第51話:謁見の間の再会と、世襲の呪縛
王都に到着し、ヘンドリック一行は直ちに王城へと案内された。
絢爛豪華な謁見の間。居並ぶ貴族たちの冷ややかな視線を浴びながら、ヘンドリックたちは国王陛下の前に並んだ。
「そなたらが、フェルウェ大迷宮のスタンピードを鎮圧した英雄か。見事な働きであった」
国王陛下の威厳ある褒賞の言葉。
だが、そこに思いがけない人物が現れた。
「陛下。街道での魔物の騒動、この身を挺して助けてくれたのは、まさにこのヘンドリック殿たちなのです」
それは、街道で助けた、あの謎の老人だった。
「公爵閣下!? なぜここに?」
エリーゼたちが驚きの声を上げる。
なんと、彼が襲われていた馬車の中にいたのは、王国の有力貴族であり、国王の側近でもある「ヴァレリウス公爵」だったのだ。
「ヘンドリック殿は、ただの便利屋ではありません。この公爵を、そして我が護衛の騎士たちを守りきった、まさに英雄に相応しい器です」
公爵はニヤリと笑い、国王に向かってこう上奏した。
「陛下。これほどの優秀な血統、そして見事な手腕。これを『騎士爵』で終わらせるなど、国家の損失です。……特例として、彼の騎士爵位を、子々孫々まで引き継がれる『世襲騎士爵』へと昇格させるのはいかがでしょうか?」
『『『…………ッッッ!!!』』』
「な……ッ!?」
ヘンドリックの顔から血の気が引いていく。
『よかった……! 俺が死ねば終わる面倒な爵位だと思っていたのに! なんで世襲になっちゃうんだよォォォ!? 俺のスローライフを返せ!』
だが、国王陛下は公爵の提案に、深く頷いた。
「よかろう。ヴァレリウス公爵の推薦だ。ヘンドリック殿、そなたを正式に『世襲騎士爵』とする。……優秀な子を、多くの後世に残してもらわねばならんからな」
その瞬間。
ヘンドリックの背後にいたエリーゼ、サンネ、ミラの三人の瞳が、これまでにないほどにパァッと輝いた。
「世襲……」
「法的に、子々孫々まで……」
「……つまり、私たちが朝まで愛して、ボスの子供をいーっぱい産めば、みんなで幸せになれるんだゾ……!」
最強で最恐の同盟が、ここに完全に完成した。
独身生活の終わりだけでなく、将来産まれてくる子供たちまでもが貴族のしがらみに縛られるという、おっさんにとって最悪の未来が確定した瞬間であった。
謁見の間に、ヘンドリックの悲痛な絶望と、ヒロインたちの歓喜の笑み、そして周囲の貴族たちの拍手が、万雷のように鳴り響く。
最強の便利屋は、公爵の鶴の一声と愛するヒロインたちの情熱によって、ここに完全に終焉を迎えたのである。




