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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第23話:最弱の速射と、絶望の教育

訓練場に、重苦しい沈黙が流れていた。

ヘンドリックの対面に立つのは、サンネ、ミラ、エリーゼ、ブラム、そしてロッテの五人。本来であれば一国の軍隊に匹敵する戦力だが、彼女たちの表情には余裕など微塵もなかった。


「それじゃあ、始めようか。遠慮はいらないよ。みんな、本気で僕を倒しにきてくれないか」


ヘンドリックが静かに告げた瞬間、五人が一斉に動いた。

ブラムが炎を纏わせた大剣を振りかぶり、サンネが雷鳴と共に盾を構えて突進する。後方からはエリーゼの極大氷魔法が練り上げられ、戦場が瞬く間に魔力の奔流に飲み込まれた。


だが、次の瞬間、彼女たちが目にしたのは「理解不能な現実」だった。


「――【土木建築】」


ヘンドリックが短く呟くと同時に、サンネの足元の地面がピンポイントで隆起し、彼女の姿勢を無様に崩した。


「――【火魔法】」


ブラムが大剣を振り下ろすより早く、彼の眼前に小さな火球が炸裂する。威力こそ皆無だが、一瞬の目眩ましには十分すぎる一撃。


彼女たちが最も驚愕したのは、その「速度」だった。

本来、レベル10のような高位魔法は長い詠唱と膨大な魔力の練り込みを必要とする。無詠唱での発動も不可能ではないが、制御が追いつかず大抵は暴走し、自滅するのがオチだ。

しかし、ヘンドリックが使う【レベル1スキル】は、呼吸をするよりも自然に、そして文字通り瞬時に発動する。


「な、何なの、この手数……! 詠唱も、予備動作すら全くないなんて……っ!」


サンネが必死に剣を振るうが、ヘンドリックは【気配察知Lv1】でその軌道を完璧に読み切り、最小限の動きで受け流していく。


ブラムの猛攻も、ミラの野生の突進も、ヘンドリックが放つ無数の【レベル1魔法】の弾幕によって阻害された。威力は低い。だが、関節を狙われ、視界を奪われ、踏み込みを潰される。

まるで何百人もの透明な敵に同時に攻撃されているかのような錯覚。


『おかしいわ……。私の氷魔法が、あんな豆鉄砲みたいな【火魔法】に、発動する端から打ち消されていく……!?』


エルフの天才魔導師、エリーゼですら必死の形相だった。

彼女は額から大粒の汗を流し、極限の集中力で対抗しようとするが、ヘンドリックの【魔力操作Lv1】による超精密な妨害に、得意の魔法がことごとく不発に終わる。


「みんな、魔法やスキルに頼りすぎだよ。力が大きすぎるせいで、隙が丸見えだ」


ヘンドリックの声が、耳元で聞こえた。

気がつけば、ミラは足をもつれさせて転倒し、ブラムは自分の大剣の重さに振り回されて地面を這っていた。


そして。

「……そこまでだね」


サンネ、ミラ、ブラム、そしてロッテ。

気がつけば全員が地に伏し、その喉元にはヘンドリックの放った短剣や、彼自身の剣先が正確に突きつけられていた。


最後まで立っていたエリーゼも、肩で荒い息を吐きながら、首筋に冷たい刃の感触を感じて動きを止めた。

彼女たちの完敗だった。


「レベル1スキルの唯一にして最大の利点……それはね、一切のタメがないことなんだよ。君たちが一撃を放つ間に、俺なら三十回は君たちを殺せる。……これが、深層で魔物に囲まれた時に生死を分ける『速さ』だよ」


ヘンドリックは静かに武器を収め、地面にへたり込んだ弟子たちに優しく手を差し伸べた。

圧倒的な暴力ではなく、圧倒的な「洗練」によって無力化された彼女たちは、畏怖と尊敬の入り混じった瞳で、自らのリーダーを見上げるしかなかった。

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