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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第48話:弟子の忠義と、見事なとばっちり

 領主の館、絢爛豪華な大広間。

 居並ぶ貴族や有力者たちが固唾を呑んで見守る中、壇上に立つヘラフテンの領主(侯爵)は、満面の笑みで『黎明の止まり木』の面々を見下ろしていた。


「此度のスタンピードにおけるそなたらの働き、見事という他ない。まずは、数万の魔物を一手に引き受け、大魔法の連射で塵に帰した若き英雄、ブラムよ。前に出なさい」


 名前を呼ばれたブラムが、緊張した面持ちで一歩前に出る。

 領主は厳かに、そして誇らしげに告げた。


「そなたの規格外の魔力と武勇を称え、すでに王家へ上奏を済ませておる。そなたに『騎士爵』の地位と領地を授けよう!」


 平民が一気に貴族へ駆け上がる特大の褒賞。

 後ろで控えていたヘンドリックは、内心で歓喜のガッツポーズを決めた。


『よし! これでブラムが騎士爵になれば、俺はただの騎士爵様の元・付き人として、静かに平民のスローライフに戻れるぞ! さあブラム、ありがたく受け取れ!』


 だが、ブラムは深く膝をつき、力強い声でこう言い放った。


「もったいなきお言葉ですが、謹んで辞退申し上げます!」


「……ほう。何故だ?」


「俺はただ、大剣を振って魔法を放っただけです。その莫大な魔力を背後から供給し続け、俺の体が壊れないよう癒やし、完璧な指揮で戦線を維持したのは……すべて、我が師匠であるヘンドリックなのです! 師匠が平民のままなのに、弟子である俺が騎士爵の地位を賜るなど、死んでもあり得ません!」


 ブラムの熱い声が広間に響き渡る。


『おいバカやろうブラム! お前が断ったら話がややこしくなるだろうが! なんでそこでお辞儀してんだ! おとなしく受け取れ!』


「それに……俺は、ロッテが隣で笑っていてくれれば、十分ですから」


「ぶ、ブラムさん……っ」


 ロッテが顔を真っ赤にして両手で頬を覆う。若い二人は完全に自分たちだけの世界に入ってしまった。


「はっはっは! これは見事な忠義と純情だ! 師を差し置いて貴族にはならぬか。よかろう、なればブラムには『名誉騎士』の称号と特級の報奨金を与えよう」


 ブラムは「それならば」と恭しく頭を下げた。

 そして、領主は困ったように顎を撫で、ヘンドリックの方へと視線を向けた。


「しかし困ったな。今回の特大の功績に対する『騎士爵位の授与』は、すでに国へ報告済みなのだ。今さらやっぱり無しでとはいかん。誰かがこの騎士爵位を受けねばならぬのだが……」


 領主の目が、ニヤリと光った。


「ブラムが真の英雄とまで豪語するリーダー、ヘンドリックよ」


「は、はい……っ」


「弟子が固辞した枠がぽっかり空いておる。そして平素からの街のインフラへの多大な貢献。そなたが騎士爵位を受けるのが最も理にかなっておるな! よって、そなたを『騎士爵』とし、現在の工房の永久非課税権を与える!」


『ブラム、お前なにしちゃってくれたんだよォォォ!?』


 ヘンドリックは絶望で目の前が真っ暗になった。

 愛弟子が忠義立てをして枠を蹴ったせいで、完全に国へ報告済みの騎士爵位という大爆弾が、見事なとばっちりとなっておっさんの頭上に落下してきたのだ。


 だが、領主の口から放たれた「本当の死刑宣告」は、ここからだった。


「本物の貴族たる騎士爵となったそなたには、国法により『複数の妻を娶る特権と義務』が課せられる。そなたのその優秀な力と血統、ぜひとも多くの後世に残してもらわねばならんからな」


 その言葉が落ちた瞬間。

 ヘンドリックの背後に控えていたエリーゼ、サンネ、ミラの三人の肩が、ビクンと大きく震えた。


「複数の妻……」


「法的に、認められる……」


「……つまり、私たちが争う必要は、最初からなかったんだゾ……?」


 三人の瞳の中で、これまでバチバチと火花を散らしていた正妻戦争の図式がガラガラと崩れ去り、代わりに絶対的で強固な同盟が結ばれる音がした。


「ヘンドリック。領主様もああ仰っていることだし……もう、遠慮はいらないわね?」


「ふふっ。毎晩の気絶なんてさせないわよ。三人で、朝までじっくり愛してあげる」


「ボスの子供、いーっぱい産むんだゾ!」


 極上のドレスに身を包んだ三人の美女が、肉食獣のような艶やかな笑みを浮かべてヘンドリックの背後にピタリと張り付く。


「ま、待ってくれ! 俺は一夫一婦の常識ある平民で……っ!」


「はっはっは! 騎士爵殿は照れ屋だな! 素晴らしい結婚式になることを期待しておるぞ!」


 領主の高らかな笑い声と、貴族たちの万雷の拍手が大広間に鳴り響く。

 頼みの綱のブラムは「師匠、おめでとうございます!」と爽やかに笑いながらロッテとイチャイチャしており、助けを求める先はどこにもない。


 最強の便利屋の独身生活は、愛弟子の余計な忠義による見事なとばっちりと、法的なお墨付きを得たヒロインたちの「回避不能な包囲網」によって、ここに完全に終焉を迎えたのであった。


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