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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第5話:プロの流儀と、地獄の道中での再会

 朝の穏やかな空気の中、拠点の撤収準備を進めるヘンドリックに、エルフのエリーゼが歩み寄った。彼女はあえて冷ややかな、凛としたクールビューティーの表情を崩さず、ヘンドリックの目を真っ直ぐに見つめて問いかける。


「ねえ、一つ聞いていいかしら。あなた、なんで私たちを女として見ないの? 私たち、そんなに魅力がないかしら?」


 その問いに、隣で聞き耳を立てていたサンネとミラも動きを止めた。

 ヘンドリックは作業の手を止めると、少し困ったように眉を下げ、それから包み隠さず素直に語り出した。


「いや、そんなわけないだろ。君たちは魅力の塊だよ。

 エリーゼ、君の透き通るような肌や繊細な耳のラインは芸術品みたいだし、どこか儚げで……君という存在そのものが、もはや奇跡だと思ってる。それに、いつも不思議といい香りがして、実はこっそりドキッとさせられてるんだ。

 サンネ、君の鍛え上げられたしなやかな肉体は戦士としての気品に満ちているし、正直に言えば、その抜群のスタイルにはいつも惚れ惚れしているよ。同性から見ても異性から見ても、完璧なプロポーションだからね。

 ミラ、君のその溢れるような生命力と真っ直ぐな瞳は本当に可愛いし、その……男の夢がぎっしり詰まったわがままな体つきは、見ていてこっちまで元気がもらえる。

 ……正直、直視するのが辛いくらい、君たちは美しすぎるくらいさ」


 予想を遥かに超える、具体的で、かつ恥ずかしげもない心からの大絶賛。

 顔から火が出るほど真っ赤になる3人を余所に、ヘンドリックは真剣な眼差しで続けた。


「だが、俺は一応、プロの裏方だからね。冒険中は、君たちは大切なパーティーメンバーだ。一歩間違えれば死ぬ場所で、君たちを女として意識して判断を狂わせるわけにはいかない。それは君たちの命を危険に晒すことと同じだからな。俺は、無事に君たちを街に帰すのが仕事なんだ」


 その言葉に、サンネが震える声で食い下がった。


「へえ……。じゃあ、街に戻ったらどうなのかしら? 冒険が終わった後なら、関係ないはずよね?」


「悪いな。街に戻っても、同じパーティーである以上は恋愛はしないと決めているんだ。俺が誰か一人にうつつを抜かせば、パーティーの均衡は必ず崩れる。嫉妬や遠慮が判断の鈍りを生み、それが最後には全滅に繋がるからね。俺は、パーティーが崩壊する原因を自ら作りたくないんだよ」


 あまりにも筋の通った、仲間を想うがゆえの拒絶。

 3人は、そのプロとしての誠実さに、もはや怒ることすらできず、むしろ今まで出会ってきたどの男よりも深く、彼に惚れ直してしまった。


『この人……本当に底が知れないわ』


 エリーゼは胸の奥が熱くなるのを感じながら、静かに微笑んだ。


「……さて。話は終わりだ。君たちのいいところも悪いところも、昨日の戦闘でだいたい把握できたからね。これから、レベル1スキルの本当の利点と、魔道具を使った魔力管理のコツを、ぜひ活用できるように学んでいってもらえるかな。これを知れば、君たちは今の数倍は楽に戦えるようになると思うよ」


 ヘンドリックによる、押し付けがましくない丁寧なレクチャーが始まり、彼女たちはその奥深さに目を輝かせる。

 しかしその頃、彼らが歩く通路の少し手前で、事態は最悪の泥沼を迎えていた。


「おい、勝手に行くな新人! 待てって言ってんだろ!」

「うるせえ! 近寄るな! 足引っ張ったらマジで置いてくからな!」


 ブラムは血走った目で周囲を警戒しながら、荒い息を吐いて歩いていた。

 その後ろを、ボロボロになった元パーティーのリーダーとアホ女トリオが、這うようにしてついてきている。

 先ほどの戦闘でキレたブラムは一人で脱出しようとしたが、魔力も尽きかけた状態での深層のソロ行動は自殺行為だ。結局、傷だらけで泣きついてきたリーダーたちを『最悪、魔物が出たらコイツらを囮にして逃げる』という冷酷な計算のもと、しぶしぶ同行させていたのだ。


 極限の疲労と飢え、そして怪我の痛み。全員の魔力は完全に枯渇しており、回復魔法すら使えない。

 もはや一歩歩くのすら限界に達し、ブラムが絶望で膝をつきそうになったその時だった。


「お、昨日のニーチャンじゃないか。ずいぶん派手にやられたな」


 通路の先から、場違いなほど穏やかな声が響いた。

 ブラムが顔を上げると、そこには汚れ一つない綺麗な装備のヘンドリックと、同じくピカピカで血色も良い3人の美女が立っていた。

 ブラムはその顔を見た瞬間、ハッと息を呑んだ。


「あんた……確か、俺がパーティーに入る直前に追い出されたっていう、ヘンドリックさんだよな!?」


 地獄で仏に出会ったような顔で、ブラムがすがりつく。


「頼む、助けてくれ! なんだよコイツら! トップランカーだって聞いて入ったのに、索敵もできねえし、俺を盾にして後ろから魔法撃ってくるし、連携なんてゼロじゃねえか! どうやったらこんなクソみたいな連中と、あんたは今まで深層に潜れてたんだよ!?」


 溜まりに溜まった愚痴と恨み言を、堰を切ったようにヘンドリックにぶちまけるブラム。

 その後方で、リーダーとアホ女たちは気まずそうに視線を逸らしていた。

 彼らも限界だった。助けを求めたいが、つい昨日『お前のためを思って苦渋の決断で外してやる』と上から目線で見栄を張って追い出した手前、プライドが邪魔をして助けてくれと口に出せないのだ。


「……なるほどな。まあ、大体状況はわかったよ」


 ヘンドリックは困ったような、しかしどこか呆れたような苦笑いを浮かべ、腰の魔道具に手を伸ばした。

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