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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第26話:乱れる平静と、副リーダーの覚醒

翌朝。フェルウェ大迷宮の入り口に立つ【黎明の止まり木】一行の姿は、昨夜の騒動が嘘のように凛々しいものだった。

昨日の模擬戦、そして最新のメンテナンスを経た装備の感触を確かめるように、メンバーの動きには一段と精彩が宿っている。


「よし、行こうか。今日は昨日の連携を意識して、さらに深層へと足を踏み入れるよ」


ヘンドリックの号令と共に、一行は迷宮へと進んでいった。

サンネの盾は一点の曇りもなく、ミラの突進はより鋭く、効率的になっている。ブラムとロッテも、昨日の二人だけの時間を経てか、どこか言葉を交わさずとも通じ合うような見事な連携を見せていた。


だが、ただ一人、リーダーであるヘンドリックだけが明らかに精彩を欠いていた。


「あ、危ない! ブラム、左から……あ、いや、右だ! すまない、今の指示は取り消しだ!」


ヘンドリックが珍しく、指示を言い間違えた。

さらに、本来なら【気配察知Lv1】で事前に見抜いているはずの単純な落とし穴のトラップに、自分から足を踏み入れそうになる始末だ。


『……いけない。どうしても、瞼を閉じると昨夜の光景が浮かんできてしまう……』


サンネの白い肌、ミラの弾けるような肢体、そして至近距離で潤んでいたエリーゼの瞳。

三十五歳の便利屋おっさんにとって、あの「連携攻撃」は深層の魔物の呪いよりも遥かに強力な精神汚染となって、彼の脳内を侵食していた。


「ヘンドリック、少し落ち着きなさい」


そんな彼の様子を見かねて、隣を歩いていたエリーゼがそっと声をかけた。

彼女の美しい顔には、いつもの冷徹さではなく、どこか彼を包み込むような優しさと、そしてわずかな「してやったり」という含み笑いが浮かんでいる。


「……すまない、エリーゼ。なんだか今日は、少し意識が散漫になっているみたいだ。らしくないね」


「無理もないわ。あれだけのことがあったのですもの。……あなたのそんな人間らしいところが見られて、私は少し安心したけれど」


エリーゼはヘンドリックのすぐ側に歩み寄ると、誰にも聞こえないような小声で囁いた。


「昨夜の続きは、また今度ゆっくり……ね。今は目の前のことに集中して。……あなたの代わり、私が務めてあげるから」


ヘンドリックは顔を真っ赤にして、降参だと言わんばかりに小さく頭を振った。


「エリーゼ……。すまないが、言葉に甘えさせてもらうよ。状況分析と戦術の指示、しばらく君に任せてもいいかな? 君の【魔力視】なら、今の俺より正確な判断ができるはずだ」


「ええ、任せて。副リーダーとして、しっかりリーダーを支えてあげるわ」


エリーゼの氷のような眼差しが、誇らしげに揺れた。

彼女は即座に【魔力視Lv5】を全開にすると、透明感のある涼やかな声でパーティー全員に指示を飛ばし始めた。


「サンネ、三時方向に魔力反応! ミラは影を追って! ブラムとロッテは中央を維持しなさい!」


完璧な指示。

信頼するエリーゼに背中を預け、ヘンドリックは深呼吸をして、ようやく熱くなっていた頭を冷やすことができた。

おっさんの「プロ失格」な一面を、より深い信頼関係で補い合う。

【黎明の止まり木】の絆は、そんな思わぬハプニングを経て、さらに強固なものへと変わっていくのだった。

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