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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第307話:解けた呪縛と、反撃の狼煙

再び、魔族領の広場。


 暗殺の失敗を悟った残党たちは、もはや取り繕うことをやめ、開き直ったように凶悪な武器を構えた。そして、周囲の過激派の魔族たちを、声高に威圧し始めた。


「何をしている! 人間への憎しみを忘れたのか!」


 残党のリーダー格が、血走った目で叫ぶ。


「我らに従え! あの人間の犬に成り下がった、裏切り者の魔王を討ち取るのだ!」


 かつてなら、その号令一つで、過激派たちは怒りに任せて武器を取っただろう。


 だが――今は、違った。


 過激派の魔族たちは、誰一人として動かなかった。


 マジカの、不器用だが嘘のない演説。そして先の襲撃の際、獣人族長が身を挺して同胞を守ろうとした、あの圧倒的な背中。それらを目の当たりにした彼らの心は、すでに、仕組まれた憎しみの呪縛から解き放たれ始めていたのだ。


 重い沈黙が、広場を支配する。


 残党のリーダー格が、焦りを滲ませて、なおも叫ぶ。


「き、貴様ら! 人間に故郷を焼かれた恨みを忘れたのか! 家族を、仲間を殺された、あの日の怒りを!」


 だが、その言葉は、もはや誰の心にも火をつけなかった。むしろ、その必死な様子が、かえって彼らの疑念を深めていく。


 なぜ、この男はこれほど必死に、憎しみを煽ろうとするのか。まるで、憎しみが消えては困るかのように。


 その静寂を破って、群衆の中から、一人の若い魔族が、ゆっくりと立ち上がった。


 かつてヘンドリックの水鏡によって、自らの村を焼いたのが人間ではなく、人間に偽装した何者かの仕業だったと知らされた、あの青年である。


「……お前たちだったのか」


 青年の声は、静かだった。だが、その奥には、腹の底から湧き上がる激しい怒りが滲んでいた。


「俺たちに嘘の憎しみを植え付けて、同胞同士で殺し合わせようとしていたのは……ずっと、俺たちを騙していたのは……お前たちか!」


 青年が、怒りに震える手で、残党へと武器を向けた。


 それが、堰を切る一滴となった。


 過激派も、穏健派も、もはや関係なかった。広場に集まった魔族全体が、これまで互いに向けていた敵意を捨て、その矛先を、たった一つの共通の敵――残党へと、一斉に向けたのだ。


「よ、よせ! 貴様ら、正気か!?」


 完全に包囲され、孤立した残党たちが、初めて恐怖に顔を引きつらせる。


 仕組まれた憎しみの呪縛が、完全に解けた瞬間だった。


 その光景を見届け、マジカが静かに一歩、前に出た。


「見ての通りだ。お前たちの時代は、終わった」


 彼女は残党を見据え、力強く宣言する。


「そして――ここから先は、アタシたち魔族の問題だ。人間の手は借りない。アタシたち自身の手で、このケジメをつける」


 そう言って、マジカは肩越しに振り返った。


 そこに立つ、小柄で猫背な男へと。


「……とは言ったが。手伝ってくれるか、ヘンドリック」


「仕方ないな」


 ヘンドリックは、やれやれと小さく息を吐いた。だが、その口元には、確かに微かな笑みが浮かんでいた。


「最後まで付き合ってやる。……お前が、腹をくくったんだからな」


 その言葉に、マジカの尖った耳が、ほんの少しだけ赤くなった。だが、今はそれを誤魔化す余裕もない。彼女はぐっと前を向き直す。


「上等だ。……野郎ども! アタシに続け! 今日で、この馬鹿げた憎しみの連鎖を終わらせるぞ!」


 マジカの号令に、魔族たちが雄叫びで応える。かつて敵味方に分かれていた者たちが、今は一つの声となって、地を揺るがした。


 魔族が一つにまとまり、そこに規格外の便利屋が加わる。


 長きにわたる憎しみの連鎖を断ち切る、反撃の狼煙が、今、高々と上がった。

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