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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第170話:地下施設の罠と、震える啖呵と

 国境付近の未攻略ダンジョン。その奥深くに隠された、組織の地下施設への潜入が始まった。


 薄暗い石造りの通路を進む。


 俺はふと、鼻をひくつかせた。


「……空気が悪いね」


 俺は息苦しさを感じて、【浄化Lv1】を複合魔法で通路全体に展開した。淀んだ空気が一瞬で清浄なものに変わる。


 一方その頃、施設の最奥にあるモニタールームでは、闇の商人の元上司である組織の幹部が、魔道具の映像越しに青ざめていた。


「……なぜ消えた?」


 彼らが通路に充満させていた、吸い込めば数秒で肺が焼け焦げる致死性の猛毒ガス。それが、あの小柄な男が指を鳴らしただけで、ただの爽やかな空気に変わってしまったのだ。


 俺たちはさらに奥へと進む。


 ふと、足元の石畳に違和感を覚えた。


「……足場が悪いね」


 俺は歩きながら【土木建築Lv1】を発動し、床を補強した。ぐらついていた石畳が、がっちりと隙間なく固まる。


 モニタールームの元上司が、映像を凝視しながら震え上がった。


「……なぜ分かる? あそこは感知魔法すら反応しないよう、物理的な重みだけで作動する底なしの奈落を仕掛けていたはずだ……っ!」


 さらに通路を曲がると、壁のくぼみに古い魔道具のようなものが置かれていた。


「……これ、放置されてると危ないね」


 俺は【魔道具整備Lv1】を使い、カチャカチャと数秒で部品を外し、安全な状態に解体した。


 モニタールームでは、元上司が後ずさりし、壁に背中を打ち付けていた。


「……何者だ、あの男は。あれは起動すれば施設ごと侵入者を吹き飛ばす、狂乱の魔力炉だぞ……。それを、まるで子供の玩具を片付けるように……!」


 俺が解体した部品を道端に避けていると、後ろを歩いていた闇の商人が、青ざめた顔で震えながら呟いた。


「……閣下、これ全部罠ですよ」

「……そうだったの?」

「ええ、致死級の」

「……それは危なかったね」


『いや、危なかったのかな?』

『でも普通に直しちゃったんだけどね』

『まあ、みんなが怪我しなくてよかったかな』


 ◇ ◇ ◇


 やがて俺たちは、重厚な扉を抜け、最深部の広間へと到達した。


 そこには、逃走した非難派の貴族たちと、モニタールームから逃げてきた元上司が待ち構えていた。そして彼らの前には、切り札として、あの白黒の仮面をつけられた複数の素体たちが立ち塞がっている。


 俺は懐から、以前回収した仮面の破片を無言で握りしめた。


『……また仮面か』

『でも今回は、構造を知っている』


 俺が動こうとした、その時だった。


 闇の商人が、俺の前に出た。


 エリーゼたちも、予想外の行動に「え?」という顔をしている。


 闇の商人の足は、小刻みに震えていた。それでも彼は、かつての絶対的な恐怖の対象であった元上司を真っ直ぐに見据えていた。


「……あなたには、言いたいことがあります」


 その声は上ずっていたが、不思議と広間によく響いた。


「私は長年、この組織の末端で生きてきました。人を傷つけるものを売り、見て見ぬふりをしてきた。それは事実です」


 闇の商人が、大きく一呼吸を置く。


「でも閣下に拾われて、初めて分かった。こういう生き方もあるんだと」


 元上司が、顔を引きつらせながら嘲笑った。


「……末端の商人風情が、何を言う」


「商人風情で結構です」


 闇の商人が、震える足で、それでも一歩前に出た。


「でも私の後ろには、あの方がいる」


 俺は何もしていなかった。ただ静かに、彼の後ろに立っているだけだ。


 しかし元上司の顔から、みるみる血の気が引いていった。すべての罠を「環境改善」のつもりで踏み潰してきた男が、無言で自分を見下ろしている。それがどれほど底知れない恐怖として映っているのか、元上司の膝が小刻みに震え始めたことが、全てを物語っていた。


 俺からすれば、ただ突っ立っているだけなのだが。


『……なんで震えてるのかな』

『俺、何もしてないんだけどね』


 ◇ ◇ ◇


 結局、元上司と一部の貴族たちは、その恐怖に耐えきれず、混乱に乗じて隠し通路からまたも逃走してしまった。


「……また逃げられたね」


 俺が静かに言うと、闇の商人が悔しそうに拳を握った。


「……次こそは」


「うん。でも今日は十分だよ」


 施設内に残されていた重要な書類や記録は、すべて回収した。仮面をつけられていた素体たちも、無事に全員保護することができた。道中の危険な罠も、すべて無効化した。


「……アルフォンスに渡せば、使えるものがあるかな」


 束になった書類を見て、闇の商人が涙と鼻水を拭きながら、目を輝かせた。


「……組織の内部文書ですね。元末端の私であれば、暗号も含めて解読できます」


「助かるよ」


 俺は書類を彼に手渡した。


『この人、本当になんだかんだで頼りになるんだよね』

『最初は道案内のつもりで連れてきたんだけどね』

『……気づいたら、大事な仲間になってるんだよね』


 闇の商人が鼻をすすりながら書類を抱きしめる姿を見ながら、俺は小さく息を吐いた。

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