

『……また来た』

 ヘンドリックの背筋に、嫌な予感が走った。

「ヘンドリックよ。そなたの今日の働き、余すところなく拝見させていただいたぞ」

「……ありがとうございます」

「街の復旧作業から始まり、地脈の調査、そして王都の民に温泉を贈るまで。そなたは一切の功績を誇ることなく、ただ黙々と働き続けた。……このような真の奉仕の心を持った者に、余は一つ、新たな称号を授けたいと思う」

「あ、あの、王女殿下。称号はもう十分すぎるほど……」

「王都復興の功労者、かつ民の癒やしをもたらした者として……『水の恩人』の称号を授けるぞ!」

「「「おおおーっ!!」」」

 周囲の民衆と冒険者たちが、割れんばかりの歓声を上げた。

『……また称号が増えた』

 ヘンドリックは力なく天を仰いだ。

 子爵、英雄、そして今度は「水の恩人」。どんどん肩書きが積み重なっていく。スローライフどころか、このままでは王都の顔として完全に固定されてしまう。

「旦那様、おめでとうございます!」

「ボス、すごいんだゾ!」

「……本当に、どこまで私を惚れさせれば気が済むのかしら」

 ヒロインたちが次々と駆け寄ってくる。ブラムが「師匠、また称号増えましたね」と笑い、ロッテが「本当にすごいです」と頭を下げた。

「……頼むから、誰か俺をただの便利屋に戻してくれ」

 誰も聞いていなかった。

 最強の便利屋おっさんは、本日の作業で手にしたのが称号一つと、スローライフへの道がさらに遠のいたという現実だけであることに、深く深くため息をついた。

 湯気の立ち上る王都の空の下、ヘンドリックの呟きは温泉の湯気と共に、静かに夜風へと溶けていくのであった。

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