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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第227話:エルフの寿命と、空気を読まない精霊たち

 リビングは、故郷の世界樹の復活を知ったエルフたちの歓喜の涙に包まれていた。

 ひとしきり泣き晴らした後、大長老のエルディスが、居住まいを正してエリーゼへと向き直った。


「……エリーゼ王女。これで我らエルフは、再び黎明の森にて国を再興することができますじゃ。どうか我らと共に里へ戻り、再び民を導いてはいただけませぬか」


 エルディスの切実な願いに、後ろに控えるエルフたちも一斉に頷く。

 何年もの間、世界樹の復活を求めてただ一人世界を放浪し続けた彼女にとって、それは最も報われるはずの帰還の誘いだった。


 だが、エリーゼは静かに、しかしはっきりとした笑みを浮かべて首を横に振った。


「……エルディス様。わたくしは、里には戻りませんわ」


「なっ……なんと! 世界樹が復活したというのに、でございますか!」


「ええ。里にはもう、わたくしがいなくても立派に育つ世界樹がありますもの。……でも、旦那様にはわたくしが必要ですの」


 エリーゼは俺の腕をぎゅっと抱きしめ、俺の肩にそっと頭を乗せた。


「わたくしたちエルフにとって、人の一生など儚く、一瞬の夢のように短いものですわ。……だからこそ、旦那様が寿命を全うされるその日まで、わたくしは片時も離れず、この方の隣で生きていきますの」


 その言葉には、男嫌いだった彼女が、一人のただの人間を魂の底から愛し抜くという、凄絶なまでの覚悟が込められていた。


「……そして、旦那様が天寿を全うされたら。その時は、里に戻りますわ。旦那様との思い出を胸に抱いて、永遠を生きるために」


『……寿命の差。エルフにとって人間の寿命は一瞬なんだろうけどね。俺が死んだ後のことまで考えて、それでも今をすべて俺に捧げると決めてくれているなんて、重いけど愛おしいよね』


 俺は彼女の細い肩を引き寄せ、静かに頷いた。

 エルディスは目頭を押さえ、「……そこまでのお覚悟であられましたか」と深く一礼した。


 感動的な静寂が、リビングを満たす。

 その時、エルフの一行の中から、一人の際立って美しい少女が前に進み出た。


「……エリーゼ様が、そこまで心を許されるお方」


 彼女は、ハイエルフであるエリーゼには一歩譲るものの、神秘的な美貌と均整の取れたスタイルを持つ、見目麗しいエルフの美女だった。


「ヘンドリック様。私はエルディス様の孫娘、セリアと申します。どうか、我らが気高き王女を……きゃあっ!?」


 セリアが優雅にカーテシー(淑女の礼)をしようとスカートの裾を摘んだ、その瞬間だった。


 ベロンッ!!


 突如としてリビングの床の石畳が液状に波打ち、そこからひょっこりと顔を出した土の精霊が、満面のドヤ顔でセリアのスカートを腰の高さまで豪快にめくり上げたのだ。


「……えっ?」


 純白の清楚な下着をリビングのど真ん中で晒されたセリアが、顔を真っ赤にして固まる。

 土の精霊は、見事な仕事をしたとばかりに俺に向かって親指をグッと立てると、再び床の中へとダイブして消え去っていった。


『……ちょっと待ってほしいんだけどね! なんであのポンコツ精霊たちは、こんな感動的な場面で空気をミクロン単位も読めないのかな!』


 数日前、メイド長のベルナデッタに同じ凶行に及んでモップで粉砕されかけ、その恐怖から逃れるために森の向こう側を開墾し続けていたはずだ。

 それなのに、なぜわざわざ「見知らぬ美女のスカート」の匂いを嗅ぎつけて、ピンポイントで浮上してくるのか。


「き、き、貴様らぁぁっ! 神聖なるエルフの乙女になんという真似を!」


「曲者だ! 武器を取れぇっ!」


 我に返った若いエルフたちが、顔を真っ赤にしながら一斉に弓や剣を引き抜く。

 先ほどまでの涙と感動の空気は完全に消え去り、リビングは一瞬にして修羅場と化した。


「……あ。あの、違うんだよ。今の精霊たちは、俺が使役しているというか、契約したんだけど、ちょっと言うことを聞かなくて……」


 俺が冷や汗を流して弁明しようとした、その時。


「……旦那様。少々、庭の『除草』をしてまいりますわ」


 俺の隣にいたエリーゼが、絶対零度の冷気を纏いながら立ち上がった。

 その手には、いつの間にか極大の氷魔法が生成されている。


「わたくしの大切な里の民を辱めるなど、万死に値しますわ。……あの土塊ども、二度と浮上できないように永久凍土に沈めてやりますの」


「エ、エリーゼ!? 屋敷の基礎ごと凍らせるのはやめてほしいんだけどね!?」


『……どうして俺の周りでは、感動的なシーンが三分と持たないのかな。俺の望むスローライフは、本当にどこにも存在しない気がするんだけどね』


 俺は、激怒するエルフたちと、絶対零度の氷魔法を放とうとする正妻を必死に止めながら、泣きそうになりながら胃薬の瓶を開けるのだった。

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