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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第300話【番外編】記念SS・ついに判明! 妹ちゃんの恥ずかしすぎる本名

「創造紳の皆様ー! 今日ついに300話達成したんだゾー!!」


 公爵邸のリビングに、ミラの元気な声が響き渡った。


「本当にありがとうございます。皆様の応援あってのことですわ」


 エリーゼが画面の向こうへ優雅に一礼する。


「というわけで、恒例の記念SSの時間じゃ」


 ルミナリアがパチンと扇子を鳴らした。


「前回のSSでは、マジカちゃんの可愛らしい本名が判明したのう」


「ちゃん付けするな!! アタシは魔王だぞ! 乙女扱いするな!!」


 マジカが顔を真っ赤にして怒り狂うが、全員が綺麗にスルーした。


「マジカちゃんの本名、マジカ・ルキャン・ディ……繋げてマジカルキャンディ。実に甘くて可愛らしい響きでしたわね」


「スルーした上で掘り返すな!!」


「そして今回は……なんと!」


 ミラが尻尾をビタンビタンと振りながら、高らかに宣言した。


「今まで主要人物で唯一名前がなかった、妹ちゃんの本名がわかっちゃうんだゾー!!」


「……え?」


 リビングの隅でお茶を飲んでいた妹が、ぴたりと固まった。


「マジで嫌です」


 満面の営業スマイルのまま、妹はきっぱりと言い放った。


「私の本名を晒すくらいなら、私、皆さんに呪詛を吐き続けますから。末代まで祟りますから」


「妹ちゃん、目が笑ってないんだゾ……」


「当たり前です。あれは……あの名前だけは、駄目なんです」


 ガタガタと震え始めた妹の肩を、ルミナリアがそっと抱いた。


「よいではないか。そなたの名は、そなたが思うほど悪いものではない。わらわが保証しよう」


「殿下……」


「それに、名を晒すのは創造紳の皆様への感謝の証じゃ。皆、そなたのことをもっと知りたがっておる」


 妹はしばらく俯いていたが、やがて小さく息を吐いた。


「……まあ、殿下がそこまで言うなら……今回は、許しますけれど」


「なぜ上から」


 ヘンドリックの静かなツッコミは、誰にも拾われなかった。


 ◇ ◇ ◇


「では、発表するのじゃ!」


 ルミナリアが羊皮紙を広げた。


「妹ちゃんの名前は――ベル。普段名乗っておる母方の姓と合わせて、ベル・リーネじゃ!」


「わあ、可愛い名前なんだゾ!」


「ええ、とてもお似合いですわ」


 エリーゼたちが口々に褒める。ベルと呼ばれた妹は、少しだけ照れくさそうに頬を掻いた。


「……ありがとうございます。ここまでなら、いいんです。ここまでなら」


「ほう? ということは、問題はこの先か」


 マジカがニヤリと笑った。前回のSSで散々いじられた意趣返しの好機である。


「おい、確かお前、父親の姓もあるんだよな? 兄貴と同じやつ。そっちで名乗るとどうなるんだ?」


「マジカさん」


 ベルの営業スマイルの温度が、氷点下まで下がった。


「それを言ったら、末代まで祟ると言いましたよね」


「がはは! 言え言え! アタシだけ恥をかくのは不公平だぞ!」


「うぐ……」


 全員の視線がベルに集まる。ルミナリアまで「わらわも聞きたいのじゃ」と目を輝かせている。


 ベルは観念したように天を仰ぎ、蚊の鳴くような声で言った。


「……父方の姓は、ゼビュートです」


「ふむ。ベル・ゼビュート……ベル、ゼビュート……」


 ルミナリアが繋げて読み上げた瞬間、リビングが凍りついた。


「「「「ベルゼビュート!?」」」」


 それは、この世界の歴史上最恐と語り継がれる、伝説の大魔王の名前であった。子供でも知っている。御伽噺で泣く子を黙らせるために使われる、あの名前である。


「大魔王じゃねぇか!!」


 マジカが叫んだ。


「アタシより格上の名前じゃねぇか!! 現役魔王のアタシがマジカルキャンディで、なんでただの妹が伝説の大魔王なんだよ!! 不公平だろ!!」


「だから嫌だったんです!!」


 ベルが涙目で叫び返した。


「学校で名簿を父方で書かれた日には、教室が静まり返るんですよ! 先生が出席を取る声が震えるんですよ! 『ベル・ゼビュートさん……』って! 私はただの侍女見習いなのに!!」


「ぷっ……くく……」


「お兄ちゃん今笑ったでしょ!!」


「笑ってない」


 ヘンドリックが顔を背けたまま肩を震わせていた。


「大体お兄ちゃんはずるいんです! 『ヘンドリック・ゼビュート』って、繋げても別に何も起きないじゃないですか! なんで私だけ大魔王なんですか!」


「……名前の巡り合わせというやつだ。諦めろ」


「他人事だと思って!!」


 こうして、ヘンドリックが頑なに父の姓を名乗らない理由の裏に、「妹が名乗ると大魔王になってしまう」というもう一つの家庭の事情があったことが、白日の下に晒されたのであった。


 ◇ ◇ ◇


 その騒ぎを、リビングの隅から眺めている二つの影があった。


 闇の商人と、イリスである。


「……なあ、イリスさん」


 闇の商人が、ぼそりと呟いた。


「魔王様の次は妹さんの本名公開、ってことはですよ。俺、名前どころか話題にすら上がらないってことは……俺、主要人物じゃなかったんすかねえ?」


 しょんぼりと肩を落とす闇の商人に、イリスは無表情のまま、きっぱりと答えた。


「そんなことはありません」


「え?」


「私が、ゲットしてますから」


「…………エ?」


 闇の商人の思考が停止した。


「ゲット? 俺、ゲットされてるんすか?」


「ええ、そうです」


 イリスは表情ひとつ変えず、しかしどこか得意げに続けた。


「こう見えて、見る目はありますから」


「え、あの、それって、どういう……イリスさん? イリスさーん!?」


 問い詰めようとする闇の商人を残し、イリスはスタスタとその場を立ち去った。


 残された闇の商人は、赤くなったり青くなったりしながら、その背中を見送ることしかできなかった。




【創造紳の皆様へ】


 皆様、いつも温かい応援を本当にありがとうございます!

 ついに300話達成いたしました!


 記念として、妹の本名「ベル・リーネ」(父方で名乗ると大変なことになる)を公開させていただきました。


 次の目標は……そうですね、欲張らずに、これからも一話一話を大切に積み重ねてまいります。節目にはまた特別なSSをご用意しますので、どうかお楽しみに!


 ミラ「ありがとうなんだゾー!!」

 エリーゼ「今後とも、旦那様と愉快な家族をよろしくお願いいたしますわ」

 ベル「ベル・リーネです! 絶対に、父方では呼ばないでくださいね! 絶対ですよ!」

 マジカ「アタシのことも二度とちゃん付けで呼ぶなよ! 絶対だぞ!」

 ヘンドリック「……フリにしか聞こえないのは、俺だけか」

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