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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第247話:英雄不在の迷宮行、乙女たちの進撃

 再び足を踏み入れた迷宮は、先ほどまでの絶望的な空間とはまるで別物になっていた。

 じめじめとした湿気も、肺を焼くような瘴気も、蠢く魔物の気配すらもない。先ほどの『白銀の光柱』が、迷宮の構造ごとすべての穢れを洗い流してしまったのだ。


「……空気が、澄んでいますわ。まるで神殿の中を歩いているようです」


 先頭を進むエリーゼが、迷宮の石壁にそっと触れながら呟いた。

 その瞳には、悲痛なほどの愛おしさが滲んでいる。


「これほどまでの広域浄化……旦那様は、どれほどの命を削ってこの奇跡を起こされたのでしょうか。私たちを逃がしたばかりか、私たちが再びここを訪れる時のために、道を清めてくださったのですね……っ」


「ああ。閣下の深く、海のような慈愛には……胸が締め付けられる思いだ」


 サンネが、強く剣の柄を握りしめながら頷いた。

 普段はどこか飄々としていて、面倒くさそうにしている彼だが、いざという時には誰よりも前に立ち、すべてを背負い込む。その不器用な優しさを、彼女たちは誰よりも知っていた。


「ボス……今行くから、待っててほしいんだゾ!」


 ミラが鋭い嗅覚で迷宮の奥を探りながら、地を蹴る。

 浄化の光を免れたのか、あるいは迷宮の隠し部屋から湧き出してきたのか、通路の奥から数十匹の凶悪な魔物の群れが姿を現した。


「チッ、雑魚どもが! わらわたちの道を阻むな!」


 ルミナリアが扇子を振り抜く。

 彼女の指先から放たれた灼熱の業火が、瞬く間に魔物の先陣を灰燼に帰した。普段はヘンドリックの後ろで偉そうにしている彼女だが、王女としての誇りと、愛する『殿方』を奪われた怒りが、その魔力をかつてないほどに高ぶらせていた。


「ルミナリア殿、見事です! ですが、魔力は温存を! ここは私が道を切り拓きます!」


 サンネが疾風の如く前に出る。

 銀閃。彼女の剣が煌めくたびに、魔物たちの身体が綺麗に両断されていく。毒や疲労が完全に抜け落ちた『万全の状態』の彼女の剣技は、鬼神のごとき冴えを見せていた。


「私も、負けてはいられませんわね。【絶対零度コキュートス】!」


 エリーゼが杖を掲げると、残った魔物たちが瞬時に氷の彫像へと変わり、ミラの拳がそれを粉々に砕き散らす。

 ヘンドリックという『規格外のストッパー』が不在となった今、彼女たちが本来持つ圧倒的な戦闘力が、迷宮の脅威を文字通り蹂躙しながら進んでいた。


「……す、すげえ。師匠の奥さんたち、あんなに強かったのかよ」


 後方からついていくブラムが、冷や汗を流しながらその光景を見つめていた。

 普段はヘンドリックを巡って口喧嘩ばかりしている女性陣だが、共通の目的――『ヘンドリックの救出』のために団結した今の彼女たちには、どんな強大な魔物も足止めにすらならない。


「師匠は、いつもあの方々を守るために、ご自身を犠牲にしてきたのですね……」

「ああ。俺たちも、しっかり背中を守らねえと。師匠を助け出すまでは、絶対に立ち止まらねえぞ!」


 ロッテとブラムも、師匠の愛した人たちの背中を追い、決意を新たに武器を構える。


 ――ガァァァァァァッ!!


 下層へ続く大階段の前に、巨大な迷宮の番犬ケルベロスが立ち塞がった。

 三つの首がそれぞれ炎、氷、雷を宿し、侵入者を睨みつける。本来ならば、綿密な作戦を立てて挑むべき階層ボス。


「……どきなさい」


 だが、エリーゼの声は絶対零度よりも冷たく、そして静かだった。


「旦那様が、あの暗い地下の底で……一人で苦しんでおられるかもしれないのです。貴方のような犬っころに構っている時間は、一秒たりともありませんわ!」


 エリーゼ、サンネ、ミラ、ルミナリア。

 四人の乙女たちが、一斉に最強の魔法と奥義を解き放つ。

 悲鳴を上げる間もなく、巨大な番犬は光の奔流に呑み込まれ、跡形もなく消え去った。


「急ぎましょう。旦那様の気配は……もうすぐそこですわ!」


 最深部への大扉を前に、エリーゼが息を呑む。

 この扉の向こうに、すべてを犠牲にして自分たちを救ってくれた、愛する人がいる。

 記憶を失い、傷つき、冷たい石の床で倒れているかもしれない彼を、この手で抱きしめるために。


 彼女たちは、震える手で、最深部への重い扉を押し開けた。


 そこに待っているのが、悪趣味な『ヒャッハー城』の黄金の玉座と、その玉座に座っているヘンドリック……ではなく……

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