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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第223話:精霊の暴走建築と、エルフたちの帰還

 王女たちとの混沌とした謁見から一夜明け、俺は朝から新居――改め、こうしゃく邸の庭に立っていた。


「……さて。来月の舞踏会に向けて、この屋敷を数百人規模のゲストが入れるように拡張しないといけないんだけどね、誰が……って自分でするしかないか」


 俺はため息をつきながら、土魔法Lv1と土木建築Lv1を複合させて地脈に魔力を流し込んだ。

 周囲の石材が音を立てて組み上がり、迎賓用の巨大なホールと美しい中庭がまたたく間に形成されていく。


 だが、屋敷の裏手へと視線を向けた俺は、その場に完全に硬直してしまった。


『……ちょっと待ってほしいんだけどね。なんで屋敷の裏に、王都の闘技場よりも立派なコロッセウムが建っているのかな』


 すり鉢状の巨大な観客席と、血の跡一つない真新しい石造りの闘技広場。

 その中央で、土の精霊(ぞいの子)と、土の精霊キメラが、スコップを片手にドヤ顔で胸を張っていた。どうやら、昨日俺とエリーゼが寝室で過ごしている間に、彼らが徹夜で謎の建築作業を行っていたらしい。


「おお……。なんと素晴らしい闘技場でしょう」


 いつの間にやってきたのか、サンネが感極まった顔でコロッセウムを見上げている。


「やはり私の聞き間違いではなく、舞踏会とは『武道会』のことだったのですね。閣下、この舞台に恥じぬよう、私は命を懸けて戦い抜きます」


「……サンネ。それは精霊たちが勝手に作っただけで、来月やるのはドレスを着て踊る方の舞踏会のはずだよ」


 俺が真実を告げようとしたが、サンネはすでに素振りを始めており、俺の言葉は完全に空の彼方へと消え去っていた。


『……サンネの勘違いが物理的に具現化してしまったんだけどね。これ、王族が来たらどう説明すればいいのかな』


 ◇ ◇ ◇


 そして、夜。

 今日も一日中振り回され、俺はようやく寝室のベッドに倒れ込んだ。


『……いろいろあったけれど、とりあえず寝て体力を回復しないとね。エリーゼさんとの三百九十年分の愛の余韻で、まだ腰が砕けそうなんだけどね』


 俺が静かに目を閉じようとした、その時だった。

 バタンッ、と勢いよく寝室の扉が開かれた。


「ボス。待たせたんだゾ。今日はアタシと一緒に寝るんだゾ」


 現れたのは、薄着の寝巻き姿で尻尾を揺らすミラだった。

 彼女は当然のようにベッドに潜り込み、俺の腕にがっしりと抱き着いてくる。


「……ミラ。一緒に寝るのはいいんだけどね、今日は俺、もう体力がミクロン単位も残っていないんだよ」


「ダメなんだゾ。今日から、アタシたちのローテーションが始まるんだゾ。今日はアタシで、明日はサンネで、明後日はエリーゼなんだゾ」


「……え。何それ」


 俺の口から、間抜けな声が漏れた。


「昼間、みんなで話し合って決めたんだゾ。ボスはアタシたち全員の番なんだから、平等に回さないと不公平なんだゾ」


『……いつの間にか、俺の夜のスケジュールが国家予算並みに厳密に管理されているんだけどね。これじゃあ、俺の腰は一生休まらないんじゃないかな』


 有無を言わさぬミラの温もりと、獣人特有の高い体温に包まれながら、俺は抗うことを諦めて静かに天井を見上げた。


 ◇ ◇ ◇


 一方その頃。

 王都から遠く離れた、黎明の森の最深部。


 鬱蒼と生い茂る木々の間を、深い緑の外套を深く被った数人の影が、音もなく駆け抜けていた。

 彼らは皆、長い耳を持ち、その顔には深い疲労と、長きにわたる絶望の影が色濃く刻まれている。


 かつて、里の世界樹が枯れ果てたことで国としての体を失い、世界中へ散り散りになっていたエルフの生き残りたちである。


「……長老様。この魔力の流れ、間違いないのでしょうか」


 若いエルフの青年が、先頭を走る白髭の老エルフに問いかけた。

 長老と呼ばれた男は、王都の方向――遥か彼方の夜空を見つめ、震える声で答える。


「ああ。間違いない。この大気を震わせるほどの清浄な魔力のうねり……かつて我々が失い、そしてエリーゼ殿がたった一人で探し求めていた、世界樹の息吹じゃ」


 彼らは感じ取っていた。

 王都の郊外で、ヘンドリックという規格外の存在が、枯れた枝に膨大な魔力を注ぎ込み、新たな世界樹として大木へと成長させたその圧倒的な魔力の変化を。


「……我らが祖国は、あそこにある。急ぐぞ。誰が世界樹を復活させたのか、そしてエリーゼ殿がご無事なのか……この目で確かめねばならん」


 エルフたちは決意に満ちた目で頷き合い、王都に向けてさらに速度を上げた。


 ヘンドリックの預かり知らぬところで、彼の規格外な魔力が引き寄せた新たな波乱が、静かに王都へと迫りつつあった。

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