表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/260

第37話:絶対零度の修羅場と、救世の妹

「……いない。ボスの気配が完全に消えたんだゾ」


 ミラが鼻をヒクつかせ、困惑の声を漏らした。

 腰を痛めてヨロヨロと歩いていたはずのヘンドリックが、路地の角を曲がった瞬間に忽然と姿を消したのだ。


 実は、ヘンドリックは【隠密Lv1】を極限まで活用していた。

 理由は単純だ。街のインフラを直しすぎたせいで、歩くたびに住民から「ヘンドリック様!」「命の恩人!」と土下座せんばかりの勢いで感謝されるのが、恥ずかしくてたまらないからである。


「……ギルドよ。あそこに入っていくのを見たわ」


 エリーゼの冷徹な号令の下、三人は殺気を押し殺してギルドへと潜入した。

 掲示板の影に隠れ、職員と親しげに話すヘンドリックに聞き耳を立てる。そこには先ほどの受付嬢もいた。


「さっきは助かりました、ヘンドリックさん。あの後、城壁の基礎も完璧に直っていて、マスターも驚いていましたよ」


「いや、お安い御用だよ。仕事の邪魔をして悪かったね」


 ヘンドリックが爽やかに笑ってギルドを後にする。

 それを確認した直後、三人は飛び出したい衝動を抑え、あえてその場に残った。真実を、職員たちの口から聞き出すために。


「……ねえ、今の彼。ずいぶん手慣れていたけれど、いつもあんな風に女性と……」


 エリーゼが、ひび割れたような笑顔で受付嬢に問いかける。

 受付嬢は「ええ!」と顔を輝かせ、とんでもない「真実」を語り始めた。


「ヘンドリックさんは本当に凄いんです! 街のボイラーが爆発しそうだった時も、一人で奥まで潜って直してくれましたし、孤児院の雨漏りだって……あ、そういえば今日は王都から可愛い妹さんも来ていたみたいですね」


「…………え?」


 三人の動きが止まる。

 ボイラー? 雨漏り? そして……妹?


「……どういう、こと?」


「あら、ご存知なかったんですか? ヘンドリックさんは、休日のたびにボランティアで街の修理を回っているんですよ。お礼も受け取らないから、みんな感謝してもしきれなくて。……さっきも私の【魔力枯渇】を【魔力供給Lv1】で治してくださったんです」


 崩れ落ちる三人の勘違い。

「浮気」だと思っていたのは「修理」であり、「隠し子」だと思っていたのは「孤児院の子供」であり、「本命の女」は「ただの妹」だった。


「……私たち、何てことを……」


 サンネが顔を覆い、激しい羞恥心に震える。

 だが、事態はこれだけでは終わらなかった。


「……ううん、まだよ。まだ『腰が抜けるほど凄かった』という女主人の発言の謎が残っているわ」


 エリーゼは疑り深く、逃げるように拠点に戻ったヘンドリックを追った。

 そして工房の扉を勢いよく開け放つ。


「ヘンドリック! 説明しなさい!」


「うわっ!? み、みんな、どうしたんだい? そんなに殺気立って……」


 腰を押さえながらお茶を飲んでいたヘンドリックが、飛び上がって驚く。

 そこに、三人の殺気と涙ながらの追及が始まった。


「ボイラーって何なんだゾ! あの女の人と中で何をしてたんだゾ!」

「妹さんって本当なの!? 私たちを騙していたの!?」

「腰が砕けるまで、あの女主人と……何をしていたというの!」


「ええっ!? いや、あれは狭い配管の中で……」


 まさに最悪の修羅場。

 ヘンドリックが説明しようとするたびに、興奮した三人が言葉を被せ、会話が全く噛み合わない。


 その時だった。


「――お兄ちゃん? 何してるの、そんなに囲まれて」


 扉の隙間から、先ほどの若い女性――ヘンドリックの妹がひょっこりと顔を出した。

 彼女は、美貌のトップランカー三人が兄に詰め寄っている異様な光景を見て、パッと表情を明るくした。


「わあ、お兄ちゃん! もしかして、この人たちが噂の……? 凄い! 昨夜、お兄ちゃんが『みんなが可愛すぎて理性を保つのが限界だ』って日記に書いてた……」


『『『…………ッッッ!!!???』』』


「ちょ、ちょっと待て! それは言っちゃダメだ……っ!」


 ヘンドリックが顔を真っ赤にして妹の口を塞ごうとするが、時すでに遅し。

 妹の暴露。

 そして、「ただの修理」であったというすべての物的証拠。

 何より、おっさんが毎晩「魔力枯渇で気絶」していた本当の理由が、「理性を保つための苦肉の策」であったという衝撃の告白。


 工房の中には、一瞬にして爆発的な「沈黙」と、その後の「猛烈な熱気」が立ち込めた。


「……ヘンドリック。日記の内容、詳しく聞かせてもらってもいいかしら?」


「ボ、ボス……わたしたちのこと、可愛いと思ってたんだゾ……?」


「理性が限界……。なら、もう無理をしなくてもいいのよ?」


 妹という救世主によって最悪の誤解は解けたが、同時に「おっさんの本音」というパンドラの箱が開いてしまった。

 便利屋おっさんの平和な夜は、今度こそ物理的に、そして情熱的に、終わりを告げようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ