第28話:三夜連続の気絶と、絶対王者の誕生
引退宣言騒動があった日の夜。
ヘンドリックがベッドに入ろうとした時、薄着姿のエリーゼが寝室に潜り込んできた。
「お願い……どこにも行かないで……」
震える声で抱きついてくるエルフに、ヘンドリックは優しく頭を撫でた。
「大丈夫だよ。俺はずっとここにいるから。安心しておやすみ」
そう優しく微笑んだ次の瞬間、ヘンドリックの意識は完全に途切れた。
コテッ、とエリーゼの肩に寄りかかるようにして、深い深い眠りへと落ちてしまったのだ。
『……え? 嘘でしょう。何事もなく、三秒で寝てしまうなんて……? 私の魅力って一体……』
エリーゼは激しく落ち込んだ。
実は彼女にとって、男性のベッドに潜り込むという行為は、恋愛経験ゼロの彼女が思いつく限界にして究極の色仕掛けだったのだ。
翌日はサンネが、さらに次の日はミラが同じように【添い寝】を敢行した。
だが、結果は全て同じ。おっさんは優しく彼女たちの頭を撫でた直後、死んだように眠りに落ち、完璧なまでの安眠を提供しただけであった。
『ヘンドリックの理性、鉄壁すぎないかしら……』
『私の胸部装甲でもダメだったんだゾ……』
『……私たち、女としての魅力が足りないのかしら』
後日、三人はリビングで深刻な【女子会】を開き、頭を抱えることとなる。
だが彼女たちは知らない。ヘンドリックは毎夜、拠点の防音シェルターの構築や魔道具の微調整で、意図的に魔力を完全に使い果たしているということを。
実は、魔力を空っぽになるまで使い切ると、その後の回復時に【総魔力量】がわずかに増えるという隠された性質があるのだ。彼は万年【レベル1】の低い実力を補うため、毎日欠かさずこの限界訓練を行っていたのである。
結果、ベッドに入った瞬間に【魔力枯渇】による強制的な気絶を引き起こす。三十五歳・独身童貞としての緊張や煩悩を抱く余裕すらなく、ただ限界まで己を鍛え抜いたプロとして意識を失っていただけなのだ。
――そして数日後。冒険者ギルドは異様な熱気に包まれていた。
パーティー結成後、初となる【ギルドランキング】の発表日である。
掲示板の前に集まった冒険者たちが、ざわめきを隠せずにいた。
「おい……嘘だろ? 一位の名前……見たことないぞ?」
「【黎明の止まり木】……? なんだそのパーティー。あの有名どころを全部抜いて、ぶっちぎりのトップだぞ!?」
突如としてランキング一位に君臨した未知の名前。
その構成メンバーが、各パーティーから追放された訳ありのトップランカーたちと、万年【レベル1】の伝説の便利屋であることなど、一般の冒険者たちは知る由もなかった。
一方で、掲示板の下の方では。
「くそっ! なんで俺たちが百位以下に落ちてるんだ!」
「おかしいわ! あいつらを追い出してから、全然深層に進めないなんて……!」
彼女たちを追放し、没落の一途を辿る元パーティーの面々が、信じられない現実を前に絶望の声を上げている。
かつての仲間を失ったことで、自分たちの本当の実力不足を思い知らされているのだ。
圧倒的な絶対王者の誕生と、愚者たちの没落。
ストイックな限界訓練で毎夜爆睡する最強の便利屋と、不器用な乙女たちの快進撃は、ここから本格的に世界へと轟いていくのだった。
● あとがき ●
ヘンドリック「……俺は毎晩ただ限界まで訓練して寝ているだけなんだが、なぜかランキング1位になってしまった。誰か説明してくれ」
エリーゼ「旦那様が三秒で寝落ちした夜の私の気持ちを、誰かわかってくださる方はいらっしゃいませんか……。……そんな読者の皆様、ぜひ【ブックマーク登録】と【評価】で私の傷ついた乙女心を癒やしていただけませんか?」
サンネ「胸部装甲でも敗北した。……これほど悔しいことはない。だが、この悔しさをバネに次こそは必ず攻略してみせる! 続きが気になる方は【ブックマーク】で応援を頼む!」
ミラ「ボスに撫でてもらえたのは嬉しかったんだゾ! でも次の日は覚えてなかったんだゾ! ……【ブックマーク登録】と【評価ポイント】で、ボスに存在を覚えてもらう作戦を一緒に考えてほしいんだゾ!」
ヘンドリック「お前ら何を読者に頼んでるんだ! 俺はただ寝てただけだぞ! ……あと頼むから、これ以上有名にならないでくれ。スローライフが完全に終わる……!」
――おっさんの切実な叫びをスルーして、ぜひ【ブックマーク登録】と【評価】で応援よろしくお願いいたします! 皆様の応援が、おっさんの胃痛と作者の執筆スピードを加速させます!




