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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第157話:沈黙の自爆と、泥に塗れた謝罪

 地下空間に封印した白黒の襲撃者。そいつから情報を引き出すため、俺は最後の気力を振り絞って土木魔法を操作し、分厚い岩盤の一部を開いて奴の首から上だけを地上へと露出させた。


「……おい。お前はいったい何者だ。誰の差し金でここへ来た」


 口から血を吐き出しながらも、俺はひび割れた声で尋問を試みた。


 だが、襲撃者は虚ろな目で俺を見つめ返すだけだった。そして、その不気味な口元が歪んだかと思うと、白と黒の石で構成された顔面が内側から異様な膨張を始めたのだ。


『……』


 奴が何か言葉を発しようとした瞬間、ポンッという乾いた音とともに、襲撃者の頭部はあっけなく自爆し、粉々に砕け散ってしまった。


「ちっ……自爆かよ……っ」


 咄嗟に顔を庇った俺の耳に、ドサッ、ドサッという重い音がいくつも届いた。


 襲撃者が完全に消滅したことで、リビングを支配していた異常な法則が霧散したのだ。見えない力で床に縫い留められ、ひっくり返ったまま身動きが取れなかったヒロインたちや魔王が、次々と自由を取り戻して身を起こし始めた。


「あ……っ、体が、動きますわ」


「終わったのか……? いったい何が……」


 エリーゼやサンネたちが、信じられないものを見るような目で周囲を見渡す。


 そこにあるのは、完全に破壊された安全地帯の無惨な光景だった。壁は吹き飛び、床は抉れ、土くれと瓦礫が散乱している。


 そしてその中央に、泥と血にまみれ、右腕をだらりと下げた俺が膝をついていた。


「旦那様!」


「師匠!」


 エリーゼとブラムが弾かれたように駆け寄ろうとする。だが、彼らは俺の放つ、あまりにも重く暗い気配に気圧され、数歩手前で足を止めてしまった。


 ヒロインたちの脳裏に、先ほどの光景が鮮明にフラッシュバックする。


 ドアをノックされた時、あの場にいた全員が完全に気を抜いていた。不用意にドアを開けようとした闇の商人を、誰も止めようとしなかった。ただ一人、俺だけが異常な気配を察知し、身を挺して止めに入ったのだ。


 自分たちはただ、訳も分からず床に転がされ、己の無力さを晒していただけ。あのおぞましい襲撃者に対し、魔法一つ、スキル一つすら発動できなかった。


「……申し訳なかった」


 静寂に包まれたリビングに、俺の低い声が響いた。


 俺の精神は、極限まで摩耗しきっていた。三十五年間、ずっと裏方として人を守ってきた。その責任感と誇りが、今は完全に打ち砕かれていた。


 俺は立ち上がろうともせず、血に染まった床に両手をつき、深く、深く頭を下げた。


「油断していた。俺の未熟さゆえに、お前たちを全滅の危機に晒してしまった……っ。一時的とはいえ、お前たちを置いて一人で逃げた俺を許してくれ」


 それは、自分を責め立てるような、痛切な土下座だった。


「だ、旦那様……? 何をおっしゃいますの、謝るのは私たちの方ですわ! 私たちが何もできなかったから……っ」


 エリーゼが泣きそうな声で首を振る。だが、俺は決して顔を上げようとはしなかった。


 その時だった。


「おい! なんだその無様な姿は!」


 ドカッ、という鈍い音とともに、怒声が響き渡った。


 床に這いつくばる俺の後頭部を、漆黒のブーツが容赦なく踏みつけ、泥の床へと押し付けたのだ。


「魔王、様……」


「情けない! 仲間がやられてる間にコソコソ隠れ回って、終わった途端に土下座だと!? それでも男か!!」


 遅れて立ち上がった魔王が、事情も完全に把握せぬまま、俺の態度に苛立ちをぶつけていた。


 ブーツの裏で頭をグリグリと踏みにじられ、泥に顔を押し付けられながらも、俺は一切抵抗しなかった。


「……その通りだ。俺は、本当に情けない」


 絞り出すような俺のその言葉が、凍りついた空気を一気に発火させた。


「その足を退けなさいッ!!」


「貴様、今すぐヘンドリックから離れよ!!」


 エリーゼの絶対零度の魔力と、王女ルミナリアの灼熱の覇気が、同時に魔王へと叩きつけられた。

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