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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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183/301

第183話:闇の商人、やらかすが……まさかのおとがめなし?

「……ああ。商人、ちょっと彼らの『遺品』を鑑定してくれるかな。どこの誰が、こんな非道な兵器を作っているのか、少しでも手がかりが欲しい」

 

 俺の言葉に、商人は青ざめた顔を引きつらせながらも、イリスに背中を押されるようにして、粉々になった仮面と魔石の残骸の前にしゃがみ込んだ。

 

「……ひどい有様です。仮面が砕けたことで呪縛は解けましたが、肉体はすでに限界を――」

 

 商人が魔石の破片を拾い上げようと手を伸ばした、その時だった。

 

 ガシッ!

 

「ひぃっ!?」

 

 事切れたと思っていた仮面の男の一人が、突然、商人の腕を血に染まった手で強く掴んだ。

 

 サンネとミラが即座に武器を構え直すが、男の目に敵意はなかった。

 

 白濁していた瞳はわずかに正気を取り戻しており、焦点の合わない目で宙を見つめている。

 

「……あ、りが……とう……」

 

 男は掠れた、しかし確かな安堵の混じった声でそう呟いた。

 

 それは、死よりも恐ろしい暴走と苦痛から解放してくれたことへの、最期の感謝だった。

 

 そして、男の腕からパタリと力が抜け、今度こそ完全に息を引き取った。

 

「ひ、ひいいいいいっ!!」

 

 数秒の静寂の後、商人が涙目で絶叫した。

 

 彼は腰を抜かしたままズリズリと後ずさりし、背後に立っていたイリスの足元へと転がり込む。

 

 そして、あろうことかイリスの細い腰に両腕でガシィッと抱きつき、ガタガタと震え始めたのだ。

 

「イ、イリス様ぁぁ! 死、死体が動きましたぁぁ! やっぱり最前線は嫌です、お家に帰してくださぁぁい!」

 

「……落ち着きなさい、商人殿。彼はすでに完全に事切れています」

 

 イリスは冷たい声でそう言い放つ。

 

 普通なら、断末魔の男の言葉にシンミリとする場面だ。俺も胸が締め付けられる思いだったが、商人のあまりに情けない泣き叫びのせいで、シリアスな空気が一瞬で吹き飛んでしまった。

 

『……いや、そこは泣いてすがるにしても、俺かサンネのところじゃないか?』

 

 俺が内心でツッコミを入れていると、さらに信じられない光景が目に入った。

 

 腰に抱きつかれ、メイド服をくしゃくしゃにされているというのに、潔癖で他者との接触を嫌うはずのイリスが、商人を蹴り飛ばさないのだ。

 

 それどころか、イリスは一つ小さなため息を吐くと、震える商人の頭にポンッと手を乗せた。

 

「……全く、あなたは私が物理的に支えていなければ、立っていることすらできないのですね。仕方のない人です」

 

 ポンポン、と。

 

 まるで怯える子犬をあやすかのように、イリスが商人の頭を一定のリズムで撫でている。

 

 その目は相変わらず氷のように冷たいが、手つきだけは妙に過保護だった。

 

「ひぐっ……イ、イリス様……?」

 

 商人も、自分がとんでもない相手に抱きついてしまったことに気付き、ビクッと体を強張らせて見上げる。

 

 しかし、頭を撫でられているという現実。

 

 先ほどの背中ポンポンに続く、二度目の明確なスキンシップ。

 

『……嘘だろ? この人、本当に私に気があるんじゃ……!?』

 

 商人の顔が、恐怖の青ざめから、別の意味のパニックによる赤面へと急速に切り替わっていく。

 

「……商人殿。いつまで私の腰にしがみついているつもりですか? 早く鑑定の続きを」

 

「は、はいぃぃっ! すぐやりますぅぅ!」

 

 商人は弾かれたように立ち上がり、再び残骸の前へと戻っていった。

 

 そんなカオスなやり取りを横目に、俺は男が最期に残した「ありがとう」という言葉の重みを噛み締めていた。

 

 こんな非道な兵器を造り出し、彼らの命を弄んだ黒幕。

 

 そいつだけは、絶対に許してはおけない。

 

「……商人。何か分かったか?」

 

 俺の問いかけに、商人は涙目と赤面を混在させたカオスな顔のまま、プロの目つきへと切り替えて頷いた。

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