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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第191話:地道な制圧戦

 やがて、荒野の地平線の向こうに、巨大な城壁に囲まれた水の都ヘラフテンの姿が見えてきた。


 だが、その街の入り口に広がる光景は、平和なスローライフとは程遠いものだった。城門の前に陣取り、必死に防衛線を張っているのは、かつて俺がしごき抜いたトップランカーの冒険者たちだ。彼らほどの実力者が、血と汗に塗れ、ボロボロになりながら防戦一方に追い込まれている。


 俺はなんとか魔導車の速度を落とし、彼らの陣形のすぐ後ろへと車を滑り込ませた。


「お、お師匠様!? 来てくださったのですか!」


 魔物の返り血と自身の流した血で顔を汚した教え子の一人が、車から降り立った俺の姿を見て悲痛な叫び声を上げた。


「……師匠と呼ぶなと、いつも言っているでしょう。私たちは対等だよ」


 俺がいつものように力の抜けた飄々とした口調で返すと、彼は悔しげに顔を歪め、迫り来る無数の群れを指差した。


「襲ってきているのは、この街の住民たちなんです! 奇妙な仮面を被らされて暴徒になっているだけで……中身が顔見知りの一般人だと分かっているから、俺たちじゃ……剣を振るえないんですっ」


 俺は魔力感知を広げ、仮面の奥にある気配を探った。確かに彼らの言う通り、微弱な魔力で操られているだけの、戦闘訓練など受けたこともないただの一般人たちだ。


『うわ! 罪のない住民に仮面かぶせて暴徒化させるとか、一体何考えているんだよ。怪我もさせられないし、絶対厄介ごとだよなあ……』


 俺は内心で盛大に呆れ、ぼやきながらも、すぐに頭を切り替えた。


「……住民なんだね? 拘束して仮面を外してあげてほしいかな」


 俺が穏やかに提案すると、教え子たちは歯噛みして首を振った。


「でも、下手に拘束しようと近づいても、相手はなりふり構わず暴れてくるから……俺たちじゃ何もできないんです!」


「わかった、こちらで拘束するから、あとは何とかして?」


 俺が振り返りざまにそう言うと同時に、魔導車から飛び出した俺の仲間たちが、風のような速度で一斉に戦場へと散開した。


「うおおおっ! お前ら、ちょっと痛いけど我慢して、どいてな!」


 ブラムが巨大な剣の腹を巧みに使い、群がってくる数人の足をすくい上げて鮮やかに転倒させる。


「っと! 怪我させないように手加減するのも難しいね!」


 ロッテが素早い身のこなしで住民の死角に回り込み、関節を極めて抵抗を奪い、優しく地面に押し付ける。


「峰打ちですわっ」


「アタシに任せるんだゾ!」


 サンネが流れるような剣さばきで相手の体勢を崩し、ミラが持ち前の驚異的な身体能力で暴れる住民の背中を次々と押さえ込んでいく。


 魔王もまた、前線に立つだけで圧倒的な覇気と威圧感を放ち、向かってくる数人を同時にすくみ上がらせてその場に這いつくばらせていた。


 仲間たちが住民を地面に伏せさせた、まさにその刹那。俺は大地に手を突き、土木建築スキルと土魔法を融合させた、極めて精密な術式を連続で展開した。


「錬成」


 カクンッ、と地面が小さく鳴動し、滑らかで柔らかい土の帯が生き物のように這い出した。それは伏せさせられた住民の四肢に巻き付き、怪我をさせないクッション性を保ちながらも、絶対に抜け出せない強度で地面へと縫い付けていく。


 ブラムが転ばせる。俺が縫い付ける。ロッテが押さえ込む。俺が縫い付ける。


 俺はヒロインたちの動きを完璧に予測し、寸分の狂いもなく、地道に四肢の拘束を繰り返していった。一人、また一人と、暴れる住民たちが無力化されていく。


 数百人規模の対象への精密な連続魔法行使。普通であれば、数十人を拘束した時点で魔力枯渇を起こして倒れてもおかしくない。だが、底なしの魔力を持つ俺にとっては、呼吸をするのと変わらない準備運動に過ぎなかった。


「なっ……相変わらずすさまじいなおっさん! これだけの人数に、一切の手抜きなしで精密な拘束魔法を続けるなんて……っ」


 ボロボロになっていた教え子たちがポカンと口を開け、次々と地面に縫い付けられていく暴徒たちの山を見つめていた。


 こうして俺たちは、誰一人として血を流させることなく、街の入り口に押し寄せていた仮面の群れを完全に制圧した。


 静寂が戻った戦場を見渡し、教え子の一人がハッと我に返ったように声を上げた。


「すげえ……よし! お師匠様たちが動けなくしてくれたんだ! さあ、お前ら、早く仮面を剥ぎ取ろうぜ!」


「おおっ!」


 恩師と歴戦の仲間たちが見せた規格外の制圧劇に、トップランカーたちは活気と希望を取り戻し、地面に拘束された住民たちの救護と仮面の解除に向けて一斉に駆け出していった。

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