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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第21話:プロの買い出しと、エルフの自然な歩み

 フェルウェ大迷宮への再突入を控え、ヘンドリックは街へと繰り出していた。

 隣には、いつものようにエリーゼが静かに寄り添っている。


「悪いね、エリーゼ。君の【魔力視】があれば、魔道具の素材の質を間違えずに済むから助かるんだ。何せ鑑定だけではわからないことがあるからさ。ほら、魔道具で効果をアップさせているとはいえ、鑑定のレベルも1だし」


「気にしないで。……こうしてあなたと歩くのは、その、……悪くないわ」


 まず二人が向かったのは、街の外れにある地味な店構えの保存食専門店だった。

 そこの主人はかつて宮廷料理人を務め、【料理Lv10】を極めて引退したという伝説の料理人だ。


「よお、大将。いつもの【特製乾肉】と【高圧縮パン】を二十人前頼むよ。それから、深層の寒さでも凍らない【魔力スープの素】もね」


「へっ、相変わらずヘンドリックは注文が細かいな。だが、俺の料理の価値を正しく理解しているのはあんたぐらいだ。最高の品を揃えてやるよ」


 ヘンドリックはただ食料を買うのではない。極限状態での生存率を数%引き上げるための「プロの道具」として、最高峰の保存食を選んでいるのだ。


 次に向かったのは、鉄を叩く激しい音が響くドワーフの鍛冶場だった。


「……バルガス。みんなの装備のメンテナンスを頼みたいんだ。特にサンネの盾とエリーゼの弓の調整をね」


 奥から現れたのは、煤で汚れた頑固そうなドワーフの老人だった。彼は【鍛冶Lv10】を持つ伝説の職人だが、気に入らない客の依頼は絶対に受けないことで知られている。


「おいおい、ヘンドリック。俺の槌を動かしたければ、それなりの対価が必要だってのは分かってるだろうな?」


「分かっているさ。……これでどうだい?」


 ヘンドリックが【空間拡張Lv1】の鞄から取り出したのは、先日採取したばかりの【オリハルコン】と【ミスリル】の原石だった。

 それを見た瞬間、老ドワーフの目が獣のように鋭く光る。


「……ほう。この純度、いいだろう。特別に俺が直々に叩いてやる」


 バルガスは原石をひったくるように受け取ると、ニヤリと笑って催促するように手を差し出した。


「だが、これだけじゃ足りねえな。……いつもの『あいつ』は持ってきてるんだろうな?」


「ああ、もちろんだよ」


 ヘンドリックが差し出したのは、エルフの里から仕入れた極上の【魔樹の銘酒】だった。老ドワーフはそれを宝物のように抱えると、上機嫌で工房の奥へと消えていった。


 用事を済ませ、夕暮れの街を歩いている時のことだ。

 いつの間にか、エリーゼが自然な動作でヘンドリックの腕に自分の腕を絡めてきていた。


 あまりにも自然すぎて、あの高潔なエルフであるエリーゼと腕を組んで歩いているという事実に、ヘンドリックの理解が追いつかない。


「あ、あの……エリーゼ?」


 思わず声をかけると、エリーゼは正面を見据えたまま、事も無げに答えた。


「気にしなくてよいのよ。……ただ、少し人混みで離れそうになっただけだから」


 だが、ヘンドリックは気づいていた。

 最近、彼女の顔をじっと見ていると、ほんのわずかな瞳の揺れや、口元の緩み……そんな微かな表情の変化が、なんとなく分かるようになってきたのだ。

 今のエリーゼは、明らかに上機嫌だった。


『……なんだか、前よりもずっと可愛らしく見えるな』


 そんなことを考えていた、その時。

 エリーゼの長い耳がピクンと跳ねた。彼女の鋭い知覚が、後方から迫るサンネやミラの気配を察知したのだ。


「――っ」


 次の瞬間、エリーゼは何食わぬ顔でスッと腕を解き、一歩距離を置いた。その動作があまりにも早すぎて、ヘンドリックは一瞬、自分が幻でも見ていたのかと思ったほどだ。


「エリーゼ?」


「……何でもないわ。ほら、もうすぐ拠点よ。急ぎましょう」


 ツンとすまして歩き出す彼女の後ろ姿を見送りながら、ヘンドリックは深い、深いため息をついた。


『……全く、俺みたいな地味なおっさんの何が良いんだか。本当に、みんなの考えだけはレベル1の俺には読み切れないよ』


 便利屋おっさんの困惑をよそに、夕暮れの街にはサンネとミラの騒がしい声が響き始めていた。


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