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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第242話:王女の決死と、無実の従業員

 迷宮の最深部を埋め尽くす、数百万の黒光りする『G』の波。

 エルフ陣営(エリーゼ、アレン、セリア)は神聖な世界樹の真実に耐えきれず、泡を吹いて気絶している。


 そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中で、さらに恐ろしい事態が進行しようとしていた。


「カサカサカサッ!」


 かつて俺が【テイムLv1】で使役した、極小の赤いバンダナを巻いたリーダー格のGが、触角をピロピロと動かしてこちらへ近づいてきたのだ。

 その前脚には、彼らが精魂込めて作り上げた『極上の世界樹用肥料(丸めた黒い泥団子状のもの)』が恭しく掲げられている。


『……あー。あれ、絶対俺テイマーとその連れへの「歓迎のプレゼント」なんだろうけどね。気持ちは嬉しいけど、ミクロン単位も受け取りたくないんだけどね!』


「ひぃっ! ぼ、ボス! アタシ、あれだけは素手で殴りたくないんだゾ……っ!」


 俺の背後に隠れようとしたミラが悲鳴を上げる。


「け、剣が汚れてしまう……! 閣下、急ぎ広範囲の殲滅魔法を要請する!」


 サンネも騎士の誇りを捨て、顔面を蒼白にしながら後ずさる。


「おいおい冗談じゃねえぞ! アタシのヨガウェアにアレがつくのは絶対に御免だ!」


 どんな強敵にも怯まない魔王すらも、羞恥心のない普段の態度はどこへやら、完全に戦意を喪失して後ろへ下がっていく。


 気がつけば全員がじりじりと後退し――最後尾で震えていた一人の少女が、ぽつんと最前列に取り残される形になってしまった。


「……え? な、なんじゃ? なぜ皆、わらわを盾にするように下がるのじゃ!?」


 第一王女、ルミナリアである。

 先ほど、王家の血筋でしか開かないはずの絶対の封印を、俺の三下時代のガバガバなセキュリティであっさりと突破され、すでにメンタルをゴリゴリに削り取られていた彼女。


「さあ、出番ですよ、王女様! 今こそあの恐ろしい国宝の力を見せてください!」


 後方から、完全に他力本願となったロッテの声が響く。


「ば、馬鹿な! わらわは戦闘力を持たぬ護衛対象じゃぞ!? あんな黒い悪魔に近づくなど……ひぃっ!?」


 ルミナリアの足元数十センチの距離まで、赤いバンダナのGが迫っていた。


「か、かくなる上は……ええい、ご先祖様、許すのじゃ!」


 完全にパニックに陥ったルミナリアは、涙目になりながら懐から荘厳な装飾が施された小さな魔道具を取り出した。

 王国に伝わる、いざという時に魔王級の敵すらも塵に帰す国宝――【万象還元の聖具】である。


『……ちょっと待ってほしいんだけどね! あのGたち、見た目がアレなだけで、俺の命令を忠実に守って世界樹のために休みなく働いてきた、ただの超・優良な従業員なんだけどね! 生理的に気持ち悪いってだけで国宝で消し炭にされるのは、いくらなんでも理不尽極まりないと思うんだが!』


「消え去るがよい! この、わらわの惨めな気持ちと共に、塵となるのじゃぁぁぁっ!!」


 ルミナリアの悲痛な叫びと共に、国宝が眩い白銀の光を放った。

 迷宮の最深部が、太陽が落ちてきたかのような圧倒的な聖なる光に包み込まれる。


 だが――俺は咄嗟に前に手をかざし、【物理防壁Lv1】と【魔法結界Lv1】を数十重に展開して、無実のGたちの前面に展開した。


 ドゴォォォォォォォンッ!!!


 凄まじい光の奔流が結界に衝突し、眩い飛沫となって散っていく。

 数秒後。光が収まった空間で、ルミナリアは真っ白に燃え尽きたような顔で膝から崩れ落ちた。


「や、やった……わらわは、王国の危機を……え?」


 ルミナリアが顔を上げると、そこには無傷で健在な数百万のGたちの姿があった。

 彼らは俺が展開した結界に守られ、誰一匹として欠けることなく、無事に生き残っていたのだ。

 赤いバンダナのリーダーGが、主(俺)の慈悲深い防衛行動に対し、感謝と絶対の忠誠を示すように、前脚をピシッと額に当てて敬礼(のような動き)をしている。


「……嘘、じゃろ? わらわの、国宝の全力の一撃が……無傷、じゃと……?」


 完全に威厳を失い、へたり込むルミナリア。

 だが、その直後。俺の背後から、氷のように冷たい視線が突き刺さった。


「か、閣下……? 今、あの忌まわしき蟲どもを守る結界を、閣下が張ったのではないだろうな……?」


「ボス……アタシたちより、あの黒いのの味方をするんだゾ……?」


 サンネとミラが、信じられないものを見る目で俺を凝視している。

 気絶から目を覚ましかけていたエリーゼに至っては、俺がGを庇った事実を察知し、「旦那様が……蟲を……」と呟いて再び泡を吹いて倒れてしまった。


『……違うんだけどね。ただの労基法遵守の精神なんだけどね! 理不尽な暴力から部下を守るのは上司の務めなんだけどね! でも、この空気は完全に終わった気がするんだけどね』


 俺は、俺を神のように崇める数百万のGたちの視線と、俺を汚物のように見るヒロインたちの視線の板挟みになりながら、そっと大扉の取っ手を掴み、静かに、そして確実に『バタンッ!』と扉を閉じて完全封鎖するのだった。

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