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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第4話:窒息するおっさんと、崩壊する偽りのトップランカー

 翌朝。石造りの防音結界拠点にて。

 ヘンドリックが目を覚ますと、視界が真っ暗だった。そして息ができない。


「んん〜っ! ボスぅ、おはようございますぅ〜!」


 獣人のミラが、ヘンドリックの顔面に豊かな胸を押し付けながら、巨大な犬のように全力で抱きついていたのだ。

 普通の男なら大歓喜する無防備すぎるスキンシップ。しかしヘンドリックの反応は違った。


「んぐっ!? ぐえええっ! お、重い! 息が、窒息する! 頼む、どけてくれえっ!」


 動揺や照れなど一切なく、ただ純粋な『生命の危機』を感じて本気で嫌がり、ミラの顔をベシベシと叩いて引き剥がそうと必死にもがいている。

 その騒ぎで目を覚ましたエルフのエリーゼは、信じられないものを見る目でその光景を観察していた。


『まさか……あんな極上の柔らかさを押し付けられて、本気で嫌がっているの……?』


 昨晩のサンネの誘惑不発に続き、ミラのスキンシップすら『ただの物理的な圧迫』として処理するヘンドリック。

 エリーゼの探究心とエルフとしての負けん気に火がついた。


『なら、これならどうかしら?』


 エリーゼは起き上がり、寝ぼけたふりをしてヘンドリックの背中にピトッと密着した。エルフ特有の華奢で柔らかな感触を押し付け、彼の反応を伺う。


「お、エリーゼも起きたか。悪いがミラを引き剥がすの手伝ってくれないか。マジで首の骨が折れる……っ」

「…………はぁ」


 色気も何もあったものではない。エリーゼは深くため息をつきつつも、どこか嬉しそうにミラの首根っこを掴むのだった。


 一方その頃。フェルウェ大迷宮の深層で、ブラムは限界を迎えていた。


「おおおおおっ!」


 ブラムは一人で前線に立ち、群れを成す魔物たちと死闘を繰り広げていた。

 徹夜での野営に加え、結界も目隠しもない危険地帯での『用足し(野糞)』を強要されたことで、彼の心身の疲労とストレスはすでに限界を突破している。


 その後方では、リーダーが適当に大盾を構えている。だが、彼は魔物の攻撃が後衛(自分とアホ女トリオ)に流れないように防いでいるだけで、前衛で孤軍奮闘するブラムを守ろうとも、攻撃に参加しようともしない。


「リーダー! 盾で押して俺の隙を作ってくれ! 魔法使いも援護を!」

「うるさいな! 俺は後衛を守るのに忙しいんだ! 露払いはお前の仕事だろ!」

「そうよ! さっさと片付けなさいよ、この役立たず!」


 誰もブラムを助けない。誰も攻撃に参加しない。完全な孤立無援。

 だが、その時だった。

 ヘンドリックの『索敵』がない彼らは、ダンジョンの恐ろしさを全く理解していなかった。

 背後の暗がりから、天井を這って回り込んでいた複数の魔物が、無防備な女たちの背後に音もなく着地したのだ。


「ギャアアアアアアッ!?」

「なっ!? うしろから!?」


 背後からの奇襲。女たちの悲鳴が木霊する。


「キャアア! 痛い! 血が! 嫌ああああっ!」


 パニックに陥ったアホ女トリオは、味方であるリーダーやブラムの立ち位置などお構いなしに、燃費最悪の【レベル10魔法】を乱れ撃ちした。

 轟音と共に魔物は吹き飛んだが、無茶苦茶な魔法の余波でダンジョンの壁は崩れ、彼ら自身も爆風と瓦礫に巻き込まれた。


「お前ら、どこに魔法撃ってんだバカァッ!」


 土煙が晴れた後。そこには、魔物の爪痕と身内の魔法の巻き添えでボロボロになり、魔力を完全に使い果たしてへたり込むリーダーと女たちの姿があった。

 誰一人まともに動けない。傷を治そうにも、神官はパニックで詠唱すら忘れて震えている。

 それを見た瞬間、ブラムの中で張り詰めていた糸が、完全にブツンと切れた。


「……ふざけんな。こんなゴミみたいな烏合の衆が、トップランカーだと?」


 ブラムは血を吐き捨てるように言い放った。


「お前らみたいな無能の集まり、こっちから願い下げだ! 俺は抜ける! 勝手に野垂れ死ね!」


 ブラムの怒りの咆哮が、崩れかけたダンジョンに虚しく響き渡った。

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