↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
331/346

第328話:三十六個目

 ヘンドリックの指示が飛び、五人がそれに応える。


「サンネ、踏み込め! 剣に風を乗せる!」


「承知!」


 サンネの剣に、ヘンドリックのLv1風魔法が添えられた。


 わずかな加速。だが、Lv10の剣術に乗った瞬間、それは実験体の防御をまとめて薙ぎ払う一閃へと化けた。


「ミラ、前へ! 身体強化を重ねる!」


「まかせるんだゾ!」


 獣人の膂力に、Lv1の身体強化が重なる。壁ごと敵をなぎ倒す一撃。


「マジカ、広範囲だ。俺が形を作る」


「面白ぇ!」


 魔王の膨大な魔力に、Lv1の魔力操作が精密な形を与える。無駄なく、正確に、必要な場所だけを制圧する魔法。


「ルミナリア、聖具に浄化を通せ」


「心得たのじゃ!」


 そしてエリーゼ。


 彼女の精霊魔法に、ヘンドリックのLv1土魔法が土台として重なった瞬間――地脈そのものが応え、施設の術式基盤が、根本から揺らぎ始めた。


「馬鹿な……!」


 首魁が愕然とする。


「個々の力は、大したことがないはずだ! なぜ、そんな出力が出る!」


「そうだな」


 ヘンドリックが静かに答えた。


「大したことのないものを組み合わせるのが、俺の仕事だ」


 ◇ ◇ ◇


 追い詰められた首魁が、ついに最後の手段に出た。


「ならば――理そのものを書き換える!」


 施設の最奥から、闇の世界樹の力が引き出される。


 黒い光が空間を満たし、この場のレベルの理が、強引に書き換えられていく。


 瞬間、五人の力が失われた。


 サンネの剣が鈍り、ミラの膂力が抜け、マジカの魔力が霧散し、ルミナリアの聖具が沈黙し、エリーゼの精霊が姿を消す。


「なっ……!?」


「この空間では、力の意味は私が決める!」


 誰もが、まともに立っていられない。


 その中で、ヘンドリックだけが、わずかに動けた。


 なぜなら――彼は最初から、枠の外にいるから。


 だが、彼一人の力では、術式の中枢までは届かない。


 ◇ ◇ ◇


 その時。


 ヘンドリックは、温存していた三十六歳分の一ポイントを、ついに使った。


 選んだのは、【同調Lv1】。


 他者のスキルに、自分の魔力をわずかに流し込むだけの、微弱な支援スキル。単体では、ほとんど意味がない。


 誰も選ばない、最も地味なレベル1。


「……様子を見ていて、正解だったな」


 ヘンドリックが、五人に手を伸ばした。


「掴まれ。……お前たちの力は、まだ死んでいない」


 五人が、迷わずその手を取る。


 同調Lv1が発動し、理の書き換えを受けていない「枠の外の魔力」が、封じられた五人のスキルへと流れ込んだ。


 瞬間。


 消えたはずの精霊が姿を現し、鈍った剣が輝きを取り戻し、霧散した魔力が渦を巻いて戻ってくる。


 理の外側で、五人の力が息を吹き返した。


「そんな、Lv1で……!?」


 首魁が絶叫する。


「Lv1だからだ」


 ヘンドリックが、静かに告げた。


「あんたの理は、Lv1を勘定に入れていない。……最初から、ずっとな」


 ◇ ◇ ◇


 理の外側から放たれた、六人の複合攻撃。


 それは闇の世界樹から引き出された術式の中枢を、正確に断ち切った。


 術式が崩壊し、施設が悲鳴を上げて崩れ始める。


 首魁が、力なく膝をついた。


 彼は抵抗しなかった。ただ、呆然と呟く。


「……私は、間違っていたのか」


「理想は、間違っていない」


 ヘンドリックが答えた。


「やり方だけだ」


 ◇ ◇ ◇


 だが、これで全てが終わったわけではなかった。


 闇の世界樹は、まだ健在。そして、この男は末端ではないが――頂点でもなかった。


 崩れゆく施設の中で、首魁が言い残す。


「君は、いずれ知ることになる。……この世界の、本当の仕組みを」


 瓦礫が視界を遮る直前、その声が届いた。


「なぜ、君のような存在が生まれたのか。……その意味を」


 ◇ ◇ ◇


 全員で施設を脱出しながら、ヘンドリックは背中に問いを抱えていた。


『……俺は、何なんだ』


 三十五個のレベル1。枠の外にいる自分。


 その答えを、彼はまだ知らない。


「旦那様」


 隣を走るエリーゼが、静かに言った。


「屋敷に帰ったら、たっぷりお説教ですわ」


「……ああ」


「ドライアドさんにも、きちんと謝ってくださいませ。嘘をつかれたと、泣いておられましたから」


「……それは、まずいな」


 崩れる施設を背に、六人は朝日の中へと駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。