第45話:不吉な遺物と、領主からの招待状
スタンピードから数日が経過し、ヘラフテンの街は急速に平穏と活気を取り戻しつつあった。
あの日、街を救った英雄として住民たちから神のように崇められているヘンドリックは、感謝の波から逃れるために【気配遮断 Lv1】を全力で展開し、裏路地を縫うようにして冒険者ギルドへとやってきた。
ギルドマスターの執務室。
ヘンドリックは布に包んだ赤紫色の結晶を、無言でデスクの上に置いた。
「……ギルドマスター。スタンピードの直後、街の外れで『あのバカ』の遺体を見つけた。これは、その足元に落ちていたものだ」
ギルドマスターの顔から、スッと血の気が引く。
「まさか……【狂乱の魔石】の欠片ですか。深層の魔物を強制的に引き寄せる最悪の呪物。やはり、あのスタンピードは人為的に引き起こされたものでしたか」
「ああ。あいつは愚かだが、こんなものを自力で手に入れられるほどの伝手はない。おそらく、背後に魔族かそれに類する何かがいる」
「貴重な情報、感謝いたします。早急に調査部と王都の騎士団に連携を取りましょう。……ところで、ヘンドリック殿。本日はもう一つ、貴方と貴方のパーティーにお伝えしなければならない重要な用件があるのです」
ギルドマスターは姿勢を正し、引き出しから金糸の刺繍が施された重厚な封筒を取り出した。
「この街を治める領主様からの、直々の呼び出しです」
「……領主様が?」
「ええ。ブラム殿の圧倒的な魔法による殲滅はもちろんですが……領主様が最も高く評価されているのは、エリーゼ殿、サンネ殿、ミラ殿、そしてロッテ殿の女性陣4名の『完璧な救助活動』です」
あの絶望的な状況下で、彼女たち4人は一切の無駄を省いた戦いを見せた。
疲弊し、魔物の数の暴力に飲み込まれかけていたトップランカーたちの周辺だけを狙い、最小限の魔力と精密な攻撃で魔物だけを駆逐。戦線を崩壊させることなく、一人の死者も出さずに立て直したのだ。
「彼女たちの冷静かつ効率的な判断力は、まさに一騎当千の将に値すると、領主様も大層お喜びでしてね。……明日の夜、領主の館で開かれる夜会に【黎明の止まり木】の全員を主賓として招待したいとのことです」
「……なるほど。光栄なことだけど、夜会となると……」
「ええ。貴族の館ですからね。当然、厳格な【ドレスコード】が求められます。相応の身なりを整えて向かってください」




