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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第172話:魔王の宣言と、チームの分担と

 全員が沈黙している中。


 魔王が一歩前に出た。


「……なんだお前ら、何をうじうじ考えてるんだ。そんなの、アタシが面倒見てやる!」


 全員が固まる。


 難しいことなど何も考えていないかのような、豪快すぎる宣言だった。だが、彼女もまた仮面を被らされ、心を壊されかけた者だ。思うところがないはずがない。


 魔王がヘンドリックを真っ直ぐに見た。


「……ただし」


 一呼吸。


「お前は絶対に死ぬな」


 ヘンドリックの内心。

『……魔王さん、そういう人だったんだよね』

『素直じゃないけど、ちゃんと言葉にするんだよね』

『自分も仮面で操られたから、だろうね』

『口には出さないけど』


「……うん。ありがとう」


 魔王が顔を背ける。


「礼はいらん」


 そして、イリスが静かに一歩前に出る。


「では、あの方々には別動隊での荷物持ちと、食材の下処理を覚えていただきますね」


 完璧な笑顔だった。イリスは三人に足りないものを見出し、自身の持つ生存スキルを教え込もうと決意したらしい。だが、その有無を言わさぬ完璧なトーンは、周囲にはただ淡々と「労働力としてこき使う」と宣言しているようにしか受け止められなかった。


 女三人が「ひいぃっ」と怯えながらも、何度も首を縦に振る。


 闇の商人が「え、また私も?」と言いながら、でも逃げない。


 ◇ ◇ ◇


「……じゃあ、こうしようかな」


 俺は全員を見渡した。


 魔王チーム:魔王・イリス・闇の商人・女三人

 ヘンドリックチーム:ヘンドリック・エリーゼ・サンネ・ミラ・ブラム・ロッテ


 ブラムが「……俺たちは師匠のそばにいていいんですか」と言う。


「当然だよ」


 ロッテが小さく頷く。


「……ありがとうございます」


 エリーゼが静かに言う。


「……よろしいのですか、旦那様。あの三人を手放して」


「手放すわけじゃないよ。……魔王さんが引き受けてくれた。それだけだよ」


 エリーゼが一瞬だけ、何かを考える顔をした。それからゆっくりと、小さく頷いた。


「……承りましたわ」


 サンネが剣の柄に手を添える。「同意する」


 ミラが「ボスと一緒にいられるんだゾ!」と言う。


 ◇ ◇ ◇


 女三人が魔王チームに合流する前に。


 俺は三人に声をかけた。


「しばらくここで学んでおくといいよ。俺と違って、彼女は遠慮がないからさ。今度こそちゃんと……ね」


「……あ、それと」


 俺は声を潜めて、三人に釘を刺した。


「イリスは普段大人しいけど、真に怖いのは彼女だから、十分に注意するようにね」


 ◇ ◇ ◇


 エリーゼが「ふふっ」と笑いながら、俺の頬や腕をさりげなく撫でるようにボディタッチしてくる。


「……旦那様ったら」


 俺は苦笑して、息を吐こうとした。


 ……あれ?


 息が、できない。


 視界が急にチカチカしてきた。よく考えたら、さっき俺が「それ言っちゃダメぇ!」と叫んだ時から、ずっとサンネに背後から羽交い絞めにされたままだった。


「……さ、サンネ……くび……」


「……ハッ!?」


 俺の力が抜けた瞬間、サンネがようやく我に返った。


「あ! 息していない!? か、閣下!?」


 俺が喋り終えるまで微動だにしなかったサンネだが、うっかりそのままの力で首を絞め続けていたらしい。俺の意識は、そこで物理的に刈り取られた。


 ガクン、と俺の体が崩れ落ちる。


「閣下ぁぁぁぁっ!?」


 サンネの悲鳴が地下施設に響き渡る中、ミラが倒れた俺を見て叫んだ。


「ボス! 食べ物足りてないんじゃないか!? もっといっぱい食べないと強くなれないんだゾ!」


 ミラは相変わらず、何も考えていなかった。

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