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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第234話:地下への逃亡と、掘り当てる正妻

 巨大なベッドの上では、俺の隣のポジションを巡る女性陣の言い争いが、いよいよ物理的な火花を散らす次元にまで発展していた。


「ですから、今夜はわたくしが右腕と決まっておりますの! ルミナリア様は少し下がっていてくださいませ!」


「ええい、離さぬわ! 旦那様の左腕はわらわの定位置じゃ!」


「ボス! アタシが正面から抱きつくんだゾ!」


 ヒロインたちが俺の上で文字通り入り乱れ、あわや迷宮内で身内同士のデスマッチが始まりそうな気配すら漂っている。


『……ちょっと待ってほしいんだけどね。俺はただ、明日の最下層アタックに向けてゆっくり寝たいだけなんだけどね』


 あまりにも白熱する議論(という名のキャットファイト)に、俺は完全に空気と化していた。

 ふと、俺は思いついた。誰も俺を見ていない今なら、このままこっそり抜け出せるのではないかと。


 俺は息を潜め、土魔法を静かに発動させた。

 ベッドの下の石畳が液状に変化し、俺の体をゆっくりと地下深くへと沈めていく。地中を数メートルほど潜ったところで、俺は土を固めて小さな空洞――俺一人だけが横になれる、完璧な地下シェルターを作り上げた。


『……なんで俺が、自分が作った立派な拠点があるのに、わざわざこんな暗い地下の穴倉で寝ないといけないのか全くわからないんだけどね。……でも、上はなんだか騒がしいし、まあそのうち諦めて寝るだろう。これでようやく一人で寝れるぞ。おやすみ……』


 地上から微かに響く女性陣の怒声を聞きながら、俺は静寂に包まれた土の中で、安堵と共に目を閉じた。


 ◇ ◇ ◇


「……え?」


 俺が地下へ逃亡してから数分後。

 ベッドの上で激しいポジション争いを繰り広げていたヒロインたちは、ある致命的な事実に気が付いた。


「だ、旦那様がいらっしゃいませんわ!?」


 エリーゼの悲鳴に、全員の動きがピタリと止まる。

 先ほどまでそこにいたはずのヘンドリックが、いつの間にか煙のように姿を消していたのだ。


「馬鹿な!? これだけ我らが密着しておったのに、いつの間に抜け出したというのじゃ!」


「……逃げられたんだゾ!」


 ミラがベッドの下を覗き込むと、そこには石畳が不自然に波打ったような魔力の痕跡が残されていた。


「まさか、土魔法で地下へ……? なんという隠密スキル……ではなく、なんという執念ですか!」


 サンネが驚愕の声を上げる。

 だが、その直後。エリーゼが絶対零度の冷気を纏いながら、静かにベッドから降りた。


「……旦那様。このような冷たい土の中で一人でお休みになられるなど、お身体に障りますわ。わたくしがお迎えに上がりますの」


 エリーゼは、ハイエルフ特有の膨大な魔力を練り上げた。

 本来ならば森の植物を育み、自然と対話するために使われる神聖な『土魔法』。それを彼女は、地中に逃げ込んだ愛しの旦那様の体温と魔力を探知し、ピンポイントで発掘するためのレーダーとして行使したのだ。


「……見つけましたわ。そこですのね」


 エリーゼが床に手をかざすと、俺が作ったはずの強固な地下シェルターの天井が、音もなくスルスルと開いていった。


 ◇ ◇ ◇


「……ん?」


 心地よい眠りにつきかけていた俺の顔に、パラパラと土が落ちてきた。

 目を開けると、俺の顔のすぐ真上に、満面の笑みを浮かべたエリーゼが覗き込んでいるではないか。


「見つけましたわ、旦那様。お迎えに上がりましたの」


「エ、エリーゼ!? なんでこんな深さまでピンポイントで……っ!?」


「がははは! おっさん、水臭いじゃねえか! アタシらも混ぜろ!」


「旦那様、狭いところはお好きですのね。わらわも失礼するぞ」


 ドサッ、ドササッ!

 俺が悲鳴を上げる間もなく、エリーゼが開けた穴から、魔王、ルミナリア、サンネ、ミラが次々と飛び降りてきた。

 俺一人しか寝られないサイズで作ったはずの地下シェルターに、無理やり五人の女性がなだれ込んできたのだ。


「ちょ、ちょっと待って! ここ、上のベッドより遥かに狭いんだよ! 息が、息ができないんだけど!」


「フフ、密着度が増して、とても暖かいですわ」


「うむ。迷宮の冷えもこれなら気にならぬな」


 四方八方をヒロインたちの柔らかい身体に完全にホールドされ、俺は文字通り身動き一つ取れなくなった。

 上の立派な拠点でエルフの二人やブラムたちが呆然と見下ろしているのが、開いた天井の穴から微かに見える。


『……まだ俺の誕生日じゃないんだけどね! 今回は本番に向けた「誕生日の完全失踪リハーサル」になると思ってたのに! なんでしかもこんなに早くバレるのかな!?』


 俺は、土の匂いとヒロインたちの甘い香りが充満する狭すぎる地下の穴倉で、完全に悟りを開いたような顔で白目を剥くのだった。

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